僕と優カッコイイ横川さんは夢の関係

川輝 和前

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僕と優カッコイイ横川さん

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  僕、前村奈輝まえむらなきは困惑していた。
  なぜ困惑しているのか?それは僕にも分からない。家の布団で気持ちよく寝転んだところまでは覚えている。だが、その先

「ねぇ、聞いてる?なんであんたが、私の部屋にいるわけ?」

  寝たはずの僕が、どうしてクラスの女子、しかも人気者の横川笑愛よこかわえみなさんの部屋に座っているのかが全くの謎だった。
  本当に、退屈な授業の終わりのチャイムの後、身体を起こし目を開けるような感覚で目を開けたら、彼女の部屋にいた。

「おい、さっさと答えろよ変態。」
「えっとぉ……僕にも分からないというか……」
「私が分からないって言ってんだからさ、何とか説明しろ?」 
「そんな無茶な……」

  横川さんは人気者でありながら、言わゆるヤンキーでもある。明るく、誰に対しても裏表のない性格で、悪い噂を聞いたことがないような人だ。
  そして僕は、当然絡んだことがないわけで。だから彼女の部屋にいるなんて本当にありえないことで。ただ本当に、目を開けたら、部屋中がピンクに包まれており、ベットの上に座っている彼女の正面に座っていたんだ。しかも、お互いなぜか制服。

「警察呼ぶ?」
「ま、待って!本当に!身に覚えがないんだ!気づいたら横川さんがいて……」
「そりゃあ私の部屋なんだから、私が居るに決まってんだろ?なんで私がやってきたみたいな話になってんだよ。」
「それはもうごもっともです……」

  眠りについた時、深夜一時だった。それを考えると、今通報されたら問答無用で捕まってしまう。

「いや……信じてもらえないと思うんだけど……寝て起きたらここに居たんだよね……」
「いや、だったとしたら本気できもいよ。」
「ですよね……今自分で言ってすぐに、きもいなと自分でも思いました。」
「はぁ……ってかどこから入ってきたわけ?いや、あれ?しかもなんで私制服なの?兎のパジャマだったはず…あっ!!違うから!普通の!普通のだから!」

  横川さんは焦って否定するが、兎のパジャマは可愛いだろうから何も気にしない。

(ん?このシチュエーションだと、何を言っても俺は変態になってしまうのでは?)

  恐ろしい事に気がついてしまった。

「あっれ~寝てたはずなんだけど……あ、これが夢だったり?」
「……夢!そ、そう!ぼ、僕もだよ!」
「あんたは確信犯でしょ。寝て起きたら女の子の部屋に居たなんて言い訳、今どきの変態でも使わないわよ。私はいいけど、あんたは駄目。」
「ぐっ!理不尽だけど、何を言われても言い返せない!」

  とはいえ、ここが夢というのは、よくよく考えれば分かりやすい答えだった。シチュエーションと会話の衝撃が強くて中々辿り着けなかっただけで。

「いや、だとしたらどうして僕の夢に横川さんが?」
 「は?ふざけんな。私の夢にお前が勝手にでてきたんだろうが。でていけ。そして二度と私の前に現れるな変態。」
「学校行けなくなっちゃうよ……」
「あっ……そう!そうだ。学校で思い出した。この際だから聞くんだけどさ、前村ってさぁ、なんで女子に嘘告とかしてんの?」

  心臓が一瞬止まった。いや本当に。その話は、僕が一番触れてほしくない話題だったからだ。

「それは……」
 
  夢の中で嫌な事を思い出す。正に悪夢だ。

「あんたさぁ、入学当初から、色んな女子に嘘の告白してるって噂じゃん。良くないよそれ。すごい嫌われてるよあんた。」

  夢の中で嫌われてるよなんて、もう立ち直れないかもしれない。でも本当のことだ。僕は嫌われている。高校に入ってまだ三ヶ月だけど、僕をよく思っている同級生はいないだろう。
  だが、嫌われたくて嘘の告白をやったわけじゃない。いや、そもそもなんて一度たりともしたことがない。
 
