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24話
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「では、これを肌身離さず身に着けておくのだぞ」
「はい……これをみにつけていれば、けいほうそうちがならないのですね」
「ああ、これを身に着けずに馬車に触れると━━」
そう言って、装身具を身に着けずに近づく父様に反応し、馬車はつんざく騒音を鳴り響かせました。
「っ!!……とうさま、みみが、つぶれてしまいます」
両耳を押さえ、父様に止めてくださいと懇願します。
なんだろう……化け物の鳴き声とガラスを引っ搔いた音を混ぜたような不快な音……。
警報装置って言ったら【ビービー】とか、【ピーピー】とかのイメージだったのだけれど……確かに異世界に電子音があるわけないわよね……。それに街を出てから試すって言ってたのに……。
「ん。と、いう訳だから、気を付けるように」
やっと馬車の警報装置を止めてくれた父様は「結構凄い音が出るものなんだな」と感心しています。
「「はい」」
騒音が鳴り止み、ホッとした私とケンゾーは、ハモって返事をしました。
それにしても凄いわね。装身具を身に着けることによって、馬車の持ち主を認識して、それ以外の生物が近づくと警報を鳴らす。どういう仕組みになっているのかしら……。
これを制作した魔法省……一度行って、じっくり話を聞いてみたいわ。
あっ、ケンゾーのお父様も魔法省の方だったわね。
この馬車の制作に携わったのかしら?
「ねえ、ケンゾーのおとうさまもこのばしゃのせいさくに、たずさわったのかしら?」
「どうなんでしょう?一度聞いてみましょうか?」
「そうね、きかいがあれば、きいてみてくれる?」
「かしこまりました」
そんな会話をしていると、荷詰めも終わったようです。
料理長が食材を詰めてくれて、従者達が着替えの詰まった荷物を運び入れてくれました。
「こちらの籠にはサンドイッチが入っておりますので、お昼にでも召し上がってください。水筒には、スープが入っておりますので、温めて召し上がってください」
「ありがとう」
料理長が今日のお昼ご飯にと、お弁当を作ってくれたみたいです。
当分、料理長のご飯が食べられないのね……。じっくり味わって食べないと……。
「気をつけていってらっしゃいませ。皆様のお帰りを心よりお待ち申しあげております」
「ええ、きをつけていってくるわね。かえってくるころには、ジルのおなかのこどももうまれているかしら?たのしみよね♪3にんぶんのおみやげをかってこなくちゃね」
そう言って私が微笑むと、料理長も微笑んでくれました。
「お元気な姿を拝見できるのが何よりのお土産になりますので、楽しみにお待ちしております」
「ふふ、ありがとう」
「さあ、乗り込みなさい」
「はい、とうさま」
「ねえしゃま、きをつけていってらっしゃいましぇ」
「気を付けていってらっしゃい」
「はい、かあさま、ジョゼ。いってまいります……うっ、ぐすん……」
見送りに来てくれた、母様とジョゼに目をやります……辛い……天使としばらく会えないなんて……。
「ほら、泣かないで。父様をよろしく頼みましたよ」
「はい、かあさま」
母様に頬を拭われた後、キスしていただきました。うん、少し元気が出ました。
それを見たジョゼが「ぼくも~」と言って頬にキスしてくれました。
「ふふ、とってもげんきがでました。ありがとうございます」
羨ましかったのか、父様もおねだりして母様とジョゼにキスをしてもらって、馬車へと乗り込みます。
「さあ、出発しよう」
「「はい」」
目視できなくなるまで、母様とジョゼに手を振った後、少し寂しげな父様の横に座ります。
御者は父様がしてくれています。
父様付きの従者は、お留守番だそうです。長い間、留守にするので、ハウンド家一番の実力者でもある者に家を守らせたいと、留守番を頼んだのだそうです。
「さっきわかれたばかりだというのに、もうさみしいです……」
「そうか、父様もだ……」
二人のため息が、馬車の中の空気を重くします。
駄目だ、楽しい事を考えよう!そういえば父様って、料理はできるのかしら?
料理長がたくさんの食材と調味料を詰めてくれたけど……それって自炊するってことよね?
侯爵様が料理をする機会なんてある訳ないから、手料理なんて食べたことがないし……なんでもチートの父様ですもの、料理もお茶の子さいさいよね??
