21 / 41
第2話
爺様はスパルタすぎる
しおりを挟む
「話が逸れたが、魔素を用いると言っても誰も彼もが魔法を使えるわけではない。 また扱えたとしても魔力量が足らねば具現化させることもできぬ」
「魔力量は、先天的に決まっているものなんですか?」
「量自体は増やせる、先天的に決まっているのはその魔力を貯めておける肉体、つまりは器の大きさじゃの。 こればかりはどうやっても間口を広げることはできん」
「その器の大きさって分かるんですか?」
「第三者視点では普通測り知れぬが、それを知るための技術はある。 ちなみにワシも使える」
「へぇ、じゃあ俺の器はーー、あだっ!?」
「たわけ。 見習いどころか半人前ですらない小童がそのようなことを気にするでない。 お前がやるべきはまず知識を身につけることが先決じゃ。 ワシが良しと判断するまでは魔法を行使することは赦さぬぞ」
「……スパルタだな、この人」
「何か言ったか?」
「いいえっ、何も」
魔法はこの世界では日常的なもので、扱えるのはごく普通かと思っていたが、そうでもないらしい。
魔力とは言ってしまえば生命力そのものであり、生きるための血液でもあるので、そこから更に魔法を使うために汲み上げる必要があるというのだ。
魔力量は後天的に増やすことはできるが、先天的にその魔力を受け止めるための身体うつわは決まっているようで、大きくすることはできないという。
これについても昔は自分の体を拡げようとした狂気的な考えをした人がいたようだが、失敗に終わったそうだ。
そうなると俺の器はどのくらいなのかは知りたくなるのは必然だが、これを尋ねると師匠からお叱りとばかり杖で頭を叩かれる。
半人前ですらないとはその通りなのだが、ここまで厳しくしなくてもいいのではないかと不満がないわけではなかった。
とはいえ師匠の講義は必要ではあるが、面白いものなので少しくらいは我慢できるからこそ、身が入るというもの。
話が脱線することはよくあっても、止まることはないので仕切り直しと今日やるべきところまで進めようとするが、そうはいかなかった。
「やれやれ、お前に教えていると飽きぬわ。 さて、続きじゃがーー」
「し、失礼します!? 爺様、すぐに来てください!」
「なんじゃ、いきなり。 ファングボアの解体は終わったのか?」
「それが、ゼンブルさんが『これでは足りないからもう一度狩りに行こう!』と言って、ヒューイくんを連れて森へ向かおうとしてるんです! 食い止めているんですが、何故か興奮してて止まらないんですあの人!?」
「……ダイチ、心当たりはあるか?」
「はっ? ないで……、えっ? まさか……」
「ついてこい、そしてゼンブルを止めろ。 止めねば明日までの課題をいつもの5倍に増やす」
「それ俺しか損してませんよね!?」
続きをしようとしたところへ、師匠の家の扉を慌てて開けたゴールデンレトリバー種の壮年男性が助けを求めてきた。
問題の原因は昼時に一悶着あったゼンブルさんが関係しているらしく、そのことで心当たりがありすぎる俺は師匠の瞳がこちらに向けてくるのがとても痛かった。
何で今日に限ってこんな色々な揉め事に見舞われるのかな、厄日なのか!?
ニッコリと、俺の顔を見て師匠こと爺様は青筋を立てながら無茶振りしてきた。
どうしてこんなことに、などと考えるよりもまずなんとかしなければと、俺は爺様と男性と共に義理の親と番いの元へ走る。
「魔力量は、先天的に決まっているものなんですか?」
「量自体は増やせる、先天的に決まっているのはその魔力を貯めておける肉体、つまりは器の大きさじゃの。 こればかりはどうやっても間口を広げることはできん」
「その器の大きさって分かるんですか?」
「第三者視点では普通測り知れぬが、それを知るための技術はある。 ちなみにワシも使える」
「へぇ、じゃあ俺の器はーー、あだっ!?」
「たわけ。 見習いどころか半人前ですらない小童がそのようなことを気にするでない。 お前がやるべきはまず知識を身につけることが先決じゃ。 ワシが良しと判断するまでは魔法を行使することは赦さぬぞ」
「……スパルタだな、この人」
「何か言ったか?」
「いいえっ、何も」
魔法はこの世界では日常的なもので、扱えるのはごく普通かと思っていたが、そうでもないらしい。
魔力とは言ってしまえば生命力そのものであり、生きるための血液でもあるので、そこから更に魔法を使うために汲み上げる必要があるというのだ。
魔力量は後天的に増やすことはできるが、先天的にその魔力を受け止めるための身体うつわは決まっているようで、大きくすることはできないという。
これについても昔は自分の体を拡げようとした狂気的な考えをした人がいたようだが、失敗に終わったそうだ。
そうなると俺の器はどのくらいなのかは知りたくなるのは必然だが、これを尋ねると師匠からお叱りとばかり杖で頭を叩かれる。
半人前ですらないとはその通りなのだが、ここまで厳しくしなくてもいいのではないかと不満がないわけではなかった。
とはいえ師匠の講義は必要ではあるが、面白いものなので少しくらいは我慢できるからこそ、身が入るというもの。
話が脱線することはよくあっても、止まることはないので仕切り直しと今日やるべきところまで進めようとするが、そうはいかなかった。
「やれやれ、お前に教えていると飽きぬわ。 さて、続きじゃがーー」
「し、失礼します!? 爺様、すぐに来てください!」
「なんじゃ、いきなり。 ファングボアの解体は終わったのか?」
「それが、ゼンブルさんが『これでは足りないからもう一度狩りに行こう!』と言って、ヒューイくんを連れて森へ向かおうとしてるんです! 食い止めているんですが、何故か興奮してて止まらないんですあの人!?」
「……ダイチ、心当たりはあるか?」
「はっ? ないで……、えっ? まさか……」
「ついてこい、そしてゼンブルを止めろ。 止めねば明日までの課題をいつもの5倍に増やす」
「それ俺しか損してませんよね!?」
続きをしようとしたところへ、師匠の家の扉を慌てて開けたゴールデンレトリバー種の壮年男性が助けを求めてきた。
問題の原因は昼時に一悶着あったゼンブルさんが関係しているらしく、そのことで心当たりがありすぎる俺は師匠の瞳がこちらに向けてくるのがとても痛かった。
何で今日に限ってこんな色々な揉め事に見舞われるのかな、厄日なのか!?
ニッコリと、俺の顔を見て師匠こと爺様は青筋を立てながら無茶振りしてきた。
どうしてこんなことに、などと考えるよりもまずなんとかしなければと、俺は爺様と男性と共に義理の親と番いの元へ走る。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる