上 下
10 / 33

最後の乗客

しおりを挟む



---



深夜のシフトが続いていたタクシードライバーの私は、疲れ切っていたが、もう一人くらい乗せて終わろうと思っていた。辺りは静まり返り、街の灯りも少ない。そんなとき、道端に一人の女性が立っているのを見つけた。髪が長く、白いワンピースを着たその女性は、無表情でタクシーに乗り込んできた。

「どちらまで行かれますか?」と尋ねると、彼女は小さな声で「〇〇霊園まで」と答えた。霊園は街の外れにあり、こんな時間に行くのは不気味だが、仕事だからと黙って運転を始めた。

車内は妙に静かで、バックミラーに映る彼女は一度も顔を上げない。夜風が冷たく、車の中も寒く感じた。

やがて霊園に到着し、「着きましたよ」と声をかけたが、返事はない。後ろを振り返ると、そこには誰も座っていなかった。

驚き、慌てて車を降りて後部座席を確認したが、誰もいない。あの女性はどこに行ったのか?乗り込んだ瞬間から彼女の存在が幻だったのかと混乱し、車に戻ろうとしたそのとき、ふと座席を見ると、そこには冷たく湿った泥の跡が残っていた。

























---

乗せたはずの乗客が途中で姿を消してしまうという不可解な現象です。特にタクシーという閉ざされた空間で起こることで、逃げ場のない恐怖感が増し、最後に残された泥の跡が「現実」に幽霊がいたことを強調しています。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜下着編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートつめ合わせ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ちょこっと怖い話・短編集(毎話1000文字前後)──オリジナル

山本みんみ
ホラー
少しゾワっとする話、1話1000文字前後の短編集です。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜舐める編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

処理中です...