「あの、とうさま。おうかがいしますが、とうさまはりょうりはできるのですか?」
私がそう聞くと、父様は何を言ってるんだ?というような顔をして仰いました。
「出来る訳ないだろう」と……。
「で、では、りょうりはだれが?」
「ケンゾーは料理できるか?」
父様は後ろに座っているケンゾーに聞きました。
「いえ、あの、お茶をいれることはできるのですが、りょうりはできません」
そうよね~ケンゾーは私のためにお茶を淹れるのは上手だけれど、料理は期待していないわ。
だって、まだ8つだもの。
「そうだ!これから、合流する使者殿が出来るかも知れん」
父様は名案だとばかりにそう提案します、が。
「いえ、とうさまとケンゾーができないのであれば、わたくしがりょうりいたします」
だって、3人分の料理をお願いするのも図々しいし、私が料理できるのだから、手を煩わせなくてもいいじゃない。ね?
「ルイーズが?」
「おじょうさまが?」
目を丸くする2人に、少々ムッとします。
「わたくしではふまんなのですか?」
「いや、ルイーズが料理を出来るのは知っているが……」
「はい、知っておりますが……」
眉間に皺を寄せて、思案する2人……もう、何が不満なのよっ!
「ルイーズ。心して聞くように!自重という言葉を知っているか?」
「しっておりますが?」
うん?父様は何を言いたいのかしら……。
「知っているならいい。頼んだぞ」
横でうんうんと頷いてるケンゾー、これの意味がわかるの?凄いわね。通じてるのね。
私にはまったく理解できないのに……。
とりあえず、私が料理担当って事でいいのよね?
後で、調味料と食材チェックして、メニューを決めるとしましょう。
どうせなら、この世界にない料理がいいわよね……。この世界、色々あるようで【えっ?この料理はないの?】って事が多いのよね。ふふ、私の料理でびっくりさせなくては!楽しみだわ♪
考え事をしていると、待ち合わせ場所である貴族門の前に到着したようです。
・
・
・
「「「おはようございます」」」
一旦馬車から降りると、師匠と若い男性と綺麗な女性が一斉に挨拶をしてくださいました。
「おはよう。紹介しよう、愛娘のルイーズと従者のケンゾーだ」
父様の挨拶を皮切りに自己紹介いたします。
「はじめまして。『ルイーズ・ハウンド』ともうします。どうちゅうよろしくおねがいいたします」
「はじめまして。『ケンゾー・シバ』ともうします。よろしくお願いいたします」
私たちの自己紹介が終わった後、使者殿も自己紹介をしてくださいました。
「はじめまして。サクラ公国から参りました『リョウブ』と申します。道中よろしくお願いいたします」
「はじめまして。『カリン』と申します。よろしくお願いします」
綺麗なお姉さんがカリンさんで、若い男性がリョウブさんね。
「カリンさまにリョウブさまですね」
私がそういうと、師匠がチョイチョイと手招きしています。
何かしら?と思い師匠へ歩み寄ります。
すると師匠が小声で「あいつらに『様付け』はやめてやれ。気軽に俺に話しかけるようにしてやってくれないか?」と仰いました。
「でも、ししょう。とうさまにおうかがいしなくては」
そんなやり取りが聞こえていたのか、父様が笑顔で「街を出た後なら構わないよ」と許可してくださいました。
「とうさまのきょかもいただきましたし、まちをでましたら、そのようにいたしますね」
「おう、頼んだ」と師匠は小声で仰った後、声を張って「くれぐれも、お気をつけていってらっしゃいませ」と恭しく、父様や私達に挨拶をしてくださいました。
「「はい。いってまいります」」
「では、いってくる」
ケンゾーと師匠の別れの挨拶の邪魔をしないように、私と父様は一足先に馬車へ乗り込みました。
暫くすると、うっすら涙目のケンゾーが乗り込んできました。
やっぱり寂しいわよね。こういう時は、見て見ぬふりかしら……さっきは私もお別れで泣いてたもの。
気持ちはわかるわ~。
「さて、出発するか」
父様の掛け声とともに馬車が走り出します。
街並みをじっくり観察するのって初めてじゃないかしら……我が家の馬車の小窓から見える風景と、御者台から見る眺めは違うわね。壮観だわ。
行きかう人々の喧騒も聞こえるし、市場の香りもするわ。魚や野菜、果物の香り。
肉の焼ける香ばしい香りもするわ。おいしそう……買い食いしてみたいわ!
