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第2話
義父たちの実の息子に知られたくない秘密
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ただこうもヒュペルお義父さんの様子を見てると、ゼンブルさんはそんなに問題があるのかと気になりもする。
番い同士なのだし、きっと出会いはそれなりに運命的なものだろうと思っていたので、聞いてみたくなった。
「でも、ゼンブルさんって番いがいるヒュペルさんだって幸せそうじゃないですか! 今はあれかもですけど、出会った時はきっと素敵なーーっっ!?!?」
話題の出しどころを間違えることはよくある話だが、どうやらこの時ヒュペルお義父さんの地雷を見事なまでに俺は踏み抜いてしまったらしい。
喜んでいたはずの柴犬パパの顔は突然固まり、氷を連想させるほどの冷たさを醸し出した。
そこに触れてくるなという圧を感じなくもないが、何がそこまで気に触ったのだろうか。
「……運命、ね。 確かに運命的だな、あの出会い方は」
「あっあの……」
「……今から話すことをヒューイには絶対話さないでくれ、というより話すな、話したらダイチでもただではおかん」
「いやっそこまでして知りたくないですよ!?」
「だから! これを踏まえた上で、お前にもゼンブルの抑止力になってもらいたい……!」
「家族になったからって、そこまでのことを求められると!? いやっマジで何があったんすか!?」
肩を掴まれ、鬼気迫る勢いでヒュペルさんがゼンブルさんとの馴れ初めを話そうとするが、俺が考えていたような甘いロマンスは皆無なのは間違いなかった。
おまけに一人息子には秘密と言われただけで嫌な予感しかなく、聞きたくないのにお義父さんは俺の意思など構わず言う。
「あのな……、以前住んでいた場所でゼンブルと出会ったんだ」
「はっはいっ……」
「でっ、初めて会った直後に押し倒されて、往来のその場で一昼夜と犯された」
「……………………えっ?」
何を言ってるのか本当に理解ができなかった。
俺の耳がおかしくなったり、聴覚を司る器官に異常をきたしていなければ、お義父さんはとんでもないことを言っている。
出会った直後に押し倒され、しかもそこで犯されたって、マジなの……?
疑心暗鬼な俺の瞳に気づいて、ヒュペルお義父さんがゆっくりと首を縦に動かした顔は、冗談など言っている雰囲気では到底なかった。
「…………あの、その、なんと申せば」
「いいんだ、マジでいいんだ……。 ちなみにこの村の大人たちは全員知ってる、爺様もな」
「ぶはっ!?!? えっ、それはっあのっ…………、冗談ではなく?」
「こんな冗談を俺が言うと……?」
『言うわけないですよね、はい……。 』、俺は心の中でそう思った。
ゼンブルさん、出会った時からずっと思っていたけど、あの人は本能で生きている獣と同じなのかな?
あの人のそばで育てられたヒューイがあそこまで純粋な子になれたのは、ヒュペルお義父さんの尽力あってのことなのだろう。
だがヒュペルお義父さんもそれなりに腕力は強いはず、何せ身の丈以上もある巨大なハンマーを振り回しているのだから、一見すると勝てそうな気もするのだが、無理だったのだろうか。
「でも、お義父さんも相当に力が強いですよね? あの、ゼンブルさんを押し除けたりは……」
「あぁ見えてな、あいつ地面に割れ目を作れるほどの力があるんだよ……。 そして番いである俺を見つけた時、逃すものかと壊さないようにと細心の注意を払いつつもすごい力で組み敷いてきやがってな……」
「…………ご愁傷さまです」
「ダイチの世界の言葉か? 意味はわからんが、伝えたいことはなんとなく伝わる……、あいつはこういうぶっ飛んだことをしでかすやつだから、本当に気を付けてくれ……」
どんよりと思い出したくない思い出を語るヒュペルお義父さんが、なんだか不便で仕方がなく思える。
そういう相手だったと諦めるしかないのだが、それでも番いなのだから惚れているのではないか、という疑問もあったりする。
「あの、それを抜きにしても、ゼンブルさんのことは番いとして好き、なんですよね……?」
「……それが厄介な話なんだよな。 俺も最初はなんて奴が番いだと思ったが、本能があいつを求めちまったよ、気付いたらベタ惚れだった。 だからそういう意味じゃ、俺も大概狂ってたのかもしれねぇな」
やはり予想通り、番いというだけでその人の何もかもを条件なしで恋い慕うようになってしまうようだ。
これは以前、爺様に番いについて説明してもらったのだが、番いというだけで他に相手が居ようとも全て放り捨て、運命の相手だけを求めてしまうという情報と一致している。
呪いと言っても差し支えない業にも思えるが、当人同士が幸せであればいいと考えられたらいいが、残された相手は言葉にできない感情に苛まれるのは確実だ。
「……まっ、ちょうどその時結婚話が上がって、嫁ぎたくもない奴のところへ連れて行かれそうだったから、都合は良かったんだがな」
「何か言いましたか?」
「いやっ、なんでも。 ただの独り言だ」
ヒュペルお義父さんがポツリと何か呟いているように聞こえたが、ただの独白なのだろうと気にしないことにする。
それがまさか、とんでもない形で俺の身に降りかかって来ようとは想像していなかったが。
番い同士なのだし、きっと出会いはそれなりに運命的なものだろうと思っていたので、聞いてみたくなった。
「でも、ゼンブルさんって番いがいるヒュペルさんだって幸せそうじゃないですか! 今はあれかもですけど、出会った時はきっと素敵なーーっっ!?!?」
話題の出しどころを間違えることはよくある話だが、どうやらこの時ヒュペルお義父さんの地雷を見事なまでに俺は踏み抜いてしまったらしい。
喜んでいたはずの柴犬パパの顔は突然固まり、氷を連想させるほどの冷たさを醸し出した。
そこに触れてくるなという圧を感じなくもないが、何がそこまで気に触ったのだろうか。
「……運命、ね。 確かに運命的だな、あの出会い方は」
「あっあの……」
「……今から話すことをヒューイには絶対話さないでくれ、というより話すな、話したらダイチでもただではおかん」
「いやっそこまでして知りたくないですよ!?」
「だから! これを踏まえた上で、お前にもゼンブルの抑止力になってもらいたい……!」
「家族になったからって、そこまでのことを求められると!? いやっマジで何があったんすか!?」
肩を掴まれ、鬼気迫る勢いでヒュペルさんがゼンブルさんとの馴れ初めを話そうとするが、俺が考えていたような甘いロマンスは皆無なのは間違いなかった。
おまけに一人息子には秘密と言われただけで嫌な予感しかなく、聞きたくないのにお義父さんは俺の意思など構わず言う。
「あのな……、以前住んでいた場所でゼンブルと出会ったんだ」
「はっはいっ……」
「でっ、初めて会った直後に押し倒されて、往来のその場で一昼夜と犯された」
「……………………えっ?」
何を言ってるのか本当に理解ができなかった。
俺の耳がおかしくなったり、聴覚を司る器官に異常をきたしていなければ、お義父さんはとんでもないことを言っている。
出会った直後に押し倒され、しかもそこで犯されたって、マジなの……?
疑心暗鬼な俺の瞳に気づいて、ヒュペルお義父さんがゆっくりと首を縦に動かした顔は、冗談など言っている雰囲気では到底なかった。
「…………あの、その、なんと申せば」
「いいんだ、マジでいいんだ……。 ちなみにこの村の大人たちは全員知ってる、爺様もな」
「ぶはっ!?!? えっ、それはっあのっ…………、冗談ではなく?」
「こんな冗談を俺が言うと……?」
『言うわけないですよね、はい……。 』、俺は心の中でそう思った。
ゼンブルさん、出会った時からずっと思っていたけど、あの人は本能で生きている獣と同じなのかな?
あの人のそばで育てられたヒューイがあそこまで純粋な子になれたのは、ヒュペルお義父さんの尽力あってのことなのだろう。
だがヒュペルお義父さんもそれなりに腕力は強いはず、何せ身の丈以上もある巨大なハンマーを振り回しているのだから、一見すると勝てそうな気もするのだが、無理だったのだろうか。
「でも、お義父さんも相当に力が強いですよね? あの、ゼンブルさんを押し除けたりは……」
「あぁ見えてな、あいつ地面に割れ目を作れるほどの力があるんだよ……。 そして番いである俺を見つけた時、逃すものかと壊さないようにと細心の注意を払いつつもすごい力で組み敷いてきやがってな……」
「…………ご愁傷さまです」
「ダイチの世界の言葉か? 意味はわからんが、伝えたいことはなんとなく伝わる……、あいつはこういうぶっ飛んだことをしでかすやつだから、本当に気を付けてくれ……」
どんよりと思い出したくない思い出を語るヒュペルお義父さんが、なんだか不便で仕方がなく思える。
そういう相手だったと諦めるしかないのだが、それでも番いなのだから惚れているのではないか、という疑問もあったりする。
「あの、それを抜きにしても、ゼンブルさんのことは番いとして好き、なんですよね……?」
「……それが厄介な話なんだよな。 俺も最初はなんて奴が番いだと思ったが、本能があいつを求めちまったよ、気付いたらベタ惚れだった。 だからそういう意味じゃ、俺も大概狂ってたのかもしれねぇな」
やはり予想通り、番いというだけでその人の何もかもを条件なしで恋い慕うようになってしまうようだ。
これは以前、爺様に番いについて説明してもらったのだが、番いというだけで他に相手が居ようとも全て放り捨て、運命の相手だけを求めてしまうという情報と一致している。
呪いと言っても差し支えない業にも思えるが、当人同士が幸せであればいいと考えられたらいいが、残された相手は言葉にできない感情に苛まれるのは確実だ。
「……まっ、ちょうどその時結婚話が上がって、嫁ぎたくもない奴のところへ連れて行かれそうだったから、都合は良かったんだがな」
「何か言いましたか?」
「いやっ、なんでも。 ただの独り言だ」
ヒュペルお義父さんがポツリと何か呟いているように聞こえたが、ただの独白なのだろうと気にしないことにする。
それがまさか、とんでもない形で俺の身に降りかかって来ようとは想像していなかったが。
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