11 / 41
第1話
決意、詳細
しおりを挟む
「ふむ、そうでしたか。 遅れた理由がそれとは、これでは責められませぬな」
それからだいぶ時間が経った後、俺はすっかり忘れていた爺様の元へと足を運んでいたが、ここまで時間が掛かった理由を問われ、正直に話すことにした。
見た目こそ穏やかそうに見えるが、明らかに怒っているお猫様に萎縮してしまうのだが、これに関しては全面的に俺とヒューイに責任がある。
あの後、もう一度身体を洗おうとしたのだが、興奮冷めやまず、もう一度とばかりセックスを再開してしまった。
いつの間にか明るかった空はすっかり朱色へと変化していて、あまりに遅かったせいでヒュペルさんとゼンブルさんが迎えにくる。
ちょうど俺たちが愛を伝え合いながら何度目かの絶頂を迎えている最中の登場に、4人共々気まずいなんてレベルではなく、モンペなドーベルマンは発狂した。
そしてやっぱり、また槍斧をもって俺を真っ二つにしようと迫り、命がけの鬼ごっこまでしたせいで、爺様の家に来た頃には夜になっていた。
「やれやれ、初夜を迎えるのはいつかと心配していたが、あっさり契りを交わしてしまうとは。 なかなかやるではないか、お主」
「うっ……。 爺様、口調が変わっていませんか?」
「それはそうじゃ。 これでお主はめでたくヒューイの番いとなり、この村の一員として心置きなく迎えられるわけじゃからの」
必死に逃げ回り、あと少しでバラバラ死体になるところをヒュペルさんに救われ、ここでもできれば見たくないレベルのお仕置きをされた上で、ゼンブルさんを引きずるように連れて帰っていった。
同時にヒューイも連れていったので、何か用事があると思い見送ろうとすると、彼は家で待っていると頬にキスしてくれたので、早く帰りたくて仕方なかったりする。
だがそれも、浮かれ気分で三毛猫の家に足を踏み入れた直後、笑っているのに笑っていない爺様に俺は小さく震えた。
時間こそ決めていなかったが、先触れなく遅刻したのだから仕方がない。
なので潔く事実を伝えると、呆れと安堵が入り混じったような顔で、随分と砕けた言葉遣いをしてくれた。
それはすなわち、俺への対応が客人ではなく、身内とみなしていることへの証なのかもしれない。
「呼んだのはそう難しいことではない。 まぁいつヒューイと結ばれるつもりかを聞くつもりだったのじゃが、無事解決したようじゃし、良しとしよう。 とりあえず話しておかなくてはならないのは、番いというものについてじゃ」
「番いについて、ですか?」
「うむ。 そもそもおかしいと思わなかったかの? 会ったばかりのヒューイが、どうしてお主に心を許し、求めたのかを」
待たされたことへの怒りは、俺とヒューイが無事結ばれたと知るだけで融解したらしく、本題へと移ってくれる。
お説教を受けなくて良かったと安堵していると、真剣な顔で語る爺様の言葉に思い当たることがあった。
だがそれはヒューイだけでなく、自分自身にも当てはまる部分がある。
「ダイチ殿は番いと聞いて、どのように考えておられるか?」
「えっと……、将来結ばれるべき運命の相手、みたいな、そんなロマンチックな感じですかね?」
「ろまんちっく……、お主の世界にはそのような言葉があるのか。 意味合いからして、夢のある華やかなもの、ということでよろしいか?」
「えっと、そうですね、多分……」
「まぁそれはさておくとして、大まかに言えばそれで相違ありませぬ。 ですが、そのような相手と巡り合えるなど、簡単なことではない」
番いという概念について、俺も自分の世界でたまに聞くくらいで、詳しい意味合いを知っているわけではない。
爺様の話を聞くだけでも、確かに言葉だけ取れば理想的な出会いがあるかもしれないと思えるが、その奇跡に遭遇する可能性がどれくらい低いか、考えなくても分かった。