「そうだよね……ごめん……」
「謝るのは私じゃないっしょ。それに、まだ教えてもらってないんだけど。」
「……なにを?」
「だから、どうして嘘の告白なんてやったの?って話。はっきり言って、やる理由が訳わかんないんだけど。楽しいの?」

  楽しいなんて思うはずがないだろう。その噂が流れ始めてから、どれだけ同級生からイジメのような扱いをうけてきたか。

「夢なら……」
「は?夢ならなに?」

  ここが夢なら、全てを吐き出しても大丈夫だろうか。そんな考えが頭をよぎる。

「嘘告なんて、一度も……やってないよ。」

  気づいたら僕は、横川さんの前でそう言葉にしていて

「はぁ?皆……色んな人の証言があるけど?流石にそこで嘘をついたらやばいっしょ。」
「……本当にっ!やってないんだよ……」

  きっと僕は、情けない顔をしているだろう。夢の中で号泣なんて初めての事だから、どんな顔をしているのか、自分でもよく分からないけど。

「ちょっ……泣くことないじゃん!ごめん!言い過ぎたって!決めつけはよくないよな!は、話聞くから!な?ほらティッシュ!」

  横川さんがここまであたふたしているとなると、本当に情けない顔なのだろうな。元々情けない顔とよく言われるが、今は最高潮だろう。
  とりあえず、僕は涙をふいて、心を落ち着かせ、深く深呼吸をした。

「ごめん、ありがとう横川さん。落ち着いたよ。本当にごめん急に泣いたりして……」

  僕が逆の立場だったら、最悪な気分だったろうな。いきなり同級生が、しかも嫌われ者が現れて目の前で号泣とか。正に悪夢だ。

「ま、まあ別にいいよ。夢だし。現実だったら、この先の人生含めて、一番のドン引きだったけど。」
「生涯最低レベルのものをみせてしまったということか……」
 
  酷いものだとは思っていたが、まさかそこまでの話だとは思わなかった。

「それで?やってないってどういう事?一応、聞いてあげる。」

  そして横川さんが、僕にそう聞いてくる。

「……僕の噂、どんな風に聞いてる?」
「六人の子に、マインで告白したって。そして、その後返事を聞いた後に、冗談でした~って。私が聞いたのは、そんな話。」
 
  そう、これが学校に流れている僕の噂。
 
「……本当のこともあるけど、そんな酷いことは一切していないよ。」
「ふーん、じゃああの噂はなに?」

  誰にも話したことがない、話せない僕だけが知っている真実。信じてもらえるか分からないけど、どうせ夢なのだから。僕は、全てを話した。

「僕が告白したのは、一人だけ。中学生のときから好きだった伊川いかわさんだけだよ。」
「伊川……千代じゃん。それってアレだよね?一番初めに前村に嘘告されたって、言ってた子じゃん。どういう事?」

  伊川千代いかわちよ、僕の初恋の相手であり、初めて告白した相手でもある。そして、一番初めに僕の噂を流した張本人だ。

「……分からない。でも、告白したのは本当だよ。マインじゃなくて電話でだけど。それに信じてもらえないだろうけど…良いよって言ってもらえたんだ。」
「はぁ??だったらなんで付き合ってないのよ。それに、もしそうならあの子が泣いていた理由は?」
「それが僕にも分からないんだ……」
「はぁ?なにそれ。話になんないじゃん。」

  そう。それが僕にも分からないことだった。いいよと言ってもらい、その後少し話した後に電話を切った。そして、次の日学校に行ったら、クラスで彼女は泣いていて、僕は皆から責められた。

「前村くん…千代ちゃん本気だったのに…酷いよ冗談だなんて……」
「流石にそれはやばいだろ前村……」
「謝りなよ……最低だぞやっていること……」

  皆が言っていた事を繋げて考えてみたところ、どうやら伊川さんは、僕にマインで告白をされ、良いよと返事をしたその数分後に、電話で冗談でしたと僕から言われたと皆に相談したらしく

「誤解だよ……そんなこと言ってないよ……」

  僕はあの時、本当になにがおきてるかわかっていなくて

「伊川さん!伊川さんからも言ってよ!」

  焦ってだしたその言葉が、まずかった。

「私が……皆に嘘をついてるって言いたいの?前村くん……私、君にそんな酷いことをされるようなこと、なにかした?」

  その言葉が、僕を完全な悪者に仕立てあげた。そこから、色々なクラスで、僕に嘘告をされたという人がでてきて、僕はあっという間に孤立した。

「僕が告白したのは一人……六人もしていないし、嘘も言ってない。信じてもらえないだろうけど……」
「ふーーん、だったらなんで、皆に言わないの?」

  もう三ヶ月も前から皆が知っている噂話。時が経つにつれ噂話は、皆が認知している真実へと変わっていた。それに

「言ったところで、誰も得をしないじゃないか。」

  証拠が無い。それに仮に、今頃暴露をしたところで信じてもらえる可能性は低いし、信じてもらえたところで僕の印象が全て良くなるわけでもない。おきるとしたら、僕が好きだった子が周りから僕と同じように今更責められるという無意味なことのみ。誰も得をしないのだ。

「得って……本当かどうかなんて私には分からないけどさ、あんたがクラスや、他のクラスの一部のやつに色々嫌がらせをされてるのは私も知ってる。今言ったことが、本当だったとして、あんたそれでいいの?」
「……誰も僕を信じないよ。証拠もない。」
「向こうはマインで告られたって言ってんだから、みせてって言えばいいじゃん!」
「そんなことしたら逆効果だよ……それに、暴いたら今度は伊川さんが大変なことになるじゃないか。」

  あの一件から、伊川さんはクラスの中心人物のような人になった。横川さんとはまた違った感じの人気者だ。

「呆れた。向こうの心配してるんだ。千代もあんたをイジったりしてるよね?理解できないなぁ。私だったら、徹底的に追い込んでやるって思うけどな。」
「顔がガチだね……」
「本気だもん。納得いかない!」
「凄いな……僕はそんな強く生きられないよ。」

 キーンコーンカーンコーン

「えっ?」
「は?」

  突如、学校のチャイムが聞こえてくる。
  そして、その直後に床が抜ける。

「うそっ!落ちるんだけど!」
「うおおおお!いや、これが夢オチ?」
「馬鹿言ってないでなんとかして!」
「無理だよ!」

  暗闇に落ちて、落ちて、そして僕は、起きたのだと思う。

「僕の家の……天井だ……」

  視界には知っている天井があった。

「強烈な夢だった……」

  でもどこか、胸がスッキリしたような気もする。いい夢だったかどうかは分からないけれど、いい睡眠ではあったと思う。

「学校……行こ。」

  憂鬱だ。学校に行くといつもクラスの男子からは女たらしだと言われ、女子からは陰口。それでも、親にはそういうことを一切喋ってないので笑顔で家をでる。

「行っきます。」
「はーーい、いってらっしゃーい!」

  話せるはずもない。自分の息子が学校で女たらしだと言われ、イジメのような扱いをうけてますなんて、僕が親だったとしたら、どう反応していいか分からない地獄のような内容だ。
  できるだけ朝の学校は、朝早くから行くようにしている。早く行って、隠れられそうなところを探す。もしくは机で寝て、喋りかけんなオーラをだす。そしたら、朝の時間だけだけど、イジってくる人は少なくなるからだ。

「おはよ。昨日のこと、覚えてたりする?」

  そして学校だけじゃなく通学路も、いつも一人になれる道を通っているのだが。

「えっ……どうしてここに……昨日って、あれ夢じゃ……」
「やっぱり。そうよね。おかしいと思ったの。あんな鮮明で、あんな感情的になれる夢なんてあるのかなって。いや、夢はみてたんだろうけど、同じ夢……みてたってことかな?」
「同じ夢……?そんな馬鹿な……」
「やっぱり違うかな?」

  目の前に、そう言って首を傾げる横川さんがいる。下調べまでして、誰も通らない道を選んで通学しているのに。

「おい、無視すんな。ってか毎日この通学路使ってるけどさ、なんかこだわりあんの?」

  しかも、毎日だとバレてる。

「ど、どうしてそれを……」
「だってここ、私の家だもん。」

  横川さんが指をさしたところは、いつも僕が横を通っている一軒家で

「二階が私の部屋なんだけどさ、朝起きて窓のカーテン開けたら、いつもあんたが通ってるからさ。早いな~っていつも思ってたんだよね。」
「そ、そんな漫画みたいな……」

  夢だけでもおかしいのに、そんな偶然あっていいのだろうか。いや、だとしてもだ。わざわざここに居る理由が分からない。

「どうして、ここに?」
「一つ確認がしたくてさ……同じ夢をみてたってことはさ、あの時のあんたは本物でしょ?じゃあ昨日の夢の中での話、あれも本当?」

  同じ夢をみていたなんて事態に、お互いあまり驚かないのは、話した内容を鮮明に覚えているからだろう。心のどこかで、無意識下で、本人と話していたと分かっているんだ。

「……信じてもらえないだろうけど本当だよ。」
「そっか……確か伊川さんも来るの早かったよね。じゃっ、私千代のところに行ってくる!!」
「えっ?は?」
「安心して!前村が何かされるようなことはしないから!」

  徹底的に追い込んでやる。昨日、横川さんが言ってた言葉だ。

「待って待って待って!何も安心できないよ?!どうしてそうなるの?!」

  僕は走る横川さんを全力で追いかけた。

「おはよ千代!」
 
  が、追いつかなかった。

「あっおはよ!めずらしいね笑愛ちゃん!こんな朝はや……前村くん?」

  勢いよく教室に入った横川さんを追いかけ、その勢いのまま教室に同じく入ってしまった僕をみて、黒板を消していた伊川さんの動きが止まる。と、僕の動きも止まる。この場にいるのは、真実を知っている者のみ。

(修羅場だっ!!気まづすぎる!)

  言い方は悪いが、嘘をついた者と、嘘をつかれた者、そして両方の主張を知っている者の三人。僕は横川さんのほうをみる。

(横川さん……何をするつもりだ?)

  心臓のバクバクが止まらない。走ってきたからではない。この先何がおこるか分からないからである。しかもそれは、必ず僕と伊川さん双方にとっていいことではないのが確定しているので、その緊張からくるバクバクである。

「えっとぉ……笑愛ちゃん、これはどうゆう状況なのかな?」

  初めに口を開いたのは伊川さんだ。

「千代に確認したいことがあってさ、一つ聞いていいかな?」

  それに横川さんが答える。そして、横川さんはどんどん伊川さんに対して距離を詰めていき目の前まで迫る。

「な、なにかな?」
「前村に告られたっていう、マインみせてくれない?」
「えっ……ど、どうして?そんな急に言われても……」
「お願い!それだけだから!」

  横川さんは伊川さんを拝むように両手を合わせ、軽く頭を下げた。

(いやいやいや、この状況でその頼む事はヤバいって横川さん!)

  少しの沈黙の後、伊川さんが口を開いた。

「笑愛ちゃんも……私が嘘を言ってるって言いたいの?」

  同じだ。あの時と、全く同じだ。横川さんもきっと、だが、僕がそう思った時だった。

「それを確かめるために、みせてほしいなって。まだ遡れるよね?」

  それは疑いだった。今まで誰一人彼女に対してしなかった、疑いの言葉を横川さんは伊川さんに言った。

「わ、私のをみなくても、前村くんに直接聞けばいいじゃん!ってか今更なんなの?彼はあの時否定してなかったでしょ?それが答えじゃない。」

  伊川さんは、僕にそう言って指をさす。
  そうだ、僕は否定しなかった。この話は、それで終わってしまったんだ。それなのに

「そりゃあ、皆と逆の事を言うなんて、誰でもできるわけじゃないからな。あの時は、私含めて皆が、千代の話を先に聞いてたから。」
「私が……前村くんを嵌めたって言いたいの?いや、そもそもこれは私達の問題だし、笑愛ちゃんは何も知らないよね?」
「いいや?ちゃんと全部聞いたよ。前村から、ちゃんと。だから驚いた。仮に前村の方が本当だったらと思うと。都合が良いかもしれないけど、確かめたくなったから聞いてんだ千代に。」
「……ありえない、そっちを信じるだなんて。あっ、もしかして笑愛ちゃん前村くんのこと好きなの?」
 
