【R18】おいもではじまるシークレットベイビー

人の恋路を邪魔する奴は 帝国宰相補佐アデラール・ゴライアス23歳 〜 その１

「す、すまない。もう休憩しよう。。。」

「・・・大丈夫ですか、ご無理されては大変です。次の宿場で泊まりましょう」

前回乗った帆馬車よりは格段にマシではあるが、急げ急げというゴライアス卿の命めいそのままに街道で馬車を走らせ続けた結果。

初日数時間でゴライアス卿本人がダウンする事態となっている。

「ゴライアス卿、到着しました。降りることはできますか？」

馬車の中に問うても返事はない。

そっと開けて覗いてみると、そこには気を失っているゴライアス卿がいた。

（ちょっとやりすぎちゃったかな？）

今回の馬車は、本体はスプリングのきく立派な最新式のものをオリウス家当主より借受ていた。

帝国貴族様が満足いく素晴らしい乗り心地のものを用意したのだ。

しかし、街道にはなぜか、人工河川工事で出た龍石混じりの土砂が積まれてひどくでこぼこした箇所が所々にあり行きと同じく悪路のままであった。

ヒト様の管理区で領民に街道を今すぐきれいにしろ、なんていうことはさすがの帝国宰相補佐殿にも権限はなくただひたすら耐えて道を進むしかなかった。

「人工河川運搬構想の申請書にはこんな現状は記載されていなかった、この特許申請には帝都に戻ったら厳重に申し送りをしてやる！帝都の新聞にもあらかじめリークしておこう、稀代の構想だなんて本当にばからしい」

実際、人工河川運搬構想とその実証自・体・は素晴らしいのであるが目の前の馬車酔いと前回の悪路でおった傷の痛みに正常な思考が妨げられているゴライアス卿である。

「そうですね、なかなかの行程でしたね。これはいつまで、どこまでつづくんでしょうか」

わざとらしく、はぁとため息をつくネイトや今回護衛としてファルマ領からついてきている傭兵たちは実のところピンピンしている。

傭兵、といっても実はファルマの兵士であるが、たちは慣れているとしても王都で暮らすネイトがなんともないのは本当であったらおかしなことである。

からくりはこうだ。

馬車を引く馬は２頭、馬に見えるが実は運搬に特化した騎獣である。御者をしている傭兵は御者台ではなく騎獣に直接乗っていた。

ネイトや他の傭兵はそれぞれ小回りのきく馬にのり悪・路・の端にある、領民たちは普通に通行している平坦な道を闊歩していた。

そう、つまりゴライアス卿の乗っている馬車のみバウンスしながら走行しているのだ。

「すまないが、食事もいらないので勝手にやってくれ。体調が回復したら伝える」

よろよろと支えられながら客室に入って行ったゴライアス卿の背中を見送り、ネイトは宿屋の裏手に周りユリスに教えてもらった笛で鳥を呼び出すと現状や位置を書き付けていたメモを飛ばした。