運命の相手と出会えるなんて口にできても、簡単に見つかるものではない、それなのに番いになってくれと言われたことを思うと、まさかという仮説に辿り着く。
「ちょ、待ってください。 まさかヒューイは、俺とあの森で初めて会ったときから、そうだと確信していたと……?」
「その通りです。 ダイチ殿、昨日はあえてはぐらかしましたが、あの森はかなり特殊な樹海での、迷い込んだ者は二度と出ることは敵わんのじゃ」
「えっ……?」
「『失意の森』と呼ばれておってな。 森の中にあるこの村の者たちはワシが施した加護により、森に漂う邪気に惑わされることはないが、それ以外の人間が迷い込めば、生きて出ることはできぬ。 まして魔物もおる故、この村の者であっても戦闘能力がない者は単身で入ることを禁止しておるくらいじゃ」
「そ、そんなこと、昨日は言って……」
「いたずらに情報を与えて恐怖を教えることになると思っての。 しかもお主がいたところは、かなり危険な場所での、あの子も言うておったが、少し遅ければ命の保証はなかったのは、紛れもない事実ですじゃ」
最初からヒューイは俺が自分の番いだと分かっていたのも驚きだが、爺様の話す内容に頭がついていかなかった。
訳もわからずやってきた異世界で、最初にいた場所がとんでもない魔窟だったと聞かされ、今になって絶望が押し寄せてくる。
もしヒューイに会えていなければ確実に死んでいたという事実に、俺の心に恐怖が湧いてきた。
「じゃあヒューイって、本当に強いんですね、俺もあっさり押し倒されましたし」
「そのことについても捕捉しておきたいのじゃが、あの森では共に行動していない限り、他の者を見つけることはできませぬ」
「は、はい?? でも俺はヒューイに会った……」
「お忘れですかな? お主を見つける前、ヒューイが何をしていたのかを、あの子は話していたはずじゃが」
震える体を押さえて、ヒューイの凄さに実感と共に見つけてくれてありがとうと感謝の念を持とうとしたが、また爺様は信じられないことを口にする。
一緒にいない限り誰かと会える可能性は0に等しいと、ありえないと断言したのだ。
ならたまたまその可能性に救われたのかと思ったが、ヒューイが俺に会う前に何をしていたのかと言われ、昨日のことを思い出す。
遭遇したときに感じた強い血の臭い、連れてこられたこの家で彼が語ったのは、魔物を狩った後だと言っていた。
犬といえば嗅覚に優れた動物だが、この世界でも人の姿をしているものの、能力は変わらないのかもしれない。
「……魔物と戦った後で、血の臭いで鼻が効かない状態なのに、俺を見つけられたと?」
「そう、しかもあの森には特有の魔素、については後日説明するとして、それらが異様に濃すぎて、ワシら獣人属の嗅覚を持ってしても、匂いを察することが難しいほどなんじゃ」
「じゃあ、どうやって俺を……?」
「そう、番いにしか分からぬ匂いをあの子が感じ取ったのじゃ。 もしかしたら気づいていたかもしれんが、ヒューイはダイチ殿を見つけてからずっと嬉しそうにしておったの。 あの子のあんな顔を見るのは、随分久しぶりじゃ……」
たまたま見つけてくれたから助かったわけではなく、必然だったから俺を見つけられたという。
そんな偶然があるのか、番いについて詳しく分かっていないのもあるが、確かに昼間の件でも俺の匂いが強すぎるとヒューイは言っていた。
生憎人間である俺は嗅覚が鋭いわけではないので分からないし、ヒューイの匂いも分かるわけではない。
ただ匂いではなく、それに準じるものがある。
「あの、匂いとかそういう話じゃないんですけど、昨日からずっとヒューイといるだけで、ドキドキしてるんです。何をしても心臓が飛び出るくらいに高鳴って……」
「それが番いというものじゃ、理屈ではなく本能から、お主ら二人は自然と惹かれ合っている証拠じゃ」
「そうか、じゃあやっぱり気のせいとかじゃなかったのか……」
