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第四話
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「は……?」
「聖騎士に選ばれたら、僕と結婚してくれ」
一瞬、言われたことの意味がわからず、レティシアは目を瞬かせた。だが、同じ言葉をもう一度繰り返されて、やっと彼が何を言っているのかを理解する。
——正気なの……?
祝いの言葉を遮られ、思いも寄らない言葉聞かされたレティシアは彼の正気を疑って、半眼になってしまう。
だが、エルヴェの顔は真剣そのもので、嘘や冗談を言っている雰囲気ではない。その空気に圧され、レティシアはごくりとつばを飲み込んだ。
「レティ」
「へっ……?」
戸惑っている間に、エルヴェがそっと肩に手を添える。夏物の薄い布地越しに彼の熱い手の感触が伝わってきて、一気に体温が上がる心地がした。影が差して思わず視線を上げると、彼の顔が近づいてくる。
「な、っちょ、ちょっと……!!」
唇がくっつきそうになる寸前で、レティシアは慌てて二人の間に手のひらをねじ込んだ。手のひらに感じるふよっとした生暖かい感触が、彼の唇だと思うと脳が破裂しそうなほどの羞恥が襲いかかってくる。
気のせいではなく、口付けられそうになったのだ——そう思うと、次に襲いかかってきたのは困惑だった。いや、困惑などという生やさしいものではない。大混乱だ。
「あ、あ、あなた、い、いったい……!」
「ね、レティ……ずっと僕は態度で示してきただろう? 冗談なんかじゃなく、僕は本気で——」
「ば、ばか……っ!」
いつの間にか握られていた手を無理矢理振りほどくと、レティシアはどんと彼を突き飛ばした。だが、さすが聖騎士候補にまでなった騎士だけのことはある。エルヴェはよろける様子すら見せず、再びレティシアの腕を掴んだ。
「ね、レティ——」
「……るわけ、ないでしょ!」
「え?」
突然大声を上げたレティシアに、エルヴェが目を丸くする。手の力が緩んだのを良いことに、レティシアは力一杯手を振り払うと大声で叫んだ。
「なれるわけないでしょ、って言ったのよ! 万が一……万が一なれたら考えてあげても良いわ!」
「本当に?」
「ええ、オービニエ家の娘としての誇りにかけて誓うわよ!」
そう宣言すると同時に、エルヴェがにやりと笑うのが見えた。はっとしたがもう遅い。口から出た言葉は戻ってこない。
「じゃあ——一ヶ月後を楽しみにしていて」
最後に手を取って、その甲に触れるか触れないかの口付けをそっと残すと、エルヴェは爽やかな笑顔を残して去って行った。
「聖騎士に選ばれたら、僕と結婚してくれ」
一瞬、言われたことの意味がわからず、レティシアは目を瞬かせた。だが、同じ言葉をもう一度繰り返されて、やっと彼が何を言っているのかを理解する。
——正気なの……?
祝いの言葉を遮られ、思いも寄らない言葉聞かされたレティシアは彼の正気を疑って、半眼になってしまう。
だが、エルヴェの顔は真剣そのもので、嘘や冗談を言っている雰囲気ではない。その空気に圧され、レティシアはごくりとつばを飲み込んだ。
「レティ」
「へっ……?」
戸惑っている間に、エルヴェがそっと肩に手を添える。夏物の薄い布地越しに彼の熱い手の感触が伝わってきて、一気に体温が上がる心地がした。影が差して思わず視線を上げると、彼の顔が近づいてくる。
「な、っちょ、ちょっと……!!」
唇がくっつきそうになる寸前で、レティシアは慌てて二人の間に手のひらをねじ込んだ。手のひらに感じるふよっとした生暖かい感触が、彼の唇だと思うと脳が破裂しそうなほどの羞恥が襲いかかってくる。
気のせいではなく、口付けられそうになったのだ——そう思うと、次に襲いかかってきたのは困惑だった。いや、困惑などという生やさしいものではない。大混乱だ。
「あ、あ、あなた、い、いったい……!」
「ね、レティ……ずっと僕は態度で示してきただろう? 冗談なんかじゃなく、僕は本気で——」
「ば、ばか……っ!」
いつの間にか握られていた手を無理矢理振りほどくと、レティシアはどんと彼を突き飛ばした。だが、さすが聖騎士候補にまでなった騎士だけのことはある。エルヴェはよろける様子すら見せず、再びレティシアの腕を掴んだ。
「ね、レティ——」
「……るわけ、ないでしょ!」
「え?」
突然大声を上げたレティシアに、エルヴェが目を丸くする。手の力が緩んだのを良いことに、レティシアは力一杯手を振り払うと大声で叫んだ。
「なれるわけないでしょ、って言ったのよ! 万が一……万が一なれたら考えてあげても良いわ!」
「本当に?」
「ええ、オービニエ家の娘としての誇りにかけて誓うわよ!」
そう宣言すると同時に、エルヴェがにやりと笑うのが見えた。はっとしたがもう遅い。口から出た言葉は戻ってこない。
「じゃあ——一ヶ月後を楽しみにしていて」
最後に手を取って、その甲に触れるか触れないかの口付けをそっと残すと、エルヴェは爽やかな笑顔を残して去って行った。
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