上 下
14 / 43

14、はじめての迷宮ですわ〜!

しおりを挟む


 四足の迷宮の前にいる。
 道中や野営はまさに何事もなく、面白みもなく無事に経過した。

 「おお、やはり迷宮の門は迫力があるでござるなあ」

 「でっけぇですわ~!」

 一通り感動したら、いざ、侵入だ。

 迷宮内部は、草原のように広々としていた。
 外からみたときは裏側もなく、ただの門のみだったのだが。やはりどこかに転移などさせられているということだろう。

 「草の背が高いでござるなー。これは警戒しておかないと不意打ちが怖いでござる」

 「サモン、ゴブリン!斥候として先頭を進ませますわ~!索敵はゴブリンと、スズナ様におまかせしますわね!」

 「おお、使い捨ての肉壁は便利でござるなー」

 幻影召喚でうまれたソレは、粉々に撃破されても翌日また召喚出来ることが判明している。
 なので、こうやって、一番危険な位置に配備することができる。

 「と、さっそく1匹……おお、シャドウウルフが単独でござる!運がいいでござるなー、仕留めるでござるよ!」

 「や、やりますわよ~!」

 現れたのはシャドウウルフ。薄暗い毛並み、大型犬ほどの体躯で、夜間に群れで狩りをする魔物だ。
 しかしここは迷宮、そして何故か日が登っているようにみえる。シャドウウルフの強みは、ない。

 とはいえスピードもパワーも人よりは上だ。
 ゴブリンに素早く接近、ゴブリンが木の棒を構えるよりはやく、その喉を噛み砕く。
 しかしそのスキにスズナが接近、シャドウウルフの右後ろに物音を発生させそちらに気を引き、一瞬だけ気が逸れたシャドウウルフの左側面を蹴り飛ばす。
 よろけはするが倒れない程度のダメージだが、これもまた気をそらせるための攻撃だった。
 音によって追撃がくると思わせ、しっかりと左を意識させる。しかしそこにはもう、スズナはいない。居るのは剣を構えた、囮役のお嬢様だ。
 こいつではない、と気づいた時にはもう遅い。真上から、首に向かってダガーが振り下ろされる。
 深く刺さり、絶命。シャドウウルフ、討伐完了だ。

 「ふ、ふっ……さすがにウルフ系だと、体力使うでござるなー……四足はまだ早かったでござるか……?」

 「わ、レベルが上がりましてよ!幻影も戦闘参加判定ですのね?」

  薔薇小路 牡丹(ボタン) 17歳
レベル 4
種族 人間 お嬢様
ユニークスキル 暴食
スキル 食事効果アップ(小)
            食事量アップ(極小)
魔法 黒『食魔法』
加護 大罪管理女神の加護(小)
        創造神の加護(極小)
幻影 ゴブリン(極小)

 「お、ドロップもきたでござる!……これは、シャドウウルフの剥製……?でかいでござる……いやでも軽い。売れるでござるかね……?」

 「か、かっこいいですわ~!ほしい!ほしいけど置くところはない!残念ですけれど売却しますわ~!」

 「うむ、まあ、そこそこの値にはなるでござろう、きっと。……さすがに連戦はきついでござるし、今回の探索は終わるでござるよ?我々には四足はまだ早かったでござる」

 「次回はスライム迷宮にいきませんこと?」

 「スライムは我々には相性がわるいでござる……いやでも、シャドウウルフの幻影がいれば問題ないでござるかね?うーん……骨が食べられるなら、骨の迷宮のほうがいいでござるが……」

 「骨、まあ、食べれなくはないですわよ?粉砕して水で練って焼いて、お煎餅ですわ~!」

 「食えるのか、骨……なら次回は骨の迷宮にいくでござる。……人型のノロマなら、いくらでも殺れるでござる」

 一戦で難易度を理解し、撤退する。正直、一層なら余裕があると、ふたりとも思ってはいたが。戦闘力不足である。
 シャドウウルフの肉やら皮やらを解体し、袋につめる。これは帰るまでの今日と明日で食べきれそうだ。
 これで、次回にはシャドウウルフの幻影も戦闘につかえる。戦力増強の意味では、最速で最高の結果を得られた、といってもいいのかもしれない。

 無事に全て食べ切り、町に戻った。幻影のシャドウウルフは、かわいかった。そしてそこそこつよかった。
 道中、ゴブリンの群れに襲われたが、スズナとシャドウウルフが蹂躙してくれた。そしてシャドウウルフがゴブリンを1匹平らげてくれたため、ゴブリンの召喚数が1増えた。

  薔薇小路 牡丹(ボタン) 17歳
レベル 4
種族 人間 お嬢様
ユニークスキル 暴食
スキル 食事効果アップ(小)
            食事量アップ(極小)
魔法 黒『食魔法』
加護 大罪管理女神の加護(小)
        創造神の加護(極小)
幻影 ゴブリン(極小)
        ゴブリン(小)
        シャドウウルフ(小)

 シャドウウルフの剥製は、そこそこ高く売れた。
 お貴族様からの予約が入っていたらしい。銀貨20枚になった。聞けば、剥製はドロップ率がとんでもなく低いそうだ。

 ふたりはほくほく顔で、一生縁がないと思っていた高級海鮮料亭に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

処理中です...