聖剣変化のチートスキル ~触れるもの全て聖剣に変える僕の勇者ライフ~

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第2章

第16話「一晩経って」

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 まぶたが重い。意識が徐々に戻ってくるにつれ、柔らかな感触と優しい香りが鼻をくすぐる。ゆっくりと目を開けると、まぶしい朝日が視界に飛び込んできた。

「あ...」

 俺の小さな呟きに反応するように、優しい声が耳元で響く。

「おはようございます、主様」

 視線を上げると、そこにはハルネの穏やかな笑顔があった。彼女の銀色の髪が朝日に輝き、まるで天使の後光のようだ。

「ハルネ...?」俺は混乱しながら周りを見回した。「ここは...」

「屋上です、主様」ハルネが静かに答える。「主様が眠られてから、ずっとこちらでお休みでした」

 その言葉に、俺は我に返った。そうだ、昨日の戦いの後、疲れ果てて...。

「まさか...」俺は驚いて身を起こそうとした。「ハルネ、君はずっと...?」

 しかし、体を動かそうとした瞬間、ハルネの手が優しく俺の肩に置かれた。

「どうぞ、そのままで」彼女は微笑みながら言った。「まだ十分にお休みになられていないかもしれません」

 その言葉に従い、俺は再びハルネの膝に頭を乗せた。信じられない。彼女は一晩中、俺の枕になってくれていたのか。

「ごめん...辛かっただろ?」俺は申し訳なさそうに言った。

 ハルネは首を横に振った。「いいえ、主様のお役に立てて光栄です」

 そう言いながら、彼女の手が俺の髪を優しく撫でる。その感触に、思わずため息が漏れた。

「主様、少しお水を」ハルネが言い、俺の唇に小さなカップを運んでくる。冷たく清らかな水が喉を潤す。

「ありがとう...」俺は感謝の言葉を呟いた。

 ハルネはそれだけでは満足しなかったようだ。彼女は小さな布を取り出し、俺の額や首筋の汗を丁寧に拭い始めた。その動作は繊細で優しく、まるで高価な陶器を扱うかのようだった。

「ハルネ、そこまでしなくても...」

「いいえ、主様」彼女は真剣な表情で言った。「これは私の務めです。どうかお任せください」

 その言葉に、俺は言葉を失った。ハルネの献身的な態度に、心が温かくなる。

 彼女は次に、小さな櫛を取り出し、俺の髪を丁寧に梳き始めた。「戦いで乱れてしまいました。整えさせてください」

 櫛が頭皮を優しくマッサージするような感覚に、思わず目を閉じてしまう。

「主様、お疲れではありませんか?」ハルネが心配そうに尋ねた。「肩をお揉みしましょうか?」

 言葉で断る前に、彼女の手が俺の肩に置かれた。そっと力を込めながら、凝り固まった筋肉をほぐしていく。

「う...ああ...」思わず声が漏れる。「ハルネ、上手いな...」

 彼女は嬉しそうに微笑んだ。「主様のお役に立てて何よりです」

 しばらくの間、俺はハルネの献身的な奉仕に身を委ねていた。彼女の優しさと気遣いに、心も体も癒されていく。

 ふと、現実に引き戻される。

「そうだ、ハルネ」俺は少し身を起こして尋ねた。「和奏は?そして、学校の状況は?」

 ハルネは落ち着いた様子で答えた。「和奏様は無事です。彼女の勇気あるご活躍のおかげで、学校内の魔物はすべて退治されました」

 その言葉に、胸をなでおろす。「そうか...あいつ、本当にやってくれたんだな」

「はい」ハルネは頷いた。「和奏様は今、他の生徒たちと共に校舎内で休んでいます。皆、主様の無事を心配しています」

 俺は深く息を吐いた。「そうか...みんな無事で良かった」

 ハルネは俺の肩に手を置き、優しく微笑んだ。「主様のおかげです。主様が皆を守ってくださったから」

 その言葉に、少し恥ずかしくなる。「いや、俺だけじゃない。みんなが...」

「主様」ハルネが遮った。「どうぞ、もう少しお休みください。これからの戦いに備えて」

 俺は少し考え、そして頷いた。「そうだな...少しだけ」

 再びハルネの膝に頭を乗せると、彼女の手が優しく髪を撫でる。

「ありがとう、ハルネ」俺は静かに言った。「君がいてくれて...本当に良かった」

 ハルネの顔に、幸せそうな笑みが広がる。「こちらこそ、主様。これからもずっと、お側にいさせてください」

 朝日が徐々に強くなり、新しい一日の始まりを告げている。これからどんな戦いが待っているかわからない。でも、こうして仲間がいる。それだけで、俺は強くなれる気がした。

 目を閉じると、ハルネの優しい香りに包まれながら、俺は再び穏やかな眠りに落ちていった。
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