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最後の乗客
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深夜のシフトが続いていたタクシードライバーの私は、疲れ切っていたが、もう一人くらい乗せて終わろうと思っていた。辺りは静まり返り、街の灯りも少ない。そんなとき、道端に一人の女性が立っているのを見つけた。髪が長く、白いワンピースを着たその女性は、無表情でタクシーに乗り込んできた。
「どちらまで行かれますか?」と尋ねると、彼女は小さな声で「〇〇霊園まで」と答えた。霊園は街の外れにあり、こんな時間に行くのは不気味だが、仕事だからと黙って運転を始めた。
車内は妙に静かで、バックミラーに映る彼女は一度も顔を上げない。夜風が冷たく、車の中も寒く感じた。
やがて霊園に到着し、「着きましたよ」と声をかけたが、返事はない。後ろを振り返ると、そこには誰も座っていなかった。
驚き、慌てて車を降りて後部座席を確認したが、誰もいない。あの女性はどこに行ったのか?乗り込んだ瞬間から彼女の存在が幻だったのかと混乱し、車に戻ろうとしたそのとき、ふと座席を見ると、そこには冷たく湿った泥の跡が残っていた。
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乗せたはずの乗客が途中で姿を消してしまうという不可解な現象です。特にタクシーという閉ざされた空間で起こることで、逃げ場のない恐怖感が増し、最後に残された泥の跡が「現実」に幽霊がいたことを強調しています。
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