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第246話 想定外の仕事
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天気は快晴。旅立ちの準備を終え、コット村を出発すると馬車は一路ブラムエストへ向けてひた走る。
まず目指すのは王都スタッグ。ギルドで正式に依頼を受注せねばならない為だ。
つまらない馬車の旅だが、俺には心強い仲間達がいる。ミアに4匹の従魔達。途中からはシャーリーとシャロンをもお迎えしての長旅である。
ミアはそれに心躍らせているが、俺はというとそうでもないのが現状である。
旅は嫌いじゃない。初めて見る景色は新鮮で、子供の頃のような冒険心を思い出させてくれる。しかし、それはあくまで遊びの延長線である場合に限り、仕事ともなるとその喜びも半減だ。
「お邪魔しまーす」
「失礼します」
「いらっしゃーい」
街道のど真ん中で、シャーリーとシャロンを拾う。それというのも、俺がベルモントギルドの支部長であるノーマンと顔を合わせるのを避ける為。
2人は、俺の仕事のお手伝いとしてパーティを組むことになっている。しかしそれは表向きで、ノーマンには俺の説得の為ついて行くということにしているのだ。
2人の説得があればこそ俺が謝罪を受け入れるという流れにすれば、ノーマンは2人を快く送り出すであろうと踏んだのである。
「九条がめちゃめちゃ怒ってるって言った時のノーマンの顔は見ものだったわ」
それを思い出すかのようにケタケタと笑うシャーリーに、少し遠慮がちながらも頬を緩めるシャロン。
出来れば俺も見たかったが、それは仕事が終わってからのお楽しみだ。
「ん? シャーリーは適性の再検査をしなかったのか?」
胸元で揺れているのは、くすんだシルバープレートのまま。
「ええ。最後の最後に検査を受けて、喜ぶノーマンの顔を見てからホームの変更を伝えようと思って」
「悪魔か……」
「悪魔とは失礼ね。シャロンと私を引き離そうとした罰よ。これくらいで済むなら感謝してほしいくらいだわ」
ノーマンの絶望する顔が目に浮かぶようである……。
馬車がスタッグギルドへと辿り着くと、俺とミアとカガリ以外は馬車の中でお留守番だ。
出迎えてくれたのは支部長であるロバート。満面の笑みを浮かべているのは、俺が依頼を受けにくると事前に知っているからである。
「ようこそおいで下さいました。ささ、どうぞこちらへ」
姿を現した俺に、ざわつきを見せるギルド内にも慣れたもの。そんな視線に晒されながらも案内された応接室で、受ける依頼の最終確認をしてもらう。
「依頼内容はこちらで間違いはありませんでしょうか?」
「ええ。問題ありません」
「ありがとうございます。ギルドとしても大変助かります」
「ダンジョンは大型かもしれないというのは本当ですか?」
「はい。恐らくは50層前後かと……。パーティメンバーはブラムエストの方でお集めになられるのですか? 募集要項が決まっているのでしたら事前にあちらに連絡を入れて先行募集を出しておきますが?」
「いえ、パーティメンバーは決まっています。ベルモントでダンジョンを専門としているレンジャーのシャーリーと、その担当を連れていく予定です」
「そうでしたか。失礼致しました。では、こちらのチェックリストから必要な物を必要数書き入れていただきますでしょうか? その間、私も仕事が御座いますので、少々失礼させていただきます」
差し出されたチェックリストを受け取ると、そそくさと部屋を後にするロバート。
俺がバイス達と最初にパーティを組むことになった日。シャーリーがこれを見てテキパキと作戦会議を進めていたのを思い出す。
あの時は確か、どちらも疑心暗鬼で仲間と呼べるようなものではなかった。俺はネストに目をつけられていて、気が気ではなかったのを今でも覚えている。
少しでも歯車が狂えば、どちらかが死んでいてもおかしくはなかった状況。それが今では、最も信頼出来る仲間と呼べる間柄だ。
「諸法無我とは良く言ったものだ……」
「何か言った? おにーちゃん」
「いや、なんでもない……」
