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その4
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遠くに見える信号が、青に変わった。
でも、全く進む気配がない。
何か事故でもあったのかもしれない。
「僕、時々怖いんだ。
もし、僕がこの顔じゃなくなったら……
老いて、顔に魅力が無くなったら僕の事を、誰も相手にしてくれないのではって」
わたしは少し驚いた。
何も悩みがないように見えて、そんな事で悩んでいたんだ。
他人にとっては、贅沢な悩みだと思うかもしれないが、顔の事ばかり言われ続けると、そんな風に感じてしまうのかもしれない。
「そうね、確かにリョウはカッコイイから付き合ったって部分はあるよ」
「やっぱりそうなんだ」
ってリョウは悲しそうに言った。
そんなリョウの頭をなでながら、言葉を続ける。
「でも、それだけじゃなかったけどね。
リョウって優しいじゃない。
それらを含めて、付き合ってもいいかなって思ったの」
リョウは何も言わず、話を聞いている。
「でも、カッコイイだけしかないって思うんだったら、それ以外の物を身につけなさいよ。
内面的なものを磨くっていうのも必要だし、何か特技を作るとか、知識であってもいいし。
ただ、好かれたいって思っているだけじゃ誰も好きになってくれたり、敬意を払ってくれないわよ。
ほら、動き出したから」
わたしは左膝をちょこっと上げて、起き上がるように促した。
フットサイドブレーキを踏んで解除し、ギアをドライブモードにして車を前に進めた。
しばらくすると、路肩にハザードランプを点滅させた車が二台並んで止まっていた。
前の車の左後部にぶつけられた痕があり、数人の男の人が外に出てなにやら話をしている。
そこを超えると、渋滞していたのが嘘のように、車の流れがスムーズになった。
わたしはリョウを一瞥した。
なにやら色々考えているようだった。
そして、「僕ももっと他の面で好きになってもらえるようにするよ!」と鼻息荒く言った。
わたしがまず手始めに、車の免許を頑張って取りなさいって言ったら、また、「クミが指導員やってよ」って言い始め、わたしは苦笑いした。
その時、ふと今まで疑問に思っていた事を思い出す。
「そういえば、リョウは何でわたしの事が好きになったの?」
「え? だって、クミって頼りになりそうだから」
と無邪気に返され、さらに苦笑いをした。
やっぱり、リョウはお姉さんが欲しかったんだ。
などと考えていると「あと、顔も可愛いし」と不意打ちされ、赤面してしまった。
ひょっとして、これは恋愛のテクニックなのかなと思いつつ、リョウを見ると無邪気に笑っていた。
そんな、笑顔にわたしも思わず微笑んだ。
そして、なんやかんや言って、わたしもしっかりリョウの事が好きなんだと、自覚した。
でも、リョウがちゃんとした大人になったら、わたしは捨てられるのかな?
って少し寂しい気持ちになった。
でも、すぐに思い直した。
わたしも、もっと、リョウに好かれるように女性を磨かないと、と思った。
「あ、一つだけ特技があった!」
リョウが不意に声を上げた。
「え? なに?」と訊ねると、
「僕、キス凄い上手いじゃん!」
って、うれしそうに言い出した。
わたしは、始めキョトンとして、そして、思わず大笑いしてしまった。
「えぇ~!
上手いじゃん!」
と不満げな声を上げたリョウを一瞥して、今度はハンドルを右手で叩きながら大笑いしてしまった。
「ちょ、上手いよ!
こうでしょ」
と、運転中にもかかわらず、リョウはわたしの顔を押さえて、キスしようとした。
「あぶ、危ないって!」
わたしは焦りながらリョウを離そうとしたが、リョウは強引にキスしようとする。
車がぶれる。
「やめ、やめなさい!」
わたしは思いっきりリョウをひっぱたいた。
でも、全く進む気配がない。
何か事故でもあったのかもしれない。
「僕、時々怖いんだ。
もし、僕がこの顔じゃなくなったら……
老いて、顔に魅力が無くなったら僕の事を、誰も相手にしてくれないのではって」
わたしは少し驚いた。
何も悩みがないように見えて、そんな事で悩んでいたんだ。
他人にとっては、贅沢な悩みだと思うかもしれないが、顔の事ばかり言われ続けると、そんな風に感じてしまうのかもしれない。
「そうね、確かにリョウはカッコイイから付き合ったって部分はあるよ」
「やっぱりそうなんだ」
ってリョウは悲しそうに言った。
そんなリョウの頭をなでながら、言葉を続ける。
「でも、それだけじゃなかったけどね。
リョウって優しいじゃない。
それらを含めて、付き合ってもいいかなって思ったの」
リョウは何も言わず、話を聞いている。
「でも、カッコイイだけしかないって思うんだったら、それ以外の物を身につけなさいよ。
内面的なものを磨くっていうのも必要だし、何か特技を作るとか、知識であってもいいし。
ただ、好かれたいって思っているだけじゃ誰も好きになってくれたり、敬意を払ってくれないわよ。
ほら、動き出したから」
わたしは左膝をちょこっと上げて、起き上がるように促した。
フットサイドブレーキを踏んで解除し、ギアをドライブモードにして車を前に進めた。
しばらくすると、路肩にハザードランプを点滅させた車が二台並んで止まっていた。
前の車の左後部にぶつけられた痕があり、数人の男の人が外に出てなにやら話をしている。
そこを超えると、渋滞していたのが嘘のように、車の流れがスムーズになった。
わたしはリョウを一瞥した。
なにやら色々考えているようだった。
そして、「僕ももっと他の面で好きになってもらえるようにするよ!」と鼻息荒く言った。
わたしがまず手始めに、車の免許を頑張って取りなさいって言ったら、また、「クミが指導員やってよ」って言い始め、わたしは苦笑いした。
その時、ふと今まで疑問に思っていた事を思い出す。
「そういえば、リョウは何でわたしの事が好きになったの?」
「え? だって、クミって頼りになりそうだから」
と無邪気に返され、さらに苦笑いをした。
やっぱり、リョウはお姉さんが欲しかったんだ。
などと考えていると「あと、顔も可愛いし」と不意打ちされ、赤面してしまった。
ひょっとして、これは恋愛のテクニックなのかなと思いつつ、リョウを見ると無邪気に笑っていた。
そんな、笑顔にわたしも思わず微笑んだ。
そして、なんやかんや言って、わたしもしっかりリョウの事が好きなんだと、自覚した。
でも、リョウがちゃんとした大人になったら、わたしは捨てられるのかな?
って少し寂しい気持ちになった。
でも、すぐに思い直した。
わたしも、もっと、リョウに好かれるように女性を磨かないと、と思った。
「あ、一つだけ特技があった!」
リョウが不意に声を上げた。
「え? なに?」と訊ねると、
「僕、キス凄い上手いじゃん!」
って、うれしそうに言い出した。
わたしは、始めキョトンとして、そして、思わず大笑いしてしまった。
「えぇ~!
上手いじゃん!」
と不満げな声を上げたリョウを一瞥して、今度はハンドルを右手で叩きながら大笑いしてしまった。
「ちょ、上手いよ!
こうでしょ」
と、運転中にもかかわらず、リョウはわたしの顔を押さえて、キスしようとした。
「あぶ、危ないって!」
わたしは焦りながらリョウを離そうとしたが、リョウは強引にキスしようとする。
車がぶれる。
「やめ、やめなさい!」
わたしは思いっきりリョウをひっぱたいた。
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