あら?あの小道の先に見えるのは雑貨屋さんかしら……可愛い小物とかあるのかしら?見てみたいわね。
あっちには武具屋もあるわ。ああ、じっくり、眺めたいのに……。
馬車の速度が速すぎて、ゆっくり楽しめないわ。
馬車の御者って難しいのかしら?
私が馬車を操れると、速度を落とせるわよね♪
父様だけにお任せしてしまうと、お疲れになってしまうだろうし、一石二鳥だわ。
「とうさま。ばしゃをあやつるのはむずかしいですか?」
「難しくはないと思うけど、どうしてだい?」
「とうさまがやすむまがないと、おつかれになるでしょう?ですから、わたくしがかわりにあやつれればと、かんがえました」
「優しいね、ルイーズは。そんなに難しくはないだろうから、街をでたら父様が教えてあげよう」
でも、それだと今楽しめない……けど、そうよね。下手っぴな人間が馬車を操って事故が起こってもいけないし、浅はかだったわ。もう少し思慮深くならなくては……。
「では、私にも教えていただけますか?」
真剣な表情で、ケンゾーが父様にお願いしています。
「ケンゾーも?」
「はい。本来ならば、じゅうしゃである私がぎょしゃをせねばならないみです。少しでもお役にたてるよう、ごしどうをおねがいいたします」
「いいよ。では、街を出たら交互に練習してみよう」
「「おねがいします」」
暫くすると街の外へと続く門の前に到着しました。
王都には東西南北それぞれに門があり、それぞれの場所に2箇所ずつ。貴族や王族専用。一般の方の門があるそうです。
ここで、門兵さんに身分証などを提示して、入出国の許可をいただきます。
貴族は家紋が施された装飾品でOKで、厳しい審査はないみたいだけれど、商人さんは申告した荷物と積んでいる荷物に違いがないか、じっくり調べられるみたい。大変だ。
一般の方は身分証明できるものであれば、スムーズに通してもらえるそうです。
よくある異世界召喚もので、身分証がないため、お金を払って入国し、身分証明代わりに冒険者登録をするってパターンは出来ないんだって。
身分証明がない場合、身分を保証する人間を2人連れて来て、個々に面談。虚偽がないか確かめた後、身分証発行なんだそうです。めんどくさ……。
まあ、ヨークシャー王国では生まれたら身分証が発行されるので、余程の事がなければ、身分証を持ってない人間はいないみたい。
王国外の人間で、身分証がない人は関所で止められるから入国できないみたいだし。
と、いうことは私も身分証があるってことだよね?
「とうさま。わたくしにもみぶんしょうになるものがあるのですか?」
「ああ。あるよ、これだ」
そういって父様は、ペンダントトップの様なものを見せてくださいました。
綺麗ね。魔石に家紋が彫られていて、オレンジ色に淡く発光しています。
「これが、わたくしの……」
「それで、こっちが私の物だ。家紋は同じだけれど、よく見ると違うだろう」
文字の様な、柄の様なものが違うだけなんだけれど……。
「このちがいに、いみがあるのですか?」
「ああ、古代文字で名前が彫ってあるんだ。あと、血筋に反応して発光する。万が一、盗難にあった後、悪用されるのを防ぐためにそうなっているそうだ」
ええっ!凄い!ハイテクだわ。
「仮に、ケンゾー。これを持ってみなさい」
「かしこまりました」
ケンゾーに手渡された身分証は……黒いただの石になっています。
「今度は、ルイーズが持ってみなさい」
次に私が持つと、発光しだしました……やっぱりすごいわ。なんで?どういう理屈なの?意味が分からないわ。
この馬車の時もそう思ったけど、この世界の魔石を使った便利道具は侮れませんね。
「ねえ、ケンゾーのみぶんしょうもみせて」
「これでございます」
ケンゾーの身分証はシバ男爵家の家紋が施されています。家紋や古代文字?が違うだけで、造りは同じ。
発光している色は、濃いブルーです。
「とうさま。いろにもいみがあるのですか?」
「発光する色は、爵位ごとに違うね。同じ爵位なら、同じ色になる」
「おもしろいですわ」
「さて、これはルイーズの身分証だから自分で持っていなさい」
父様はそう仰った後、綺麗なチェーンを通して首からかけてくださいました。
輪っかがあるのでペンダントに出来るのね。
今回、使者さん達も王宮への使いだったので、貴族の門を利用します。
身分証を門兵さんに提示して、スムーズに門の外へと向かいます。
いよいよ冒険がはじまりますわ!
