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第197話 シャーリーとフィリップ
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「焼き魚定食、おまちどーさま!」
食堂の給仕が威勢よく声を上げると、目の前に置かれたそれに思わず喉が鳴る。
ここはベルモントでも特にリーズナブルでおいしいと評判のいい『ファンテーブル』という名前の食堂兼飲み屋。
ギルドから3軒隣という立地の良さから、冒険者達の憩いの場とも言える場所だ。
その分、強面が集まることでも有名であり、地元の客はあまり来店してこないのが店主の悩みの種らしい。
とは言え、その冒険者達のおかげで売り上げは上々。一般的には成功しているホットな店と言って差し支えない。
そんな騒がしい店内の一画で、舌鼓を打っているのはシルバープレート冒険者のシャーリー。
白身魚の骨と身を綺麗に取り分けると、それを備え付けのソースに付けて口いっぱいに頬張る。
「ここでも美味しい魚料理が食べれるのは、何と言っても九条のおかげよね」
グリムロック側の大規模討伐隊は、サハギン達に敗北したということになっていた。
勇敢に戦い抜いたにもかかわらず、後一歩及ばなかった……というのが公式の見解だ。
だが、シャーリーは知っている。彼らはサハギン達に負けたのではなく、幽霊船から尻尾を巻いて逃げ出したのだ。
それをそのまま報告すれば、自分達の沽券に関わると思った為、サハギンに負けたということにしたのだろう。彼らは誰にも見られていないと思っているのだ。
そして、それを退治したのが九条である。退治したというのには少々語弊があるが、それは若干ではあるもののいい方向に進んでいた。
ギルドの討伐部隊でも手に負えなかったサハギン達を、僅か数人のパーティーで殲滅し、海に平和をもたらした。
流石に全ての人が九条に対する考え方を改めたとは言いにくいが、グリムロックからの物流を扱う商人や船乗りの評価が上がらないわけがない。
それは時折流れてくる、『ノルディックの方が九条にちょっかいをかけたんじゃないか説』を、より信憑性の高いものへと変えていたのだ。
この街は一度九条に救われている。それは間接的ではあるものの、その評価を再認識するには十分な手柄であった。
「んー、おいしぃー」
その味にご満悦のシャーリー。やはり一仕事終えた後の食事は格別だ。と言っても、最近はギルドでの仕事よりも自分の鍛錬を優先的に行っていた。
それもこれも九条のおかげ。ワーム討伐で得た潤沢な資金。それを使わずとも手に入れることが出来た最高の武器。
後はそれに負けない実力を身につけられれば完璧だ。宝の持ち腐れにならない為にも。そして九条の隣に並び立つ為にもである。
武器を買う資金がまるまる余ったが故に、鍛錬にあてがう時間が出来た。
たまに引き受ける仕事は、その成果を試す機会なのだ。それを終えたのがつい先程のことである。
夕飯の後は自宅へと戻り、お風呂にでも入ってゆっくりしよう。そう思っていた矢先のことだった。
食堂に響き渡る給仕の声。
「いらっしゃい!」
店内へと入って来た1人の冒険者は、入口付近でキョロキョロと空いてる席を探すそぶりを見せる。
その男がシャーリーの存在に気が付くと、空いている席に脇目も振らず、代わりに手を振り近づいて行く。
「よぉ、シャーリー。久しぶりだな」
「フィリップも。元気そうで何よりね」
気さくに声をかけてきたのは短髪が似合う好青年。軽さ重視のハーフプレートの鎧に細めのショートソード。必要最低限の装備を携えたラフな恰好の冒険者。
胸に輝くプレートはゴールドである。
「相席しても?」
「ええ。構わないわよ? と言っても、もう食べ終わっちゃうけど」
そこに近寄って来たのは給仕の女性。
「ご注文は?」
「えーっと。日替わり定食1つと酒を2つ」
「かしこまりました」
まるで決まっているかのようなスピーディーな注文を聞いた給仕は、そそくさと厨房へと姿を消した。
「ちょっと! もう食べ終わるって言ってるでしょ?」
「いいじゃねーか。久しぶりに会ったんだし。酒の1杯くらい奢らせろよ」
無理に席を立つことも出来たシャーリーであったが、そうしなかったのは少々後ろめたさがあったからだ。
少し前まで、フィリップとはペアとして活動していた。といっても冒険者としてであり、プライベートはまた別である。
きっかけはフィリップがギルドでレンジャーを募集していたのが始まりだった。
なんて事はない低層ダンジョンの狩りだったが、組んでみて相性がよければそのままペアとして活動することは、冒険者の間では普通の事。
ここベルモントではそこそこ有名なペアではあったが、それは突然の終わりを迎えた。
金の鬣の討伐でフィリップが緊急招集され、結果それは失敗に終わり、その悔しさからか消沈するフィリップは、冒険者活動に消極的になった。
とは言え、冒険者は依頼をこなさなければ食べてはいけない。いずれは復活するだろうとシャーリーは静観し、そのまま自然と疎遠になってしまったのだ。
「シャーリーは最近、羽振りがよさそうだな」
清々しい笑顔のフィリップだが、視線の先にあるのはシャーリーの隣に立て掛けてある目新しい弓。
自分専用にカスタマイズされた武器。その輝きはそんじょそこらの武器屋に置いてある物とはわけが違う特注品。当然目立つ。
「見せてもらっても?」
「ええ。いいわよ? 値が張るんだから壊さないでよね?」
フィリップは鍛冶屋の息子でもある。武器の扱いに関してはエキスパート。ペアを組んでいた時は、武器のメンテナンスも進んでやってくれていた。
「ミスリルかぁ。見た感じフルスクラッチみたいだし、結構高かっただろ?」
「バルガス工房製よ?」
「マジかよ! あのくっそたけぇ所の特注って……」
「まぁ、直前に大物が狩れたからね」
九条のおかげで……とは言えなかった。九条の秘密を守る為という意味もあったが、フィリップを見捨てて九条に付いたと思われるのが癪だったのだ。
とは言え、そう考える者も冒険者の中には少なからず存在する。もちろんシャーリーは、そんなつもりで九条に取り入った訳ではないのだが、フィリップ本人の前では、多少の気まずさも感じていた。
「その大物なんだが、灰の蠕虫とかって古代種なんだってな」
「ええ。そうみたいね。一応ギルドの調査報告は聞いてるわ。それがどうしたの?」
「いや、俺達が相手したキマイラの亜種みたいなやつも金の鬣とかっていう古代種だったらしいから気になってさ」
「金の鬣ってのは見たことないけど、私達が戦ったのは、すっごい硬い外殻に覆われてるワームって感じだったかな。ビックリするくらいタフで、岩を吐き出すのが厄介だったわ」
「へぇ……。でもそれを4人で狩っちまうんだから、九条ってばホントすげぇ奴だったんだなぁ……」
「そうね」
フィリップの話に当たり障りなく合わせる。こういう雑談はフィリップらしいと言えばらしい。
仕事の話を持ってくる時の前振りとでも言うべきか、その懐かしさにシャーリーの頬が緩んだ。
故に今回もそうなのだろうと推測し、それを断ろうとも考えていた。
(今は自分の鍛錬で精一杯なのよね……)
フィリップを捨てたという噂の払拭の為にも一度くらいは一緒に仕事をしても良かったのだが、それは今すぐじゃなくてもいいはずだ。
「そういえば九条は元気か? 久しぶりに会って酒でも飲みてぇなぁ」
「うーん。多分元気なんじゃない? グリムロックから帰って来てからは会ってないからわからないけど……。村にはいると思うわよ? そんなに会いたいなら会って来ればいいじゃない」
「いやぁ、俺はシャーリーと違って炭鉱の道案内の時しか一緒じゃなかったし、忘れられてたらショックじゃん?」
「まさか。そんなことないでしょ?」
「わからないぞ? 九条はもうカッパーじゃねぇからな。俺からしたら雲の上に行っちまったって感じだし」
「言い過ぎよ。それを言っちゃ私なんてフィリップより下のシルバーよ? それでも相手にしてくれるんだから、ゴールドのフィリップを忘れるって事はないでしょ?」
「だといいんだがな……」
シャーリー的には、九条の話題は避けたかった。もちろん秘密は喋らないよう気を張っている。ボロなんか出さない。だが、話題を変えた方がいいのは確かだ。
「それより、フィリップは最近どうなの?」
「シャーリーほどじゃないがボチボチだよ。最近もデカイ仕事が入ったんだ」
「へぇ。そっちも景気いいんだ?」
「この時期恒例のアレに個人的に声を掛けてもらったからな」
「アレって……。魔法学院の試験官? 今年の会場はこの辺りなの?」
「ああ。デカイ声じゃ言えないが、九条所有のダンジョンがその内の1つらしい」
「ふーん……」
奢りの酒を煽りつつ、興味がなさそうに装うシャーリー。
(九条があのダンジョンを解放するはずがない。フィリップの情報が間違ってるんじゃないの……?)