それは仏教用語で繋がることによる変化を表す言葉だ。あらゆるものは何かしらと繋がっていて、お互いが影響を及ぼし合う因果関係により成り立っているということ。
独立しているものなど、この世には存在しないという真理でもある。
過去の出会いを思い出し、物思いに耽りながらもチェックリストに目を通す。
と言っても、特に必要な物もない。強いてあげるなら、念の為に帰還水晶を常備しておきたいと思うくらいだ。
バックパックにランタン。その燃料に寝袋やテント。基本的には全てコット村で準備して来ている物で事足りる。
シャーリーやシャロンも自分の物を持って来ているのだ。その辺りは抜かりなく、食料は途中寄る街で買い足していけばいいだろう。
特に頼む物もないなと思いながらも、それに目を通していると、あるはずの物がそこにはなかった。
注意深く丁寧に読み返し、ようやく見つけたそれは最後の最後に書かれていたのだ。
マナポーションである。それには上から射線が引かれていた。
「ミア。これは在庫がないって認識で間違いないか?」
「うん。マナポーション遂になくなっちゃったんだね。結構前からギリギリだったから。でもおにーちゃんなら言えば出してくれるかも。緊急時の為に予備を隠してるかもよ?」
「いや、なければいいんだ。気になっただけだから……」
扉をノックする音が聞こえ、戻ってきたのはロバート。浮かない表情ではあるものの、それを見せまいと必死に取り繕っている様子が窺える。
「お待たせしました九条様。慌ただしくて申し訳ない。……やれやれ、こんな時ばかりやる気を出されても……」
ぼそりと呟かれた独り言。……にしては少々声は大きい。
「何かあったんですか?」
「いえ、職員同士で九条様の取り合いをしていて……」
「取り合い? 担当の変更はしないと……」
「いえ、それは存じております。今後一切ミアを九条様の担当から外す事はないでしょう。ですが、若い職員達はそれでも希望を持っているようでして、九条様が担当する今回の仕事の事務処理をしたいと……。恐らくはその過程で親睦を深めようと……」
「なるほど。若気の至り……ですかね」
「血気盛んなのは結構ですが、それをいつもの業務でも発揮してくれれば……」
悩む中間管理職といったところか。苦悩というほどでもないが、思い通りにならない部下の手綱を握るのも大変そうである。
まぁ自分で言うのもなんだが、職員達の気持ちもわかる。バイスが前に言っていたパワーレベリングの事だろう。
俺の担当になれば、ゴールドプレートは確実だ。ミアとニーナがそうであったように、自分に白羽の矢が立てば一発逆転大出世である。
それに希望を抱いても仕方のないこと。ミアの担当は揺るがないが、ノルディックのように担当を2人以上取るかもしれない可能性は、ゼロではない。
「最近ではコット村への異動願いを出す職員も出る始末なんですよ。無駄だと言っているのに……」
「なんかすいません……」
「いえいえ、九条様の所為ではないですのでお気になさらず。とは言え、コット村も大分冒険者が増えてきましたので、冒険者側が担当を選択する制度は廃止にしようと思っているんですよ」
「それは困る!」
動揺を隠せず上擦る声。それに目を丸くしたロバートは不思議そうな顔を向けた。
「……え? ミア以外に担当を付けるお考えで? 九条様でしたら、そのような制度を使わずとも……」
「いや、そうではなく……」
せめて、シャロンの異動が終わるまでは待ってくれないと困る。冒険者が担当を選べるからコット村へ異動するのであって、それがなければ詰んだも同然。正直に話すべきか、それとも……。
「えっと……九条様の理由はわかりかねますが、何も今すぐという訳では……」
「その制度が廃止されるのは、どれくらいですか?」
「そうですね……。制度の変更には48日間の猶予を設けなければならないという規則がありますので、恐らく2ヵ月後には……」
ギリギリだ。ブラムエストとコット村の往復で2ヵ月。仕事が終われば即異動という訳でもない。もう少し余裕が欲しいところではある。
「主。私達が馬車を引けば、かなりの時間短縮になりますが?」
