聖剣変化のチートスキル ~触れるもの全て聖剣に変える僕の勇者ライフ~

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第1章

第4話「魔将って結局のところ何なんだろう」

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 俺の手に握られた聖剣が、淡い光を放っている。元は何の変哲もない植木鉢だったとは思えないほどの美しさだ。刀身は透き通るような青緑色で、まるで清らかな水を固めたかのよう。柄には繊細な植物の模様が刻まれ、それが生きているかのようにわずかに蠢いている。

 目の前には、十数体の化け物たちが俺を取り囲んでいた。その中心に立つのは、先ほど俺を壁に叩きつけた巨大な漆黒の怪物。その赤い目が、憎しみと殺意を滲ませながら俺を見つめている。

「主様、お気をつけください」背後でハルネの声がする。「あの大きな化け物は、この世界に召喚された魔将の一人です」

「魔将?」俺は聞き返す暇もなく、身構えた。

 突如、化け物たちが一斉に襲いかかってきた。

 最初に飛びかかってきたのは、狼のような姿をした化け物だ。その牙は鋭く、唾液が滴り落ちている。

 俺は瞬時に反応した。聖剣を振り上げ、化け物の動きを先読みするように斬りつける。

 刃が空を切る音と共に、青緑色の軌跡が描かれた。次の瞬間、狼型の化け物が二つに裂けた。

「なんだ...この感覚」

 自分の動きの速さと正確さに、俺自身が驚いた。まるで剣が俺の体の一部であるかのように、完璧に制御できている。

 次々と襲いかかる化け物たちを、俺は華麗に避けながら切り刻んでいく。聖剣が空を切る度に、青緑色の光の帯が現れ、化け物たちを両断していく。

「見事です、主様!」ハルネが歓声を上げる。

 しかし、油断は禁物だった。背後から、蜘蛛のような姿をした化け物が糸を吐いてきた。

「くっ!」

 俺は咄嗟に身をひねったが、左腕に糸が絡みついてしまう。ねばねばした感触と共に、腕が動かなくなる。

 その隙を狙って、鎌首をもたげた蛇のような化け物が襲いかかってきた。

「主様!」ハルネの悲鳴が聞こえる。

 その瞬間、俺の中で何かが目覚めた。

「生命の奔流(ライフストリーム)!」

 思わず叫んだ言葉と共に、聖剣から緑色の光が溢れ出す。その光は、まるで生命力そのものが具現化したかのように、周囲を包み込んでいく。

 絡みついていた蜘蛛の糸が、光に触れた瞬間に砕け散る。そして、襲いかかってきた蛇型の化け物は、光に包まれるや否や、その場で石化してしまった。

「これが...聖剣の力?」

 驚きを隠せない俺に、ハルネが説明を加える。

「はい!植木鉢から生まれた聖剣故、生命力を操る力を持っているのです!」

 その言葉に、俺は新たな可能性を感じた。

 残った化け物たちが、少し距離を取って俺を警戒している。その中で、漆黒の巨大な化け物――魔将が一歩前に出た。

「人間風情が...」低く唸るような声を上げる。「我が主、魔王様のお計画の邪魔はさせん!」

 そう吠えると、魔将は両腕を大きく広げた。見る見るうちに、その体が膨張していく。筋肉が盛り上がり、角が生え、背中からは翼が生えてきた。

「主様、気をつけて!」ハルネが叫ぶ。「あれは魔将の真の姿です!」

 変貌を遂げた魔将は、もはや校舎に収まりきらないほどの巨体となっていた。その拳一つで、俺の体など簡単に潰せそうだ。

 魔将が咆哮を上げ、俺に向かって突進してきた。その速度は、先ほどとは比べものにならないほどだ。

 避けきれない――そう思った瞬間、俺の左手の文様が強く輝いた。

「主様!聖剣の奥義を!」ハルネの声が聞こえる。

 奥義?何をすればいい?考える間もなく、体が勝手に動き出した。

 俺は聖剣を高く掲げ、叫んだ。

「生命樹(ライフツリー)!」

 聖剣から、まばゆい光が溢れ出す。その光は瞬く間に天井まで届き、そこから枝を広げるように伸びていった。

 光は見る見るうちに形を変え、巨大な樹の姿となる。その枝葉は、まるで生きているかのようにしなやかに動き、魔将に絡みついていく。

「ぐおおおお!」魔将が苦悶の叫びを上げる。

 樹の枝は、魔将の体を締め上げながら、その生命力を吸収しているようだった。魔将の体が、みるみるうちに萎んでいく。

 最後の一撃だ――俺は直感的にそう悟った。

 聖剣を構え、魔将めがけて跳躍する。

「はあああああっ!」

 渾身の一撃を、魔将の胸に叩き込んだ。

 刹那、世界が白く染まる。

 ...

 光が収まると、そこにはもう魔将の姿はなかった。代わりに、一輪の花が咲いていた。

「見事です、主様」ハルネが近づいてきて言う。「魔将を浄化し、新たな生命に変えてしまうとは...」

 俺は、自分の手の中の聖剣を見つめた。まだ信じられない。この力が、俺のものだというのか?

 周りを見回すと、他の化け物たちの姿もない。おそらく、魔将の消滅と共に、どこかへ消え去ったのだろう。

「ハルネ」俺は聞いた。「これは一体、どういうことなんだ?」

 ハルネは微笑んで答えた。「はい。全てをお話しいたしましょう。主様の運命と、この世界の危機について...」

 俺は深く息を吐いた。これが終わりではない。むしろ、何かの始まりなのだと直感的に理解できた。

 聖剣を握り締め、俺は決意を新たにした。どんな運命が待っていようと、この力で世界を――そして大切な人たちを守り抜くと。
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