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2話
しおりを挟むメロリアがレオリス王子と過ごす時間が増えるにつれ、彼女の心は少しずつ開かれていく。彼の優しさや理解力に触れることで、彼女は自信を取り戻し始めた。王子は、彼女の視力が失われたことに対して特に気にすることなく、彼女の存在そのものを大切にしてくれた。
ある日、レオリスはメロリアに特別な場所へ連れて行くと言った。
「ここは、僕のお気に入りの場所なんだ。君にも是非見てほしい。」
彼は彼女の手を引いて、森の中へと導いた。木々の間から差し込む光、葉っぱが揺れる音、そして小川のせせらぎが心地よい。メロリアは、目が見えなくてもこの美しさを感じ取ることができた。そして、彼女は自分の心が少しずつ癒されていくのを感じた。
「メロリア、君はとても特別な人だ。君の優しさや勇気は、僕にとってかけがえのないものだよ。」
レオリスの言葉は、彼女の心に深く響いた。彼女は彼に対する感情が、友情以上のものであることに気づき始めていた。しかし、心の奥にはロールとの過去がいつも影を落としていた。
数日後、ロールが再びメロリアの家を訪れた。彼は新たな婚約者、エリザベスを連れてきていた。彼女は美しく、上品で、周囲の視線を集める存在だった。メロリアは、その瞬間、心の中に冷たい波が押し寄せるのを感じた。
「メロリア、久しぶりだね。見た目は変わっていないようだ。」
ロールの言葉は、彼女にとって冷ややかな刃のように感じられた。彼女は微笑みを浮かべるが、その内心は複雑な感情で渦巻いていた。エリザベスは彼女に優雅に挨拶をし、何気ない会話が続く。
「あなたの視力のこと、聞きました。大変でしたね。どうかお元気で。」
エリザベスの言葉には、どこか他人事のような冷たさを感じる。メロリアは心の中で反発を覚えたが、表情には出さないように努めた。
その日の夜、メロリアは自室で考え込んでいた。ロールとエリザベスの姿が頭から離れない。彼女は、彼を心から愛していたのか、それともただの未練なのか。自問自答する中で、彼女は自分の心の声に耳を傾けることにした。
一方、レオリスはメロリアの苦悩を敏感に感じ取っていた。彼は彼女を元気づけるため、特別な計画を立てることにした。ある日、彼はメロリアを再び川辺に連れ出し、特別なサプライズを用意していた。
「メロリア、今日は特別な日だ。君に何かを見せたい。」
彼が言うと、彼女は不思議そうに首を傾げた。彼は彼女を優しく導き、特製のピクニックを用意していた。色とりどりの果物や、手作りのサンドイッチが並ぶ。
「君が喜んでくれると思って、頑張って作ったんだ。」
メロリアは、その心遣いに感動し、心の中で彼への愛情がさらに膨らんでいくのを感じた。彼女はレオリスと共に過ごす時間が、彼女にとってどれだけ大切なものかを実感した。そして、彼女は彼と共にいることが、自分にとって新たな希望をもたらすことを理解し始めた。
しかし、心の奥底にはロールとの過去が常に残っていた。彼女は自分がレオリスに心を開くことで、ロールとの思い出を忘れてしまうのではないかと不安を抱えていた。
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