カガリの提案に俺は無言で首を振った。前回のダンジョン調査でワダツミとコクセイに馬車を引いてもらったことはあるが、あれは最終手段だ。
ノルディックが信用しきれず、ミアの為にも短時間で依頼をこなさねばならなかったからこそである。
スキンシップとして乗る程度ならまだしも、重い荷物を何日も引かせるなんて出来るわけがない。
出来るか出来ないかではなく、させたくないのだ。従魔達は労働力ではないのだから。
「もう少し……。その……執行されるまでの期間を延ばすことは出来ませんか?」
「九条様の頼みですので出来れば譲歩させていただきたいのですが、すでに上には報告済みでして、それなりの理由がなければ……」
それがパッと思いつけば苦労はしない。頼んでいるのはこちら側。これ以上は強くは言えない。
顎に手を当て悩んでいる俺を見ていたロバートは、おどおどと目を泳がせながらも声をひそめた。
「九条様。ここは1つ取引といきませんか?」
「取引?」
「はい。実は1つ急ぎの仕事がございまして……」
流石にそこまで言われれば理解出来る。だが、受けるかどうかは内容次第だ。
「……内容は?」
「場所は同じブラムエストでございます。死霊術師限定のもので……」
「ああ。あれか……」
それはミアが最初に勧めてくれた依頼であった。
「俺がそれを受けたとして、2ヵ月が……?」
「そうですね。半年ほどでどうでしょう?」
背に腹は代えられない。
「よし、その取引に応じましょう」
「ありがとうございます。では依頼書をお持ち致しますので少々お待ちくださいませ」
部屋を出て行くロバートを見て、溜息をつく。余計な仕事が増えてしまったが、急ぐ必要がなくなったのはありがたい。
シャーリーとシャロンには後で説明するとして……。
「ミア……」
隣で座るミアは案の定むくれていた。恐らくは1度断った仕事を受けてしまったからだろう。
ならば、最初から自分の案を採用すればよかったのにと思っているに違いない。
「おにーちゃん。何でも言う事を聞く権利は失効しないからね?」
そっちだったか……。
「ああ。わかってるよ……」
引きつった笑いを浮かべながらも、口をへの字に曲げるミアの頭を強めに撫でると、それは元の優しい笑顔へと戻ったのだった。
まず目指すのは王都スタッグ。ギルドで正式に依頼を受注せねばならない為だ。
つまらない馬車の旅だが、俺には心強い仲間達がいる。ミアに4匹の従魔達。途中からはシャーリーとシャロンをもお迎えしての長旅である。
ミアはそれに心躍らせているが、俺はというとそうでもないのが現状である。
旅は嫌いじゃない。初めて見る景色は新鮮で、子供の頃のような冒険心を思い出させてくれる。しかし、それはあくまで遊びの延長線である場合に限り、仕事ともなるとその喜びも半減だ。
「お邪魔しまーす」
「失礼します」
「いらっしゃーい」
街道のど真ん中で、シャーリーとシャロンを拾う。それというのも、俺がベルモントギルドの支部長であるノーマンと顔を合わせるのを避ける為。
2人は、俺の仕事のお手伝いとしてパーティを組むことになっている。しかしそれは表向きで、ノーマンには俺の説得の為ついて行くということにしているのだ。
2人の説得があればこそ俺が謝罪を受け入れるという流れにすれば、ノーマンは2人を快く送り出すであろうと踏んだのである。
「九条がめちゃめちゃ怒ってるって言った時のノーマンの顔は見ものだったわ」
それを思い出すかのようにケタケタと笑うシャーリーに、少し遠慮がちながらも頬を緩めるシャロン。
出来れば俺も見たかったが、それは仕事が終わってからのお楽しみだ。
「ん? シャーリーは適性の再検査をしなかったのか?」
胸元で揺れているのは、くすんだシルバープレートのまま。
「ええ。最後の最後に検査を受けて、喜ぶノーマンの顔を見てからホームの変更を伝えようと思って」
「悪魔か……」
「悪魔とは失礼ね。シャロンと私を引き離そうとした罰よ。これくらいで済むなら感謝してほしいくらいだわ」
ノーマンの絶望する顔が目に浮かぶようである……。
馬車がスタッグギルドへと辿り着くと、俺とミアとカガリ以外は馬車の中でお留守番だ。
出迎えてくれたのは支部長であるロバート。満面の笑みを浮かべているのは、俺が依頼を受けにくると事前に知っているからである。
「ようこそおいで下さいました。ささ、どうぞこちらへ」
姿を現した俺に、ざわつきを見せるギルド内にも慣れたもの。そんな視線に晒されながらも案内された応接室で、受ける依頼の最終確認をしてもらう。
「依頼内容はこちらで間違いはありませんでしょうか?」
「ええ。問題ありません」
「ありがとうございます。ギルドとしても大変助かります」
「ダンジョンは大型かもしれないというのは本当ですか?」
「はい。恐らくは50層前後かと……。パーティメンバーはブラムエストの方でお集めになられるのですか? 募集要項が決まっているのでしたら事前にあちらに連絡を入れて先行募集を出しておきますが?」
「いえ、パーティメンバーは決まっています。ベルモントでダンジョンを専門としているレンジャーのシャーリーと、その担当を連れていく予定です」
「そうでしたか。失礼致しました。では、こちらのチェックリストから必要な物を必要数書き入れていただきますでしょうか? その間、私も仕事が御座いますので、少々失礼させていただきます」
差し出されたチェックリストを受け取ると、そそくさと部屋を後にするロバート。
俺がバイス達と最初にパーティを組むことになった日。シャーリーがこれを見てテキパキと作戦会議を進めていたのを思い出す。
あの時は確か、どちらも疑心暗鬼で仲間と呼べるようなものではなかった。俺はネストに目をつけられていて、気が気ではなかったのを今でも覚えている。
少しでも歯車が狂えば、どちらかが死んでいてもおかしくはなかった状況。それが今では、最も信頼出来る仲間と呼べる間柄だ。
「諸法無我とは良く言ったものだ……」
「何か言った? おにーちゃん」
「いや、なんでもない……」
それは仏教用語で繋がることによる変化を表す言葉だ。あらゆるものは何かしらと繋がっていて、お互いが影響を及ぼし合う因果関係により成り立っているということ。
独立しているものなど、この世には存在しないという真理でもある。
過去の出会いを思い出し、物思いに耽りながらもチェックリストに目を通す。
と言っても、特に必要な物もない。強いてあげるなら、念の為に帰還水晶を常備しておきたいと思うくらいだ。
バックパックにランタン。その燃料に寝袋やテント。基本的には全てコット村で準備して来ている物で事足りる。
シャーリーやシャロンも自分の物を持って来ているのだ。その辺りは抜かりなく、食料は途中寄る街で買い足していけばいいだろう。
特に頼む物もないなと思いながらも、それに目を通していると、あるはずの物がそこにはなかった。
注意深く丁寧に読み返し、ようやく見つけたそれは最後の最後に書かれていたのだ。
マナポーションである。それには上から射線が引かれていた。
「ミア。これは在庫がないって認識で間違いないか?」
「うん。マナポーション遂になくなっちゃったんだね。結構前からギリギリだったから。でもおにーちゃんなら言えば出してくれるかも。緊急時の為に予備を隠してるかもよ?」
「いや、なければいいんだ。気になっただけだから……」
扉をノックする音が聞こえ、戻ってきたのはロバート。浮かない表情ではあるものの、それを見せまいと必死に取り繕っている様子が窺える。
「お待たせしました九条様。慌ただしくて申し訳ない。……やれやれ、こんな時ばかりやる気を出されても……」
ぼそりと呟かれた独り言。……にしては少々声は大きい。
「何かあったんですか?」
「いえ、職員同士で九条様の取り合いをしていて……」
「取り合い? 担当の変更はしないと……」
「いえ、それは存じております。今後一切ミアを九条様の担当から外す事はないでしょう。ですが、若い職員達はそれでも希望を持っているようでして、九条様が担当する今回の仕事の事務処理をしたいと……。恐らくはその過程で親睦を深めようと……」
「なるほど。若気の至り……ですかね」
「血気盛んなのは結構ですが、それをいつもの業務でも発揮してくれれば……」
悩む中間管理職といったところか。苦悩というほどでもないが、思い通りにならない部下の手綱を握るのも大変そうである。
まぁ自分で言うのもなんだが、職員達の気持ちもわかる。バイスが前に言っていたパワーレベリングの事だろう。
俺の担当になれば、ゴールドプレートは確実だ。ミアとニーナがそうであったように、自分に白羽の矢が立てば一発逆転大出世である。
それに希望を抱いても仕方のないこと。ミアの担当は揺るがないが、ノルディックのように担当を2人以上取るかもしれない可能性は、ゼロではない。
「最近ではコット村への異動願いを出す職員も出る始末なんですよ。無駄だと言っているのに……」
「なんかすいません……」
「いえいえ、九条様の所為ではないですのでお気になさらず。とは言え、コット村も大分冒険者が増えてきましたので、冒険者側が担当を選択する制度は廃止にしようと思っているんですよ」
「それは困る!」
動揺を隠せず上擦る声。それに目を丸くしたロバートは不思議そうな顔を向けた。
「……え? ミア以外に担当を付けるお考えで? 九条様でしたら、そのような制度を使わずとも……」
「いや、そうではなく……」
せめて、シャロンの異動が終わるまでは待ってくれないと困る。冒険者が担当を選べるからコット村へ異動するのであって、それがなければ詰んだも同然。正直に話すべきか、それとも……。
「えっと……九条様の理由はわかりかねますが、何も今すぐという訳では……」
「その制度が廃止されるのは、どれくらいですか?」
「そうですね……。制度の変更には48日間の猶予を設けなければならないという規則がありますので、恐らく2ヵ月後には……」
ギリギリだ。ブラムエストとコット村の往復で2ヵ月。仕事が終われば即異動という訳でもない。もう少し余裕が欲しいところではある。
「主。私達が馬車を引けば、かなりの時間短縮になりますが?」
カガリの提案に俺は無言で首を振った。前回のダンジョン調査でワダツミとコクセイに馬車を引いてもらったことはあるが、あれは最終手段だ。
ノルディックが信用しきれず、ミアの為にも短時間で依頼をこなさねばならなかったからこそである。
スキンシップとして乗る程度ならまだしも、重い荷物を何日も引かせるなんて出来るわけがない。
出来るか出来ないかではなく、させたくないのだ。従魔達は労働力ではないのだから。
「もう少し……。その……執行されるまでの期間を延ばすことは出来ませんか?」
「九条様の頼みですので出来れば譲歩させていただきたいのですが、すでに上には報告済みでして、それなりの理由がなければ……」
それがパッと思いつけば苦労はしない。頼んでいるのはこちら側。これ以上は強くは言えない。
顎に手を当て悩んでいる俺を見ていたロバートは、おどおどと目を泳がせながらも声をひそめた。
「九条様。ここは1つ取引といきませんか?」
「取引?」
「はい。実は1つ急ぎの仕事がございまして……」
流石にそこまで言われれば理解出来る。だが、受けるかどうかは内容次第だ。
「……内容は?」
「場所は同じブラムエストでございます。死霊術師限定のもので……」
「ああ。あれか……」
それはミアが最初に勧めてくれた依頼であった。
「俺がそれを受けたとして、2ヵ月が……?」
「そうですね。半年ほどでどうでしょう?」
背に腹は代えられない。
「よし、その取引に応じましょう」
「ありがとうございます。では依頼書をお持ち致しますので少々お待ちくださいませ」
部屋を出て行くロバートを見て、溜息をつく。余計な仕事が増えてしまったが、急ぐ必要がなくなったのはありがたい。
シャーリーとシャロンには後で説明するとして……。
「ミア……」
隣で座るミアは案の定むくれていた。恐らくは1度断った仕事を受けてしまったからだろう。
ならば、最初から自分の案を採用すればよかったのにと思っているに違いない。
「おにーちゃん。何でも言う事を聞く権利は失効しないからね?」
そっちだったか……。
「ああ。わかってるよ……」
引きつった笑いを浮かべながらも、口をへの字に曲げるミアの頭を強めに撫でると、それは元の優しい笑顔へと戻ったのだった。
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