わくわくが止まりません!
門を潜り抜け、景色を見渡すと……おや?……あれ?
目をコシコシとこすって、再度見渡します。
目を瞑って、目を開きます。
でも、見えます。
「あの、とうさま。あちらに、アルノーせんせいがいらっしゃるのですが、まぼろしでしょうか?」
「本当だね」
アルノー先生は大きく手を振っていらっしゃいます。
「おはようございます!ハウンド侯爵様、ルイーズ様。旅のお供に、お役に立てる『アルノー・サルーキ』はいかがでしょうか?」
先生は何を仰っているの?
「そうだね、何に役立つんだい?」
「仰ってくだされば、雑用でもなんでもいたします!」
そう宣言するアルノー先生。
その発言を聞いた父様が、大笑いなさりながら「では、許可しよう」と仰いました。
えっ?かるっ!そんな軽いノリで旅を許可するの?
「とうさま。よろしいのですか?」
「ルイーズが信頼している先生だ。遺跡に関して助言もいただけるだろうし、賑やかな方が、いいだろう」
「そうですわね。にぎやかなほうが……でも、にぎやかすぎておちつかないときはどうしますか?」
「そうだね……防音結界を張って、閉じ込めよう!」
「と、とうさま……」
アルノー先生への扱いが雑だわ。
「ケンゾーも落ち着かない時は、結界に閉じ込めるから言いなさい」
「しょうちいたしました」
父様……ケンゾー……。
深く考えるのはやめておきましょう。
先生を乗せて、再び出発です!
いざ!冒険へ!!
「はい……これをみにつけていれば、けいほうそうちがならないのですね」
「ああ、これを身に着けずに馬車に触れると━━」
そう言って、装身具を身に着けずに近づく父様に反応し、馬車はつんざく騒音を鳴り響かせました。
「っ!!……とうさま、みみが、つぶれてしまいます」
両耳を押さえ、父様に止めてくださいと懇願します。
なんだろう……化け物の鳴き声とガラスを引っ搔いた音を混ぜたような不快な音……。
警報装置って言ったら【ビービー】とか、【ピーピー】とかのイメージだったのだけれど……確かに異世界に電子音があるわけないわよね……。それに街を出てから試すって言ってたのに……。
「ん。と、いう訳だから、気を付けるように」
やっと馬車の警報装置を止めてくれた父様は「結構凄い音が出るものなんだな」と感心しています。
「「はい」」
騒音が鳴り止み、ホッとした私とケンゾーは、ハモって返事をしました。
それにしても凄いわね。装身具を身に着けることによって、馬車の持ち主を認識して、それ以外の生物が近づくと警報を鳴らす。どういう仕組みになっているのかしら……。
これを制作した魔法省……一度行って、じっくり話を聞いてみたいわ。
あっ、ケンゾーのお父様も魔法省の方だったわね。
この馬車の制作に携わったのかしら?
