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第一章
夜の始まり
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「……ぅっ、あっ、んぁーー!」
昼間、押し倒され危うく貞操を散らしかけたディブロだったが、どうやってか居場所を探り当てたニーシャにより間一髪のところで救出される。
拘束と体の疼きで自由が利かず、頭の上から響いた熊の慟哭とも言うべき叫びを耳にしながら窮地を脱したことをひとまず喜んだ。
その後少しだけ血に塗れた猫人が縄を解き、纏っていたマントで覆い隠すように包みこんでもらい、背負われて城へと帰還する。
ディブロは人として見れば決して小さくなく、ゆうに180cmを超えて筋肉もそれなりに鍛えられているが、そんな彼より30cmは小さい背丈のニーシャは重みなど関係ないとばかり軽々と運んでくれた。
途中に城勤めの人間に目撃されるのではないかと思われたが、配慮してもらえたのか誰に遭遇することなく無事最初にいた部屋へと辿り着く。
そこに至ってからも熱は収まることはなく、動悸が増して思考が全く働かないのを見抜いているらしく、従者は男をゆっくりとベッドに横たわらせた。
その後報告のために退出してからどれくらいの時間が経ったのか、気がつけばディブロは意識を手放しており、横目で窓を見れば辺りは暗がりに包まれている。
いつの間にか夜を迎えたことだけは知ることができた、だがそれでもなお身体は何かを求めるように熱く火照り続けていた。
「ーーこれ、は、一体、何なん、だ……?」
今まで感じたことのない、風邪などの体調不良とは別物の異常にディブロは悶えようとしても身体はすでに自由が利かなくなっている。
自分のものであるはずなのに、まるで制御権を誰かに奪われたような、ある意味虜囚だった時を思い出させるのに十分だった。
柔らかいベッドの上が幸いなのかどうかは分からない、けれど独りで苦しむ時間が過ぎるのは堪える。
良い歳をした男が情けないとは思うが、弱っている時ほど人は何かに縋り付きたくなるものだ。
だからだろう、部屋の扉をノックして誰かが入ってくる気配にも気づかずに荒く呼吸をしていたディブロは、己の名を呼ぶ声でようやく反応を見せる。
「……ディブロ殿」
「ーーろ、ロドス、か……?」
「ええっ、しかしここまで症状が出てくるとは。 時間はないということか……。 すみません、本当は段取りを踏みたかったのですが、こうなっては仕方がありません。 後でいくらでも罵ってくださって結構ですから」
おぼつかない視線に映ったのは、持っていたランタンの灯火に照らされ輝く銀毛の狼が顔を覗きこんでいる。
この城で唯一の知り合いである彼が来てくれたことに、ディブロの心細さに少しだけ光が指した。
気遣う台詞と謝罪とも取れる言葉の真意に思考が働かないまま、そっと眼前一杯に獣の顔が近づいたと思えば唇に優しく何かが当たる。
キスをされた、朝に同じことをされた際は戸惑いと不快しかなかったが、今は何故か心が満たされていく。
触れた瞬間、事前に何かの液体を含んでいたのか流し込まされ、ディブロは抵抗することなく嚥下する。
長い狼の舌が咥内にそっと押し入り、男の舌を絡め取り交ざり合う。
騎士として勤め、禁欲生活も長く囚われていたこともあってか異性とした時と同じ、あるいはそれ以上の心地よさにディブロの声がか細く漏れていた。
震える手を伸ばして顔を掴むと、少し驚いたようでロドスは震えるも、受け入れてくれることに喜びを覚えてさらに深く口づけをする。
繋がりそっとベッドへ登り火照る身体の騎士に狼が覆い被さり、少し物足りなさそうにしながらもキスを解いた。
「……んっは、ぁっーー、んっ!?」
「良い声です。 感じてくれてるんですね?」
「まっ、待てっ何か変ーー、ぅあっ、あっあぁっ……!?」
二人分の唾液が口から伝うディブロを見て微笑むと、そっと首筋に顔を埋めるよう口を開けて狼のマズルが開かれ甘く噛む。
敏感になっているのか、牙を立てられても痛みではない何かが全身を奔り、声をあげずにはいられなかった。
刹那、ロドスからそっと甘く芳しい匂いが漂っていることに気付き、もっと嗅いでいたいとしがみつくように彼の毛皮に顔を埋める。
熊の時とは別物の、それ以上に蠱惑的な誘惑に抗うこともせず受け止めると、身体の内に疼いていた熱が一気に押し上げられるのを感じた。
「ーーこの匂い、何だ……?」
「大丈夫ですよ、ですから今は私に全てを委ね任せてください。 痛くしませんから、ねっーー?」
広く鍛えられた狼の背に腕を回し、毛むくじゃらに包まれ耳元で囁く言葉が全身へ浸透していく。
誘導されたようにディブロは力を入れるのを止め、受け入れることを態度で示すとロドスは柔らかく笑いそっと服を脱がしていった。
昼間、押し倒され危うく貞操を散らしかけたディブロだったが、どうやってか居場所を探り当てたニーシャにより間一髪のところで救出される。
拘束と体の疼きで自由が利かず、頭の上から響いた熊の慟哭とも言うべき叫びを耳にしながら窮地を脱したことをひとまず喜んだ。
その後少しだけ血に塗れた猫人が縄を解き、纏っていたマントで覆い隠すように包みこんでもらい、背負われて城へと帰還する。
ディブロは人として見れば決して小さくなく、ゆうに180cmを超えて筋肉もそれなりに鍛えられているが、そんな彼より30cmは小さい背丈のニーシャは重みなど関係ないとばかり軽々と運んでくれた。
途中に城勤めの人間に目撃されるのではないかと思われたが、配慮してもらえたのか誰に遭遇することなく無事最初にいた部屋へと辿り着く。
そこに至ってからも熱は収まることはなく、動悸が増して思考が全く働かないのを見抜いているらしく、従者は男をゆっくりとベッドに横たわらせた。
その後報告のために退出してからどれくらいの時間が経ったのか、気がつけばディブロは意識を手放しており、横目で窓を見れば辺りは暗がりに包まれている。
いつの間にか夜を迎えたことだけは知ることができた、だがそれでもなお身体は何かを求めるように熱く火照り続けていた。
「ーーこれ、は、一体、何なん、だ……?」
今まで感じたことのない、風邪などの体調不良とは別物の異常にディブロは悶えようとしても身体はすでに自由が利かなくなっている。
自分のものであるはずなのに、まるで制御権を誰かに奪われたような、ある意味虜囚だった時を思い出させるのに十分だった。
柔らかいベッドの上が幸いなのかどうかは分からない、けれど独りで苦しむ時間が過ぎるのは堪える。
良い歳をした男が情けないとは思うが、弱っている時ほど人は何かに縋り付きたくなるものだ。
だからだろう、部屋の扉をノックして誰かが入ってくる気配にも気づかずに荒く呼吸をしていたディブロは、己の名を呼ぶ声でようやく反応を見せる。
「……ディブロ殿」
「ーーろ、ロドス、か……?」
「ええっ、しかしここまで症状が出てくるとは。 時間はないということか……。 すみません、本当は段取りを踏みたかったのですが、こうなっては仕方がありません。 後でいくらでも罵ってくださって結構ですから」
おぼつかない視線に映ったのは、持っていたランタンの灯火に照らされ輝く銀毛の狼が顔を覗きこんでいる。
この城で唯一の知り合いである彼が来てくれたことに、ディブロの心細さに少しだけ光が指した。
気遣う台詞と謝罪とも取れる言葉の真意に思考が働かないまま、そっと眼前一杯に獣の顔が近づいたと思えば唇に優しく何かが当たる。
キスをされた、朝に同じことをされた際は戸惑いと不快しかなかったが、今は何故か心が満たされていく。
触れた瞬間、事前に何かの液体を含んでいたのか流し込まされ、ディブロは抵抗することなく嚥下する。
長い狼の舌が咥内にそっと押し入り、男の舌を絡め取り交ざり合う。
騎士として勤め、禁欲生活も長く囚われていたこともあってか異性とした時と同じ、あるいはそれ以上の心地よさにディブロの声がか細く漏れていた。
震える手を伸ばして顔を掴むと、少し驚いたようでロドスは震えるも、受け入れてくれることに喜びを覚えてさらに深く口づけをする。
繋がりそっとベッドへ登り火照る身体の騎士に狼が覆い被さり、少し物足りなさそうにしながらもキスを解いた。
「……んっは、ぁっーー、んっ!?」
「良い声です。 感じてくれてるんですね?」
「まっ、待てっ何か変ーー、ぅあっ、あっあぁっ……!?」
二人分の唾液が口から伝うディブロを見て微笑むと、そっと首筋に顔を埋めるよう口を開けて狼のマズルが開かれ甘く噛む。
敏感になっているのか、牙を立てられても痛みではない何かが全身を奔り、声をあげずにはいられなかった。
刹那、ロドスからそっと甘く芳しい匂いが漂っていることに気付き、もっと嗅いでいたいとしがみつくように彼の毛皮に顔を埋める。
熊の時とは別物の、それ以上に蠱惑的な誘惑に抗うこともせず受け止めると、身体の内に疼いていた熱が一気に押し上げられるのを感じた。
「ーーこの匂い、何だ……?」
「大丈夫ですよ、ですから今は私に全てを委ね任せてください。 痛くしませんから、ねっーー?」
広く鍛えられた狼の背に腕を回し、毛むくじゃらに包まれ耳元で囁く言葉が全身へ浸透していく。
誘導されたようにディブロは力を入れるのを止め、受け入れることを態度で示すとロドスは柔らかく笑いそっと服を脱がしていった。
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