「先触れでヒューイから番いを見つけたと聞かされたときは、流石の儂も信じられなかったが、昨日会った瞬間にはっきりと理解した。 それで何とかしてお主にはこの村にいてもらわなくてはと、いろいろ策を立ててはいたが、その必要はなくなったようで安心したわい」
『何事も平和的に行きたいからのぉ』などと、呑気に呟いている爺様は笑いながら、空恐ろしいことを平気で言っていた。
何をされていたのだろうと考えたくないが、失意の森にいたということを考えると、俺は飛ばされる前の自分に似合う場所だったんだと自虐的になる。
「だが改めて、ダイチ殿の意思を問わねばならぬのもまた事実。 さて、お主はこれからどうするつもりじゃ? できるなら、このままこの村に腰を落ち着け、ヒューイの番いとして生活をしてもらいたいと、儂は切に願っておる」
もう選んだも同然なのだが、それでも選択肢をくれるのは情けや強制ではなく、自らの意思でしっかり明言してもらいたいと、爺様なりの優しさなのだろう。
答えは分かりきっている、だからヒューイにもはっきり伝えようと決意したように、俺はこの村の長に宣言した。
「――俺を、この村にいさせてください。 そして、俺にヒューイをください。 きっと幸せにしますから」
「……そうか、ありがとうございます。 その選択に、最大限の感謝を」
「いえ、俺の方こそ爺様には頭が上がりません。 こんな俺を助けてくれて、ヒューイとの縁も結んでくれて」
「礼を言うのはこちらです、ダイチ殿。 あの子は、ヒューイは少し訳ありでしての……」
「訳あり……?」
正座をして頭を下げ、俺は爺様が望む答えと、俺が選びたい答えが一致していることを告げる。
嬉しそうに三毛猫も頭を下げてくれたので、申し訳ないと伝えるとそっと上げた表情はどこか昏かった。
深い意図はなかったが、思わず聞き返してしまったのが悪かったのかもしれない。
次に語られる言葉に、俺は信じられないの一言で受け止めきれなかった。
それからだいぶ時間が経った後、俺はすっかり忘れていた爺様の元へと足を運んでいたが、ここまで時間が掛かった理由を問われ、正直に話すことにした。
見た目こそ穏やかそうに見えるが、明らかに怒っているお猫様に萎縮してしまうのだが、これに関しては全面的に俺とヒューイに責任がある。
あの後、もう一度身体を洗おうとしたのだが、興奮冷めやまず、もう一度とばかりセックスを再開してしまった。
いつの間にか明るかった空はすっかり朱色へと変化していて、あまりに遅かったせいでヒュペルさんとゼンブルさんが迎えにくる。
ちょうど俺たちが愛を伝え合いながら何度目かの絶頂を迎えている最中の登場に、4人共々気まずいなんてレベルではなく、モンペなドーベルマンは発狂した。
そしてやっぱり、また槍斧をもって俺を真っ二つにしようと迫り、命がけの鬼ごっこまでしたせいで、爺様の家に来た頃には夜になっていた。
「やれやれ、初夜を迎えるのはいつかと心配していたが、あっさり契りを交わしてしまうとは。 なかなかやるではないか、お主」
「うっ……。 爺様、口調が変わっていませんか?」
「それはそうじゃ。 これでお主はめでたくヒューイの番いとなり、この村の一員として心置きなく迎えられるわけじゃからの」
必死に逃げ回り、あと少しでバラバラ死体になるところをヒュペルさんに救われ、ここでもできれば見たくないレベルのお仕置きをされた上で、ゼンブルさんを引きずるように連れて帰っていった。
同時にヒューイも連れていったので、何か用事があると思い見送ろうとすると、彼は家で待っていると頬にキスしてくれたので、早く帰りたくて仕方なかったりする。
だがそれも、浮かれ気分で三毛猫の家に足を踏み入れた直後、笑っているのに笑っていない爺様に俺は小さく震えた。
時間こそ決めていなかったが、先触れなく遅刻したのだから仕方がない。
なので潔く事実を伝えると、呆れと安堵が入り混じったような顔で、随分と砕けた言葉遣いをしてくれた。
それはすなわち、俺への対応が客人ではなく、身内とみなしていることへの証なのかもしれない。
「呼んだのはそう難しいことではない。 まぁいつヒューイと結ばれるつもりかを聞くつもりだったのじゃが、無事解決したようじゃし、良しとしよう。 とりあえず話しておかなくてはならないのは、番いというものについてじゃ」
「番いについて、ですか?」
「うむ。 そもそもおかしいと思わなかったかの? 会ったばかりのヒューイが、どうしてお主に心を許し、求めたのかを」
待たされたことへの怒りは、俺とヒューイが無事結ばれたと知るだけで融解したらしく、本題へと移ってくれる。
お説教を受けなくて良かったと安堵していると、真剣な顔で語る爺様の言葉に思い当たることがあった。
だがそれはヒューイだけでなく、自分自身にも当てはまる部分がある。
「ダイチ殿は番いと聞いて、どのように考えておられるか?」
「えっと……、将来結ばれるべき運命の相手、みたいな、そんなロマンチックな感じですかね?」
「ろまんちっく……、お主の世界にはそのような言葉があるのか。 意味合いからして、夢のある華やかなもの、ということでよろしいか?」
「えっと、そうですね、多分……」
「まぁそれはさておくとして、大まかに言えばそれで相違ありませぬ。 ですが、そのような相手と巡り合えるなど、簡単なことではない」
番いという概念について、俺も自分の世界でたまに聞くくらいで、詳しい意味合いを知っているわけではない。
爺様の話を聞くだけでも、確かに言葉だけ取れば理想的な出会いがあるかもしれないと思えるが、その奇跡に遭遇する可能性がどれくらい低いか、考えなくても分かった。
運命の相手と出会えるなんて口にできても、簡単に見つかるものではない、それなのに番いになってくれと言われたことを思うと、まさかという仮説に辿り着く。
「ちょ、待ってください。 まさかヒューイは、俺とあの森で初めて会ったときから、そうだと確信していたと……?」
「その通りです。 ダイチ殿、昨日はあえてはぐらかしましたが、あの森はかなり特殊な樹海での、迷い込んだ者は二度と出ることは敵わんのじゃ」
「えっ……?」
「『失意の森』と呼ばれておってな。 森の中にあるこの村の者たちはワシが施した加護により、森に漂う邪気に惑わされることはないが、それ以外の人間が迷い込めば、生きて出ることはできぬ。 まして魔物もおる故、この村の者であっても戦闘能力がない者は単身で入ることを禁止しておるくらいじゃ」
「そ、そんなこと、昨日は言って……」
「いたずらに情報を与えて恐怖を教えることになると思っての。 しかもお主がいたところは、かなり危険な場所での、あの子も言うておったが、少し遅ければ命の保証はなかったのは、紛れもない事実ですじゃ」
最初からヒューイは俺が自分の番いだと分かっていたのも驚きだが、爺様の話す内容に頭がついていかなかった。
訳もわからずやってきた異世界で、最初にいた場所がとんでもない魔窟だったと聞かされ、今になって絶望が押し寄せてくる。
もしヒューイに会えていなければ確実に死んでいたという事実に、俺の心に恐怖が湧いてきた。
「じゃあヒューイって、本当に強いんですね、俺もあっさり押し倒されましたし」
「そのことについても捕捉しておきたいのじゃが、あの森では共に行動していない限り、他の者を見つけることはできませぬ」
「は、はい?? でも俺はヒューイに会った……」
「お忘れですかな? お主を見つける前、ヒューイが何をしていたのかを、あの子は話していたはずじゃが」
震える体を押さえて、ヒューイの凄さに実感と共に見つけてくれてありがとうと感謝の念を持とうとしたが、また爺様は信じられないことを口にする。
一緒にいない限り誰かと会える可能性は0に等しいと、ありえないと断言したのだ。