「ねえ、ケンゾーのおとうさまもこのばしゃのせいさくに、たずさわったのかしら?」
「どうなんでしょう?一度聞いてみましょうか?」
「そうね、きかいがあれば、きいてみてくれる?」
「かしこまりました」
そんな会話をしていると、荷詰めも終わったようです。
料理長が食材を詰めてくれて、従者達が着替えの詰まった荷物を運び入れてくれました。
「こちらの籠にはサンドイッチが入っておりますので、お昼にでも召し上がってください。水筒には、スープが入っておりますので、温めて召し上がってください」
「ありがとう」
料理長が今日のお昼ご飯にと、お弁当を作ってくれたみたいです。
当分、料理長のご飯が食べられないのね……。じっくり味わって食べないと……。
「気をつけていってらっしゃいませ。皆様のお帰りを心よりお待ち申しあげております」
「ええ、きをつけていってくるわね。かえってくるころには、ジルのおなかのこどももうまれているかしら?たのしみよね♪3にんぶんのおみやげをかってこなくちゃね」
そう言って私が微笑むと、料理長も微笑んでくれました。
「お元気な姿を拝見できるのが何よりのお土産になりますので、楽しみにお待ちしております」
「ふふ、ありがとう」
「さあ、乗り込みなさい」
「はい、とうさま」
「ねえしゃま、きをつけていってらっしゃいましぇ」
「気を付けていってらっしゃい」
「はい、かあさま、ジョゼ。いってまいります……うっ、ぐすん……」
見送りに来てくれた、母様とジョゼに目をやります……辛い……天使としばらく会えないなんて……。
「ほら、泣かないで。父様をよろしく頼みましたよ」
「はい、かあさま」
母様に頬を拭われた後、キスしていただきました。うん、少し元気が出ました。
それを見たジョゼが「ぼくも~」と言って頬にキスしてくれました。
「ふふ、とってもげんきがでました。ありがとうございます」
羨ましかったのか、父様もおねだりして母様とジョゼにキスをしてもらって、馬車へと乗り込みます。
「さあ、出発しよう」
「「はい」」
目視できなくなるまで、母様とジョゼに手を振った後、少し寂しげな父様の横に座ります。
御者は父様がしてくれています。
父様付きの従者は、お留守番だそうです。長い間、留守にするので、ハウンド家一番の実力者でもある者に家を守らせたいと、留守番を頼んだのだそうです。
「さっきわかれたばかりだというのに、もうさみしいです……」
「そうか、父様もだ……」
二人のため息が、馬車の中の空気を重くします。
駄目だ、楽しい事を考えよう!そういえば父様って、料理はできるのかしら?
料理長がたくさんの食材と調味料を詰めてくれたけど……それって自炊するってことよね?
侯爵様が料理をする機会なんてある訳ないから、手料理なんて食べたことがないし……なんでもチートの父様ですもの、料理もお茶の子さいさいよね??
「あの、とうさま。おうかがいしますが、とうさまはりょうりはできるのですか?」
私がそう聞くと、父様は何を言ってるんだ?というような顔をして仰いました。
「出来る訳ないだろう」と……。
「で、では、りょうりはだれが?」
「ケンゾーは料理できるか?」
父様は後ろに座っているケンゾーに聞きました。
「いえ、あの、お茶をいれることはできるのですが、りょうりはできません」
そうよね~ケンゾーは私のためにお茶を淹れるのは上手だけれど、料理は期待していないわ。
だって、まだ8つだもの。
「そうだ!これから、合流する使者殿が出来るかも知れん」
父様は名案だとばかりにそう提案します、が。
「いえ、とうさまとケンゾーができないのであれば、わたくしがりょうりいたします」
だって、3人分の料理をお願いするのも図々しいし、私が料理できるのだから、手を煩わせなくてもいいじゃない。ね?
「ルイーズが?」
「おじょうさまが?」
目を丸くする2人に、少々ムッとします。
「わたくしではふまんなのですか?」
「いや、ルイーズが料理を出来るのは知っているが……」
「はい、知っておりますが……」
眉間に皺を寄せて、思案する2人……もう、何が不満なのよっ!
「ルイーズ。心して聞くように!自重という言葉を知っているか?」
「しっておりますが?」
うん?父様は何を言いたいのかしら……。
「知っているならいい。頼んだぞ」
横でうんうんと頷いてるケンゾー、これの意味がわかるの?凄いわね。通じてるのね。
私にはまったく理解できないのに……。
とりあえず、私が料理担当って事でいいのよね?
後で、調味料と食材チェックして、メニューを決めるとしましょう。
どうせなら、この世界にない料理がいいわよね……。この世界、色々あるようで【えっ?この料理はないの?】って事が多いのよね。ふふ、私の料理でびっくりさせなくては!楽しみだわ♪
考え事をしていると、待ち合わせ場所である貴族門の前に到着したようです。
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「「「おはようございます」」」
一旦馬車から降りると、師匠と若い男性と綺麗な女性が一斉に挨拶をしてくださいました。
「おはよう。紹介しよう、愛娘のルイーズと従者のケンゾーだ」
父様の挨拶を皮切りに自己紹介いたします。
「はじめまして。『ルイーズ・ハウンド』ともうします。どうちゅうよろしくおねがいいたします」
「はじめまして。『ケンゾー・シバ』ともうします。よろしくお願いいたします」
私たちの自己紹介が終わった後、使者殿も自己紹介をしてくださいました。
「はじめまして。サクラ公国から参りました『リョウブ』と申します。道中よろしくお願いいたします」
「はじめまして。『カリン』と申します。よろしくお願いします」
綺麗なお姉さんがカリンさんで、若い男性がリョウブさんね。
「カリンさまにリョウブさまですね」
私がそういうと、師匠がチョイチョイと手招きしています。
何かしら?と思い師匠へ歩み寄ります。
すると師匠が小声で「あいつらに『様付け』はやめてやれ。気軽に俺に話しかけるようにしてやってくれないか?」と仰いました。
「でも、ししょう。とうさまにおうかがいしなくては」
そんなやり取りが聞こえていたのか、父様が笑顔で「街を出た後なら構わないよ」と許可してくださいました。
「とうさまのきょかもいただきましたし、まちをでましたら、そのようにいたしますね」
「おう、頼んだ」と師匠は小声で仰った後、声を張って「くれぐれも、お気をつけていってらっしゃいませ」と恭しく、父様や私達に挨拶をしてくださいました。
「「はい。いってまいります」」
「では、いってくる」
ケンゾーと師匠の別れの挨拶の邪魔をしないように、私と父様は一足先に馬車へ乗り込みました。
暫くすると、うっすら涙目のケンゾーが乗り込んできました。
やっぱり寂しいわよね。こういう時は、見て見ぬふりかしら……さっきは私もお別れで泣いてたもの。
気持ちはわかるわ~。
「さて、出発するか」
父様の掛け声とともに馬車が走り出します。
街並みをじっくり観察するのって初めてじゃないかしら……我が家の馬車の小窓から見える風景と、御者台から見る眺めは違うわね。壮観だわ。
行きかう人々の喧騒も聞こえるし、市場の香りもするわ。魚や野菜、果物の香り。
肉の焼ける香ばしい香りもするわ。おいしそう……買い食いしてみたいわ!
あら?あの小道の先に見えるのは雑貨屋さんかしら……可愛い小物とかあるのかしら?見てみたいわね。
あっちには武具屋もあるわ。ああ、じっくり、眺めたいのに……。
馬車の速度が速すぎて、ゆっくり楽しめないわ。
馬車の御者って難しいのかしら?
私が馬車を操れると、速度を落とせるわよね♪
父様だけにお任せしてしまうと、お疲れになってしまうだろうし、一石二鳥だわ。
「とうさま。ばしゃをあやつるのはむずかしいですか?」
「難しくはないと思うけど、どうしてだい?」
「とうさまがやすむまがないと、おつかれになるでしょう?ですから、わたくしがかわりにあやつれればと、かんがえました」
「優しいね、ルイーズは。そんなに難しくはないだろうから、街をでたら父様が教えてあげよう」
でも、それだと今楽しめない……けど、そうよね。下手っぴな人間が馬車を操って事故が起こってもいけないし、浅はかだったわ。もう少し思慮深くならなくては……。
「では、私にも教えていただけますか?」
真剣な表情で、ケンゾーが父様にお願いしています。
「ケンゾーも?」
「はい。本来ならば、じゅうしゃである私がぎょしゃをせねばならないみです。少しでもお役にたてるよう、ごしどうをおねがいいたします」
「いいよ。では、街を出たら交互に練習してみよう」
「「おねがいします」」
暫くすると街の外へと続く門の前に到着しました。
王都には東西南北それぞれに門があり、それぞれの場所に2箇所ずつ。貴族や王族専用。一般の方の門があるそうです。
ここで、門兵さんに身分証などを提示して、入出国の許可をいただきます。
貴族は家紋が施された装飾品でOKで、厳しい審査はないみたいだけれど、商人さんは申告した荷物と積んでいる荷物に違いがないか、じっくり調べられるみたい。大変だ。
一般の方は身分証明できるものであれば、スムーズに通してもらえるそうです。
よくある異世界召喚もので、身分証がないため、お金を払って入国し、身分証明代わりに冒険者登録をするってパターンは出来ないんだって。
身分証明がない場合、身分を保証する人間を2人連れて来て、個々に面談。虚偽がないか確かめた後、身分証発行なんだそうです。めんどくさ……。
まあ、ヨークシャー王国では生まれたら身分証が発行されるので、余程の事がなければ、身分証を持ってない人間はいないみたい。
王国外の人間で、身分証がない人は関所で止められるから入国できないみたいだし。
と、いうことは私も身分証があるってことだよね?
「とうさま。わたくしにもみぶんしょうになるものがあるのですか?」
「ああ。あるよ、これだ」
そういって父様は、ペンダントトップの様なものを見せてくださいました。
綺麗ね。魔石に家紋が彫られていて、オレンジ色に淡く発光しています。
「これが、わたくしの……」
「それで、こっちが私の物だ。家紋は同じだけれど、よく見ると違うだろう」
文字の様な、柄の様なものが違うだけなんだけれど……。
「このちがいに、いみがあるのですか?」
「ああ、古代文字で名前が彫ってあるんだ。あと、血筋に反応して発光する。万が一、盗難にあった後、悪用されるのを防ぐためにそうなっているそうだ」
ええっ!凄い!ハイテクだわ。
「仮に、ケンゾー。これを持ってみなさい」
「かしこまりました」
ケンゾーに手渡された身分証は……黒いただの石になっています。
「今度は、ルイーズが持ってみなさい」
次に私が持つと、発光しだしました……やっぱりすごいわ。なんで?どういう理屈なの?意味が分からないわ。
この馬車の時もそう思ったけど、この世界の魔石を使った便利道具は侮れませんね。
「ねえ、ケンゾーのみぶんしょうもみせて」
「これでございます」
ケンゾーの身分証はシバ男爵家の家紋が施されています。家紋や古代文字?が違うだけで、造りは同じ。
発光している色は、濃いブルーです。
「とうさま。いろにもいみがあるのですか?」
「発光する色は、爵位ごとに違うね。同じ爵位なら、同じ色になる」
「おもしろいですわ」
「さて、これはルイーズの身分証だから自分で持っていなさい」
父様はそう仰った後、綺麗なチェーンを通して首からかけてくださいました。
輪っかがあるのでペンダントに出来るのね。
今回、使者さん達も王宮への使いだったので、貴族の門を利用します。
身分証を門兵さんに提示して、スムーズに門の外へと向かいます。
いよいよ冒険がはじまりますわ!
わくわくが止まりません!
門を潜り抜け、景色を見渡すと……おや?……あれ?
目をコシコシとこすって、再度見渡します。
目を瞑って、目を開きます。
でも、見えます。
「あの、とうさま。あちらに、アルノーせんせいがいらっしゃるのですが、まぼろしでしょうか?」
「本当だね」
アルノー先生は大きく手を振っていらっしゃいます。
「おはようございます!ハウンド侯爵様、ルイーズ様。旅のお供に、お役に立てる『アルノー・サルーキ』はいかがでしょうか?」
先生は何を仰っているの?
「そうだね、何に役立つんだい?」
「仰ってくだされば、雑用でもなんでもいたします!」
そう宣言するアルノー先生。
その発言を聞いた父様が、大笑いなさりながら「では、許可しよう」と仰いました。
えっ?かるっ!そんな軽いノリで旅を許可するの?
「とうさま。よろしいのですか?」
「ルイーズが信頼している先生だ。遺跡に関して助言もいただけるだろうし、賑やかな方が、いいだろう」
「そうですわね。にぎやかなほうが……でも、にぎやかすぎておちつかないときはどうしますか?」
「そうだね……防音結界を張って、閉じ込めよう!」
「と、とうさま……」
アルノー先生への扱いが雑だわ。
「ケンゾーも落ち着かない時は、結界に閉じ込めるから言いなさい」
「しょうちいたしました」
父様……ケンゾー……。
深く考えるのはやめておきましょう。
先生を乗せて、再び出発です!
いざ!冒険へ!!
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視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
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生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
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※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
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