上 下
5 / 6

渇愛

しおりを挟む
 ーー午前23時50分
 神崎の寝室は思ったより簡素だった。
 ベッドとサイドボード。ベッド脇にはちょっとした間接照明がある程度。
 ここに元カノも来てたりしたのかな。そんなことが頭をよぎった。
 二人でベッドに腰かけ、先に言葉を発したのは神崎だった。
「続きしても平気?」
 ここまで来て、嫌だと言えるわけがない。
「あぁ、大…丈夫」
 大丈夫ってなんだよ。返答になってねぇよ俺…
 的外れな返事などお構い無し。
「では、遠慮なく。さっきも言ったけど、僕は男の経験がないから、とりあえずこっち…させて」
 そう言って下腹部に触れてきた。
 さっきから全然萎えていない。むしろこれからの行為を想像して膨れ上がる気さえしてくる。
 ベルトのバックルを器用に緩められた。スラックスのボタンもジッパーも外され、俺のパンツが露になる。
「少し濡れてる。感じてる証拠」
「あ…見るな。恥ずかしいから」
「なんで、いいことでしょ」 
 本当に直球な男だな。
 でも、それがある意味心地いいと言うか、俺にはあってるのかもしれない。なかなか思ったことを口に出せない性格だから。
 今は、このド直球男の神崎に全て委ねてしまってもいいのかもしれない。
 もう、どうなってもいい!
「ひゃ…あ!」
 びっくりして声を上げてしまった。
 パンツ越しに、ふーっと息を吹きかけられた。少し湿っている部分のソレにちょうど当たっている。
 上目遣いに、「可愛い」と言われた。
 そう言ってパンツを残しズボンを取り去った。
 勢いで俺はベッドに仰向けで倒れ込み、追うように神崎が覆いかぶさってきた。
 下腹部を触りながらキスされる。
 ベッドに挟まれてるからなのか、さっきよりも幾分か強引な気がする。
 そして、神崎の下腹部が時折、俺の太ももに当たってくる。俺との行為で反応してくれるのは、率直に嬉しい。ただ、神崎のソレは俺とは比べ物にならないくらいの質量だと、布越しでもわかる。
「ん…んぅ…、はぁ…ん…」
 一つ一つ歯をなぞられ、上顎を舌で撫でられる。舌と舌が絡み合い、ジュルジュルと音をたてながらお互いを行き来している。
「ねぇ、小宮。キス好き?気持ちいい?」
 こいつは確信犯か。俺が自分から好きとか気持ちいいとか、言えない奴だって絶対わかっててやってる。
 ただ、気持ちを正直に伝えたい自分もいるのは確かだ。
 俺はもう一度自分に言い聞かせることにした。
 今は全て、神崎に委ねるって、決めた…だろ…
 思い切って今の気持ちを口に出した。
「すげー気持ちいいし、すげー好き!」
 言ってしまった。しかも、結構大きな声で…。、
 俺の心臓…どうにかなりそうだ……泣きそうだ
「良かった、嬉しい」
 そう言って優しく頭を撫でられた。
 大人になって頭を撫でられることなんて無くなったな。神崎の手はとても心地がいい。少しの間そうしてただろうか。
 頭から手が離れていき、手が両頬に降りてきて優しく包まれた。
 真正面から神崎に見つめられる。
「さっきの前言撤回。あのね……抱きたい。君を心から抱きたいと思った。だから
 …今から全部させてよ」
 全部………全部って……!
 そう言っている間に、額、頬、首筋、肩、鎖骨、上から順に唇を寄せ音をたてて舐められ、吸われる。
「本…気か…あっ…!」
 動揺が隠せない。
「本気だよ。君のこと可愛いって思っちゃったんだもん」
 そういって左右の乳首に指が触れた。
「あん…はっ…」
「優しくするけど、痛かったら言って」
 男の乳首は飾りだ。でも優しく触られたら感じる。
 片方は舌で転がされ、もう片方は指でこねられ弾かれる。
「気持ち…いい…はぁん…」
 自然と出てしまった。
 俺の下腹部はパンパンに膨れている。俺のモノを避けるようにパンツを脱がされたと思った矢先、
「え!ちょっそれは…だめだって」
「なんで?」
「……心の準備ってものが…あるだろ」
 手でされるのだとばかり思っていたら、まさかの先端部分を舐められた。
「気持ちいいでしょ。後で俺にもしてくれる?」
「お前、本当に俺に嫌悪感とかないのかよ」
「言ったでしょ。小宮にはそういう感情は起きないみたい。でも男が好きとかではないから。小宮だからだよ」
 平然と言ってのけるな。
「舐めるよ、いい?」
「うん」
 巧みに手を動かしながら、先端部分を舐められる。コイツ舐めるの初めてなんだよな。まぁされたことはあるんだろうけど、めちゃくちゃ気持ち良すぎる。このままだとすぐに達してしまいそうだ。
「神崎…だめ…だ。もう…逝く…から、放せ」
「やだ、このまま逝って」
 神崎は先端を舐めるのをやめ、小宮のソレを全て口に含んだ。手の動きは速さを増し、程なくして俺の体に電流が走った。
「あっ、んぁ…あ!……はぁ…はぁ…お前、口の中の出せ!」
 口の中に出してしまった。
「ふぇー、まず…」
「当たり前だろ、ほらテッシュ」
「でも逝く時の小宮、可愛かった」
 可愛いという言葉を言われ慣れない小宮は、顔を赤めて俯く。
「俺もするから。神崎も…脱げよ」
 こんなぶっきらぼうな返答しかできない自分を、呪いたい。
「ありがと」
 神崎の体が露わになっていく。布越しで感じていた神崎のソレを見た俺は、自分との違いに息を呑む。
 あぐらを描いて座る神崎に、引き寄せられて軽く抱きしめられた。
「無理しなくていいからね。軽く舐めてくれるだけでいいから」
 俺は下腹部に顔を埋め、先端から舐め始めた。
 舐めている間、神崎はずっと俺の頭を撫でてくれている。時折ピクっとする仕草で感じていることがわかると嬉しくなる。
 付け根から先っぽまで丁寧に、丁寧に舐めた。
「小宮…そろそろいい?」
 そう言って神崎は、サイドボードの引き出しを開けてハンドクリームを取り出した。
「ないよりいいよね」
 経験がない俺でも、そのくらいの知識は持ち合わせている。ないよりはましだろう。
 ハンドクロームをたっぷりつけた神崎の中指が、後ろの蕾に押し当てられた。
 俺の体温で温められたクリームは少しずつ溶け、いつもは何かを受け入れることのない蕾にもよく馴染んでくる。慣れない行為にどうしても力が入り、歯を食いしばってしまうと、神崎が優しく声をかけてくれる。
「力抜いて」
 異物が入ってくる感覚は、羞恥なのか、恐怖なのか、快楽なのか。どれもが入り混じった感覚は、言葉では言い表すことが難しい。
 指をもう一本増やされ、ある一点に触れた瞬間、一際大きな声をあげてしまった。
「あっ!ん…だめ…はぁ…い…ゃん…」
「ここだね、見つけた」
「ちょ…っと、待て…なに…これ」
 初めて体感する。俺のモノには一切触ってないのに、何かが湧き上がってくるような感覚。
 少し…怖い……
「僕のことぎゅってしてて」
 俺は言われた通り、神崎の肩に手を回した。
 そうしたら自然と不安は無くなった。もたらされる快楽は心も満たしてくれるようだ。
「そろそろ、入れるよ」
 いよいよ神崎が俺の中に入って来る。
「辛くなったら、僕の名前呼んで」
 神崎はゆっくり腰を落としてくる。
 すごい圧迫感だ。
「神…崎…。神崎…」
 呪文のように神崎の名前を呼び続けた。
 時折もたらされる、啄むキスにも助けられ、どうにか神崎の全てを受け入れることが出来た。
「ちょっとこのままでいようか」
 お互い呼吸を整えながら、神崎はまた頭を撫でてくれる。
「…動いていいぞ、お前も辛いだろ。ごめんな」
「謝るのは禁止。どう考えても君の負担の方か大きいから、本当に動いて平気?僕にも理性があるから。途中では止められなくなる」
 それに応えようと神崎の首に手を回し、初めて俺からキスをした。
 俺の中の神崎が、一段と大きくなった気がした。
「煽らないでよ…」
 絞り出すように言った神崎が大きく腰を引き、小宮の最奥へ腰を打ち付けた。
 抜き差しを繰り返し、互いの息遣いがユニゾンする。
「「は…は、んはぁ…ん…はっ………」」
 気持ちが昂っているところで、神崎の動かしていた腰の動きが止まった。
「ねぇ…小宮、俺への気持ち、もう一回聞かせて」
 顔がよく見えるように、前髪を掻き上げられた。
「えっ……はぁ…はぁ……」
 動きが止まると、俺の中にいる神崎がより鮮明に感じ取れる。
 俺、今どんな顔してる。
 泣いているからきっと…顔…ぐちゃぐちゃだな…
「ほら、聞かせて」
 喉に異物が詰まっているようで、なかなか声が出せない。
 それでも振り絞って応えた。
「………ずっと、ずっと……お前の…ことが……好きだった」
 俺が言い終えるのを待ってから、今日一番の濃厚なキスをしてくれた。
 神崎の荒々しい呼吸と「小宮」と呼ぶ声が、耳元で聞こえてくる。
 俺も夢中で、ひたすら神崎の名前を呼び続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お試し交際終了

いちみやりょう
BL
「俺、神宮寺さんが好きです。神宮寺さんが白木のことを好きだったことは知ってます。だから今俺のこと好きじゃなくても構わないんです。お試しでもいいから、付き合ってみませんか」 「お前、ゲイだったのか?」 「はい」 「分かった。だが、俺は中野のこと、好きにならないかもしんねぇぞ?」 「それでもいいです! 好きになってもらえるように頑張ります」 「そうか」 そうして俺は、神宮寺さんに付き合ってもらえることになった。

弊社のバレンタイン廃止にかこつけてチョコを渡そう計画

根古川ゆい
BL
リーマン×リーマンのハッピーバレンタインな短編。 一話完結。 伴野連(ばんの れん)×平良慎也(たいら しんや)

2人の未来〜今まで恋愛感情を抱いたことのなかった童貞オタク受けがゲイだと勘違いした周りに紹介されてお見合いする話〜

ルシーアンナ
BL
リーマン×リーマン。 年上×年下。 今まで恋愛感情を抱いたことのなかった受け(恋愛的にも身体的にも童貞でオタク)が、ゲイだと勘違いした周りに紹介されてお見合いする話。 同性婚は認められてないけど、同性カップルは現在より当たり前に容認されてる近未来な設定です。 攻め→→→受け。 以前別名義で書いたものを手直ししました。

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

Ωだったけどイケメンに愛されて幸せです

空兎
BL
男女以外にα、β、Ωの3つの性がある世界で俺はオメガだった。え、マジで?まあなってしまったものは仕方ないし全力でこの性を楽しむぞ!という感じのポジティブビッチのお話。異世界トリップもします。 ※オメガバースの設定をお借りしてます。

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

義兄に寝取られました

天災
BL
 義兄に寝取られるとは…

処理中です...