ならたまたまその可能性に救われたのかと思ったが、ヒューイが俺に会う前に何をしていたのかと言われ、昨日のことを思い出す。
遭遇したときに感じた強い血の臭い、連れてこられたこの家で彼が語ったのは、魔物を狩った後だと言っていた。
犬といえば嗅覚に優れた動物だが、この世界でも人の姿をしているものの、能力は変わらないのかもしれない。
「……魔物と戦った後で、血の臭いで鼻が効かない状態なのに、俺を見つけられたと?」
「そう、しかもあの森には特有の魔素、については後日説明するとして、それらが異様に濃すぎて、ワシら獣人属の嗅覚を持ってしても、匂いを察することが難しいほどなんじゃ」
「じゃあ、どうやって俺を……?」
「そう、番いにしか分からぬ匂いをあの子が感じ取ったのじゃ。 もしかしたら気づいていたかもしれんが、ヒューイはダイチ殿を見つけてからずっと嬉しそうにしておったの。 あの子のあんな顔を見るのは、随分久しぶりじゃ……」
たまたま見つけてくれたから助かったわけではなく、必然だったから俺を見つけられたという。
そんな偶然があるのか、番いについて詳しく分かっていないのもあるが、確かに昼間の件でも俺の匂いが強すぎるとヒューイは言っていた。
生憎人間である俺は嗅覚が鋭いわけではないので分からないし、ヒューイの匂いも分かるわけではない。
ただ匂いではなく、それに準じるものがある。
「あの、匂いとかそういう話じゃないんですけど、昨日からずっとヒューイといるだけで、ドキドキしてるんです。何をしても心臓が飛び出るくらいに高鳴って……」
「それが番いというものじゃ、理屈ではなく本能から、お主ら二人は自然と惹かれ合っている証拠じゃ」
「そうか、じゃあやっぱり気のせいとかじゃなかったのか……」
「先触れでヒューイから番いを見つけたと聞かされたときは、流石の儂も信じられなかったが、昨日会った瞬間にはっきりと理解した。 それで何とかしてお主にはこの村にいてもらわなくてはと、いろいろ策を立ててはいたが、その必要はなくなったようで安心したわい」
『何事も平和的に行きたいからのぉ』などと、呑気に呟いている爺様は笑いながら、空恐ろしいことを平気で言っていた。
何をされていたのだろうと考えたくないが、失意の森にいたということを考えると、俺は飛ばされる前の自分に似合う場所だったんだと自虐的になる。
「だが改めて、ダイチ殿の意思を問わねばならぬのもまた事実。 さて、お主はこれからどうするつもりじゃ? できるなら、このままこの村に腰を落ち着け、ヒューイの番いとして生活をしてもらいたいと、儂は切に願っておる」
もう選んだも同然なのだが、それでも選択肢をくれるのは情けや強制ではなく、自らの意思でしっかり明言してもらいたいと、爺様なりの優しさなのだろう。
答えは分かりきっている、だからヒューイにもはっきり伝えようと決意したように、俺はこの村の長に宣言した。
「――俺を、この村にいさせてください。 そして、俺にヒューイをください。 きっと幸せにしますから」
「……そうか、ありがとうございます。 その選択に、最大限の感謝を」
「いえ、俺の方こそ爺様には頭が上がりません。 こんな俺を助けてくれて、ヒューイとの縁も結んでくれて」
「礼を言うのはこちらです、ダイチ殿。 あの子は、ヒューイは少し訳ありでしての……」
「訳あり……?」
正座をして頭を下げ、俺は爺様が望む答えと、俺が選びたい答えが一致していることを告げる。
嬉しそうに三毛猫も頭を下げてくれたので、申し訳ないと伝えるとそっと上げた表情はどこか昏かった。
深い意図はなかったが、思わず聞き返してしまったのが悪かったのかもしれない。
次に語られる言葉に、俺は信じられないの一言で受け止めきれなかった。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる