17 / 19
第2章
第17話「聖剣ってホント便利」
しおりを挟む
朝日が屋上を明るく照らす中、俺はハルネと向かい合って座っていた。周囲は静かで、昨日までの激しい戦いが嘘のようだ。しかし、あちこちに残る破壊の跡が、その現実を物語っている。
「ハルネ」俺は真剣な表情で尋ねた。「学校の現状を詳しく教えてくれないか?」
ハルネは小さく頷き、ゆっくりと話し始めた。
「はい、主様。和奏様の活躍により、校内の魔物は一掃されました。生徒たちも少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります」
その言葉に、少し安堵の気持ちが湧いた。しかし、ハルネの表情には依然として緊張が残っている。
「でも、まだ問題があるんだろう?」
ハルネは少し躊躇った後、続けた。「はい...。校舎の一部が大きく損傷しており、完全に安全とは言えません。また、食料や水の確保も課題です」
俺は眉をひそめた。「そうか...。一時的には安全になったけど、まだまだ困難な状況ってことか」
「その通りです」ハルネは深刻な面持ちで言った。「そして...もう一つ大きな問題があります」
「何だ?」
「転移者の存在です」ハルネの声には、明らかな懸念が滲んでいた。「ルーク様のような強大な力を持つ者が、他にも現れる可能性があります」
その言葉に、背筋が凍る思いがした。確かに、あの狂気じみた強さのルークのような存在が、また現れたら...。
「一刻も早く、魔王を倒す必要があります」ハルネは決然とした口調で言った。「魔王の力が強まれば強まるほど、より多くの転移者が呼び寄せられるでしょう」
俺は黙って頷いた。確かにその通りだ。このまま放置すれば、事態はどんどん悪化していくだろう。
しかし、同時に胸の内で葛藤があった。
「でも、ハルネ」俺は少し迷いながら言った。「学校の皆のことが心配だ。このまま置いていっていいのか...」
ハルネは優しく微笑んだ。「主様の優しさはよくわかります。しかし、今は大きな使命に向かうべき時なのです」
俺は深く考え込んだ。確かにハルネの言う通りだ。でも、仲間たちを見捨てるわけにもいかない。
そして、ふとひらめいた。
「そうだ、ハルネ」俺は顔を上げた。「和奏と健太に聖剣を預けよう」
「え?」ハルネは少し驚いた様子だった。
「あの二人なら、きっと学校を守ってくれる」俺は確信を持って言った。「和奏は昨日、大きな勇気を見せてくれた。そして健太は、俺の一番の親友だ。信頼できる」
ハルネはしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。「なるほど...。確かに、彼らなら」
俺は立ち上がり、遠くを見つめた。「俺たちが魔王を倒すまでの間、学校を任せよう。聖剣があれば、ある程度の魔物なら対処できるはずだ」
「しかし」ハルネが心配そうに言った。「聖剣を手放せば、主様の戦力が...」
俺は微笑んで首を振った。「大丈夫さ。俺にはまだ力が残ってる。それに...」
俺はハルネをまっすぐ見つめた。「君がいてくれるだろ?」
ハルネの頬が少し赤くなった。「は、はい!もちろんです!」
「よし」俺は決意を固めた。「じゃあ、和奏と健太を呼んでくれないか?二人に事情を説明して、聖剣を渡したい」
ハルネは深々と頭を下げた。「かしこまりました。すぐに呼んで参ります」
彼女が去っていく背中を見送りながら、俺は深く息を吐いた。これで良かったのだろうか。でも、今はこれが最善の選択だと信じるしかない。
しばらくして、ドアが開く音がした。振り返ると、そこには和奏と健太が立っていた。二人とも疲れた様子だったが、目には強い意志が宿っている。
「二人とも」俺は真剣な表情で言った。「頼みがある。聞いてくれるか?」
和奏と健太は顔を見合わせ、そして俺に向かってしっかりと頷いた。
新たな決意と、仲間への信頼。
これから始まる本当の戦いに向けて、俺たちの物語は新たな一歩を踏み出そうとしていた。
