1 / 4
冷蔵庫(グロ注意)
しおりを挟む
うちの冷蔵庫は、何かおかしい。
見た目は何の変哲もない、腰ほどの高さの冷蔵庫だ。
近所のリサイクルショップで買った、一人暮らしの中年男には程良いサイズの代物だ。
でも、何かおかしいのだ。
それが起き始めたのは買って一週間も経たない、ある日の事だ。
冷蔵庫を開けると、何故だか分からないがピンク色の便箋が入っていた。
見覚えはあった。
生まれて初めてもらったラブレターだ。
忘れるはずがない。
だが、ここに入れた覚えもない。
丸みの帯びた文字が生き生きと踊っていた。
酸味の強い果実のような、甘酸っぱさを感じた。
次はその一週間後だった。
晩酌用のビールを取るため開けると、生臭い空気が中からあふれ出てきた。
顔をしかめて中を探ると、女物のパンツが丸まっていた。
白い液体で濡れるそれは、股布の部分が赤く滲んでいた。
それから、定期的に色々なものを発見するようになった。
手編みのマフラーや映画のチケット、ペアリングなど……。
それらには、若い頃の思い出が溢れていた。
初めは気味悪く思っていたが懐かしい品々に笑みが零れる様になった。
しばらくすると、今度は白い便箋が入っていた。
そこには、汚く乱れた文字が書き殴られていた。
息苦しくなった。
重い感情で押しつぶされそうになり、暴れる鼓動を鎮めるため胸を強く押さえた。
その次の日、恐る恐る開けた後、激しく嘔吐した。
中には病院の領収書と一センチほどの赤黒い生ものが置かれていたのだ。
見覚えは、無かった。
だが、全てを理解した。
頭をかきむしり、額を床にこすりつけるのを止めることが出来なかった。
それ以来、冷蔵庫を開けていない。
捨てる勇気も、受け入れる勇気もなく、ガムテープを巻き付けて放置してある。
だが、最近になって心が揺れている。
中から、何かが壁を蹴るような音が聞こえてくるからだ。
冷蔵庫の扉に耳を当て、静かに目を閉じるのが日課になった。
見た目は何の変哲もない、腰ほどの高さの冷蔵庫だ。
近所のリサイクルショップで買った、一人暮らしの中年男には程良いサイズの代物だ。
でも、何かおかしいのだ。
それが起き始めたのは買って一週間も経たない、ある日の事だ。
冷蔵庫を開けると、何故だか分からないがピンク色の便箋が入っていた。
見覚えはあった。
生まれて初めてもらったラブレターだ。
忘れるはずがない。
だが、ここに入れた覚えもない。
丸みの帯びた文字が生き生きと踊っていた。
酸味の強い果実のような、甘酸っぱさを感じた。
次はその一週間後だった。
晩酌用のビールを取るため開けると、生臭い空気が中からあふれ出てきた。
顔をしかめて中を探ると、女物のパンツが丸まっていた。
白い液体で濡れるそれは、股布の部分が赤く滲んでいた。
それから、定期的に色々なものを発見するようになった。
手編みのマフラーや映画のチケット、ペアリングなど……。
それらには、若い頃の思い出が溢れていた。
初めは気味悪く思っていたが懐かしい品々に笑みが零れる様になった。
しばらくすると、今度は白い便箋が入っていた。
そこには、汚く乱れた文字が書き殴られていた。
息苦しくなった。
重い感情で押しつぶされそうになり、暴れる鼓動を鎮めるため胸を強く押さえた。
その次の日、恐る恐る開けた後、激しく嘔吐した。
中には病院の領収書と一センチほどの赤黒い生ものが置かれていたのだ。
見覚えは、無かった。
だが、全てを理解した。
頭をかきむしり、額を床にこすりつけるのを止めることが出来なかった。
それ以来、冷蔵庫を開けていない。
捨てる勇気も、受け入れる勇気もなく、ガムテープを巻き付けて放置してある。
だが、最近になって心が揺れている。
中から、何かが壁を蹴るような音が聞こえてくるからだ。
冷蔵庫の扉に耳を当て、静かに目を閉じるのが日課になった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

二人称・短編ホラー小説集 『あなた』
シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』
そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・
※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。
様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。
小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。
牢獄/復讐
月歌(ツキウタ)
ホラー
秋山アキラは突然拉致されて、目覚めれば監獄の中にいた。高校時代のいじめっ子5人が囚人として囚われている。そして、俺の横にはかっての苛められっ子金田光一がいた。
※スタンフォード監獄実験とは、監獄の空間を再現して「環境が行動に影響を与えるか」を調べた実験。心理学者のフィリップ・ジンバルドーが行った。
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
小夜中に眠る物語 ~眠れない夜に不思議な話でもいかがですか?~
神原オホカミ【書籍発売中】
ホラー
体験談なのか、フィクションなのかはご想像にお任せします。
不思議なお話をまとめます。
寝る前のほんのちょっとの時間、不思議なお話をどうぞ。
すみませんが不定期更新ですm(__)m
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆内容が無理な人はそっと閉じてネガティヴコメントは控えてください、お願いしますm(_ _)m
◆アルファポリスさん/エブリスタさん/カクヨムさん/なろうさんで掲載します。
〇執筆投稿:2025年
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
究極?のデスゲーム
Algo_Lighter
ホラー
気がつくと、見知らぬ島に集められた参加者たち。
黒いフードを被った謎のゲームマスターが告げる—— 「これは究極のデスゲームだ」。
生き残るのはただ一人。他の者に待つのは"ゲームオーバー"のみ。
次々に始まる試練、迫りくる恐怖、そして消えていく敗者たち。
しかし、ゲームが進むにつれて、どこか違和感を覚え始める主人公・ハル。
このデスゲーム、本当に"命がけ"なのか……?
絶望と笑いが交錯する、予測不能のサバイバルゲームが今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる