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地下室
しおりを挟む彼は都会の喧騒を離れて、静かな田舎町に引っ越してきた。新しい家は古いが趣のある一軒家で、彼はその静けさを気に入っていた。ただ、一つだけ気になることがあった。
それは、毎晩決まった時間に、家の中で微かな足音が聞こえることだった。彼はそれを古い家の軋みや、風のせいだと考え、特に気にしないようにしていた。
しかし、その足音は毎晩少しずつ近づいてくるように感じられた。彼はある晩、その足音を追いかけることに決めた。音は家の廊下を通り、地下室へと続いているようだった。地下室は彼がまだ一度も入ったことのない場所だった。
彼は懐中電灯を手に、地下室の扉を開けた。古びた階段をゆっくりと降りていくと、そこには埃をかぶった家具や古い箱が無造作に置かれていた。彼が足音の正体を探していると、部屋の隅に古い日記が落ちているのを見つけた。
日記を手に取り、ページをめくると、そこにはこの家にかつて住んでいた家族のことが書かれていた。最後のページにはこう書かれていた。「私たちの秘密がバレないように、地下室に隠しておく。毎晩、見回りを欠かすな。」
彼はその言葉に不安を感じ、日記を閉じた。再び足音が聞こえた気がしたが、それは彼のすぐ後ろからだった。
彼は恐怖で地下室を飛び出し、家を後にした。
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**解説:**
この話のポイントは、地下室の日記に書かれた「秘密」と「見回り」の意味です。実は、彼が聞いていた足音は、かつての住人が毎晩「見回り」をしていた時のものが残っていたということです。彼が地下室に入ったことで、その「見回り」が再開され、彼自身もその一部になってしまった可能性があるということを示唆しています。この解説を読んで初めて、彼がどんな恐怖に直面していたのかがわかる仕組みになっています。
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