「ハルネ」俺は真剣な表情で尋ねた。「学校の現状を詳しく教えてくれないか?」
ハルネは小さく頷き、ゆっくりと話し始めた。
「はい、主様。和奏様の活躍により、校内の魔物は一掃されました。生徒たちも少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります」
その言葉に、少し安堵の気持ちが湧いた。しかし、ハルネの表情には依然として緊張が残っている。
「でも、まだ問題があるんだろう?」
ハルネは少し躊躇った後、続けた。「はい...。校舎の一部が大きく損傷しており、完全に安全とは言えません。また、食料や水の確保も課題です」
俺は眉をひそめた。「そうか...。一時的には安全になったけど、まだまだ困難な状況ってことか」
「その通りです」ハルネは深刻な面持ちで言った。「そして...もう一つ大きな問題があります」
「何だ?」
「転移者の存在です」ハルネの声には、明らかな懸念が滲んでいた。「ルーク様のような強大な力を持つ者が、他にも現れる可能性があります」
その言葉に、背筋が凍る思いがした。確かに、あの狂気じみた強さのルークのような存在が、また現れたら...。
「一刻も早く、魔王を倒す必要があります」ハルネは決然とした口調で言った。「魔王の力が強まれば強まるほど、より多くの転移者が呼び寄せられるでしょう」
俺は黙って頷いた。確かにその通りだ。このまま放置すれば、事態はどんどん悪化していくだろう。
しかし、同時に胸の内で葛藤があった。
「でも、ハルネ」俺は少し迷いながら言った。「学校の皆のことが心配だ。このまま置いていっていいのか...」
ハルネは優しく微笑んだ。「主様の優しさはよくわかります。しかし、今は大きな使命に向かうべき時なのです」
俺は深く考え込んだ。確かにハルネの言う通りだ。でも、仲間たちを見捨てるわけにもいかない。
そして、ふとひらめいた。
「そうだ、ハルネ」俺は顔を上げた。「和奏と健太に聖剣を預けよう」
「え?」ハルネは少し驚いた様子だった。
「あの二人なら、きっと学校を守ってくれる」俺は確信を持って言った。「和奏は昨日、大きな勇気を見せてくれた。そして健太は、俺の一番の親友だ。信頼できる」
ハルネはしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。「なるほど...。確かに、彼らなら」
俺は立ち上がり、遠くを見つめた。「俺たちが魔王を倒すまでの間、学校を任せよう。聖剣があれば、ある程度の魔物なら対処できるはずだ」
「しかし」ハルネが心配そうに言った。「聖剣を手放せば、主様の戦力が...」
俺は微笑んで首を振った。「大丈夫さ。俺にはまだ力が残ってる。それに...」
俺はハルネをまっすぐ見つめた。「君がいてくれるだろ?」
ハルネの頬が少し赤くなった。「は、はい!もちろんです!」
「よし」俺は決意を固めた。「じゃあ、和奏と健太を呼んでくれないか?二人に事情を説明して、聖剣を渡したい」
ハルネは深々と頭を下げた。「かしこまりました。すぐに呼んで参ります」
彼女が去っていく背中を見送りながら、俺は深く息を吐いた。これで良かったのだろうか。でも、今はこれが最善の選択だと信じるしかない。
しばらくして、ドアが開く音がした。振り返ると、そこには和奏と健太が立っていた。二人とも疲れた様子だったが、目には強い意志が宿っている。
「二人とも」俺は真剣な表情で言った。「頼みがある。聞いてくれるか?」
和奏と健太は顔を見合わせ、そして俺に向かってしっかりと頷いた。
新たな決意と、仲間への信頼。
これから始まる本当の戦いに向けて、俺たちの物語は新たな一歩を踏み出そうとしていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。


せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる