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四話
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「レアンドロス陛下、カタリア嬢をどういたしましょう?」
ガルクラム皇帝レアンドロスは、カタリアと会う前に狼人族の男──エルペリウス王国派遣大使ゼリアンと事前に相談をしていた。
「……偽者だと? だが、アルハザード公爵家の血を受け継いではいるようだな」
「そのようですね」
「証拠は集まっているのか?」
「アルハザード公爵家の家臣と、エルペリウス王国の宰相を拉致し、証言させる事は可能です」
「ふむ。それでは難癖をつけられるな。カタリアに証言をさせることは可能か?」
「……それが、彼女は人と話すことができないようで」
「それは?」
「端的に言えば、舌を切り取られております」
「──何だと? ゴミ共が……やはり人族は滅ぼさねばならない。残虐非道なその性、我らが滅ぼさねば、多くの種族が苦渋を舐めることになるだろう」
ガルクラム皇帝レアンドロスは激怒していた。彼の基準では、今回のように人質におくられてくるのは、忠誠無比の家臣だ。どのような拷問を受けようと、主君のために黙秘を続けられる忠臣だ。場合にもったら、自害して証人にさせられることを防いだり、ガルクラム大帝国が謀殺したと難癖を付けるために自害を選ぶような、選び抜かれた忠臣だった。
だが、エルペリウス王国は違った。ガルクラム皇帝レアンドロスの倫理観と全く違っていた。事もあろうに、年若い令嬢の舌を切り取って、証言させることを防いだのだ。このような残虐非道な行為は、若き皇帝には絶対に許せない行為だった。その場で人族を罵り荒れ狂う皇帝に、大使はカタリアの生い立ちを話した。
大使ゼリアンは、アルハザード公爵家の事を事細かに調べあげていた。レアンドロス皇帝が政策判断を誤らないように、配下の大使館職員を使い、狼人族の隠密能力を生かし、全ての実情を詳細に調査し、分かりやすい報告書を作っていた。それを読んだ皇帝は、今迄人質としか思っていなかったカタリアに、深く同情することになった。
ガルクラム皇帝レアンドロスは、カタリアと会う前に狼人族の男──エルペリウス王国派遣大使ゼリアンと事前に相談をしていた。
「……偽者だと? だが、アルハザード公爵家の血を受け継いではいるようだな」
「そのようですね」
「証拠は集まっているのか?」
「アルハザード公爵家の家臣と、エルペリウス王国の宰相を拉致し、証言させる事は可能です」
「ふむ。それでは難癖をつけられるな。カタリアに証言をさせることは可能か?」
「……それが、彼女は人と話すことができないようで」
「それは?」
「端的に言えば、舌を切り取られております」
「──何だと? ゴミ共が……やはり人族は滅ぼさねばならない。残虐非道なその性、我らが滅ぼさねば、多くの種族が苦渋を舐めることになるだろう」
ガルクラム皇帝レアンドロスは激怒していた。彼の基準では、今回のように人質におくられてくるのは、忠誠無比の家臣だ。どのような拷問を受けようと、主君のために黙秘を続けられる忠臣だ。場合にもったら、自害して証人にさせられることを防いだり、ガルクラム大帝国が謀殺したと難癖を付けるために自害を選ぶような、選び抜かれた忠臣だった。
だが、エルペリウス王国は違った。ガルクラム皇帝レアンドロスの倫理観と全く違っていた。事もあろうに、年若い令嬢の舌を切り取って、証言させることを防いだのだ。このような残虐非道な行為は、若き皇帝には絶対に許せない行為だった。その場で人族を罵り荒れ狂う皇帝に、大使はカタリアの生い立ちを話した。
大使ゼリアンは、アルハザード公爵家の事を事細かに調べあげていた。レアンドロス皇帝が政策判断を誤らないように、配下の大使館職員を使い、狼人族の隠密能力を生かし、全ての実情を詳細に調査し、分かりやすい報告書を作っていた。それを読んだ皇帝は、今迄人質としか思っていなかったカタリアに、深く同情することになった。
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