  この二人の言い合いで、心臓が何回止まりかけたか分からないが、横川さんが僕を好きだなんて、それこそありえないだろうと思う。でも、横川さんが言ってる言葉全てが、僕は嬉しかった。
  たった一回、それも夢の中での会話なのに、どうしてそこまで信じて行動してくれるのか分からないけど、今の僕の目には

「そんなんじゃない。好きだからとかじゃない。」
 
  伊川さんの言葉に、横川さんが答える。

「ただ、笑って人が嫌がることをする人と、馬鹿みたいに優しくて、泣いて本音を話してくれる人だったら、私は泣いて本音を話してくれる人を信じたい。そう思っただけ。」

  ただ横川さんが、優カッコイイ人にしかみえなかった。

「何それ……私を悪者にしたいわけ?前村くんからも何か言ってよ!」

  と、ここで僕に伊川さんが話をふってくる。だが、僕が返答する前に先に横川さんが

「待てよ、これは千代と私の問題だろ?前村は関係ないよな?優しいやつの、優しい心を利用しようとすんなよ。」
「別に!私はそんなつもりじゃ……」
「じゃあ、告白のマインみせてくれ。そして勘違いだったら、謝るよ。それとも、みせるものがないか?」
「……」

  伊川さんは黙り込んでしまう。そして

「……ごめんなさい。私……高校に入って、友達が全くできなかったの。それがすごく不安になってて……だから、みんなと絡めるきっかけみたいなのが欲しくて……なにか話題が欲しくて……それで……こ、ここまでのことになるとは思ってなかったの!これは本当!引くに引けなくなって……ごめんなさい前村くん。」

  知らない方がよかった思えるぐらい、酷い真実だった。はっきり言って、そんな事でと鼻で笑ってしまうレベルだ。そしてこんなしょうもない理由が原因で僕は三ヶ月も……。

「……別にいいよ。」

  怒る気にもなれなかった。僕は、教室を出て、その場を去った。
  そしてその後は、いつも通りの学校を過ごした。

「……帰って寝よ。」
 
 そして学校が終わり、いつもの誰も通らない道を歩いていたときだ。

「よっ!」

 朝と同じ場所に、横川さんがいた。

「勝手なことして、怒ってるか?」

  横川さんはそう聞いてくる。

「ううん。ヒヤヒヤはしたけど、スッキリもしたし。怒っては……ないかな。むしろ、あれを聞いて横川さんが怒らなかったことに驚いたよ。」
「一番怒るべき前村が怒らないんじゃ、私が怒るのも変な話だろ。」
「……本当にありがとう。なんだか、前を向ける気がする。」
「そうかよ。ならよかったな。」

  本当に、夢の中での一回の話を信じて、ここまでしてくれた横川さんには感謝しかない。

「……まぁなんだ。これからも何かあったら言ってこいよ。いや、何もなくても全然いいけどよ。」
「えっ……いいの?」
「前村の言う通り、真実が分かったらからって、なにか変わるわけじゃない。でも……私は知ってるから。お前があんなやつを庇ってしまうぐらいどうしようもないお人好しだって。だから、まぁ話し相手ぐらいにはなってやる。」
「横川さん……本当に、ありがとう。」

  横川さんは本当に、優しくてカッコイイ。

「普通だよ。じゃっ、また明日学校でな。」
「うん、また明日。」

  そうして、僕は高校生活が始まって初めて、ちゃんとした笑顔で家に帰ることができた。
  信じられない、夢のような一日だった。
  そして、その日の夜

「何かあったら話に来いって言ったけどよ……どうして夢の中なんだお前は?お前、本当はただの変態か?」
「いや本当に……面目ございません……」

  僕と横川さんは再び夢の中で出会い

「しかも毎回なんで私の部屋なんだ?前村、お前の変態の力がそうさせてんのか?」
「……まさか本当に、僕にそんな力が?」
「いや!否定しろよ!毎日続くのかこれ?!」
「僕にも分かりませんよ!」

  僕と優カッコイイ横川さんの夢の関係は、これからも終わらなかった。

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