虐げられてきた私は、それでも……

2話

「今日はどうするの？」

　ダルエス家にやってきてから数日が経った。テオドールが私に優しく声をかけてくれる。彼の笑顔はまるで太陽のようで、少しだけ心が温まる。

「何も…特には…」

　私は微笑みを返すことができず、視線を下に向ける。新しい家族に囲まれた日々は、思ったよりも厳しいものだった。ダルエス家の人々は、私に対して優しさを見せる一方で、私がこの家にいることに対して無関心なようにも感じられた。特に、公爵夫人は私を試すかのような厳しい視線を向けてくる。

「無理しなくていいよ。リラックスして。」

　テオドールは私の手を優しく握り、少しだけ安心感を与えてくれた。しかし、彼の優しさの裏には、私がこの家に価値を持つ存在であるかどうかの期待が潜んでいるのだと感じていた。

「ありがとう、テオドール様。」

　その言葉を口にするも、心の中は不安でいっぱいだった。果たして、私は本当にここで受け入れられるのだろうか。

「じゃあ、今日は一緒に庭の手入れをしようか。君が来てから、庭の花が元気になった気がするんだ。」

　彼の提案に心が躍った。庭仕事はリオンタリ子爵家でも経験していたが、ダルエス家の庭は美しく整えられていて、私にとって新鮮だった。テオドールと一緒に仕事をすることは、少しだけ楽しみでもあった。

庭に出ると、色とりどりの花々が咲き乱れ、心が和む。テオドールと一緒に花の手入れをしながら、彼の笑顔や優しさに触れるたび、少しずつ心の重荷が軽くなっていくのを感じる。

「セレスティア、これが一番好きな花なんだ。」

　彼が指差したのは、白い花びらが美しいジャスミンの花だった。甘い香りが周囲に広がり、心地よい風が吹き抜ける。

「私も好きです。」

　素直にそう言えた瞬間、テオドールの目が輝いた。

「本当に？じゃあ、これからもっと一緒に手入れをしよう。」

　彼の提案に心が躍るが、同時にその背後にある期待を感じる。ダルエス家での生活は、私にとって新しい希望でもあり、同時に新たなプレッシャーでもあった。

しかし、そんな平穏な日々も長く続くことはなかった。

「セレスティア！」

　急に呼ばれ、振り向くと、ダルエス公爵夫人が立っていた。その目には厳しい光が宿っている。

「あなた、今日の舞踏会の準備はできているの？」

「舞踏会……？」

　思わぬ言葉に心臓が跳ね上がる。舞踏会はダルエス家の重要なイベントで、私が参加することになるなんて想像もしていなかった。

「あなたがその場にふさわしいか、私が決めるのよ。」

　その言葉に、私の心は一瞬にして凍りついた。果たして私はこの舞踏会に出て、他の人々と接してもいいのだろうか。リオンタリ子爵家での経験が頭をよぎり、嫌な予感が胸を締め付ける。

「わ、わかりました……」

　言葉を絞り出しながら、心の中で不安が広がる。舞踏会で何が起こるのか、私の運命はどうなるのか。心の不安はますます大きくなっていく。