あのダンジョンにいるデュラハンは、魔法学院の生徒が束になっても勝てる相手ではない。全員が例外なく細切れになるだろう。
トラッキングの範囲に入っただけでも足が竦むほどの恐怖。あれと真正面からやり合おうとする者は、ただの自殺志願者だ。
「で、ここからが本題なんだが、シャーリーもその仕事、手伝う気はないか?」
「でも、魔法学院の試験官って前衛職のみの募集でしょ? 優遇されるのはタンクだって聞いてるけど」
「そうなんだが、シャーリーにしか出来ない事なんだ。報酬は金貨500枚……どうだ?」
「500枚!?」
さすがに多すぎる。プラチナプレート冒険者の報酬レベルの額か、それ以上だ。
フィリップの事を信用していない訳じゃないが、そこまでくると逆に怪しいと思わせるほどの報酬額。
(どんだけ危ない仕事なのよ……)
とは言え、シャーリーは警戒していることを悟られないように、顎に手を当て悩むそぶりを見せた。
ここで即断しても良かったのだが、それはそれで九条とのことを探られるような気がして、ひとまず話だけでも聞いてから、やんわりとお断りしようと推し測っていたのだ。
食堂の給仕が威勢よく声を上げると、目の前に置かれたそれに思わず喉が鳴る。
ここはベルモントでも特にリーズナブルでおいしいと評判のいい『ファンテーブル』という名前の食堂兼飲み屋。
ギルドから3軒隣という立地の良さから、冒険者達の憩いの場とも言える場所だ。
その分、強面が集まることでも有名であり、地元の客はあまり来店してこないのが店主の悩みの種らしい。
とは言え、その冒険者達のおかげで売り上げは上々。一般的には成功しているホットな店と言って差し支えない。
そんな騒がしい店内の一画で、舌鼓を打っているのはシルバープレート冒険者のシャーリー。
白身魚の骨と身を綺麗に取り分けると、それを備え付けのソースに付けて口いっぱいに頬張る。
「ここでも美味しい魚料理が食べれるのは、何と言っても九条のおかげよね」
グリムロック側の大規模討伐隊は、サハギン達に敗北したということになっていた。
勇敢に戦い抜いたにもかかわらず、後一歩及ばなかった……というのが公式の見解だ。
だが、シャーリーは知っている。彼らはサハギン達に負けたのではなく、幽霊船から尻尾を巻いて逃げ出したのだ。
それをそのまま報告すれば、自分達の沽券に関わると思った為、サハギンに負けたということにしたのだろう。彼らは誰にも見られていないと思っているのだ。
そして、それを退治したのが九条である。退治したというのには少々語弊があるが、それは若干ではあるもののいい方向に進んでいた。
ギルドの討伐部隊でも手に負えなかったサハギン達を、僅か数人のパーティーで殲滅し、海に平和をもたらした。
流石に全ての人が九条に対する考え方を改めたとは言いにくいが、グリムロックからの物流を扱う商人や船乗りの評価が上がらないわけがない。
それは時折流れてくる、『ノルディックの方が九条にちょっかいをかけたんじゃないか説』を、より信憑性の高いものへと変えていたのだ。
この街は一度九条に救われている。それは間接的ではあるものの、その評価を再認識するには十分な手柄であった。
「んー、おいしぃー」
その味にご満悦のシャーリー。やはり一仕事終えた後の食事は格別だ。と言っても、最近はギルドでの仕事よりも自分の鍛錬を優先的に行っていた。
それもこれも九条のおかげ。ワーム討伐で得た潤沢な資金。それを使わずとも手に入れることが出来た最高の武器。
後はそれに負けない実力を身につけられれば完璧だ。宝の持ち腐れにならない為にも。そして九条の隣に並び立つ為にもである。
武器を買う資金がまるまる余ったが故に、鍛錬にあてがう時間が出来た。
たまに引き受ける仕事は、その成果を試す機会なのだ。それを終えたのがつい先程のことである。
夕飯の後は自宅へと戻り、お風呂にでも入ってゆっくりしよう。そう思っていた矢先のことだった。
食堂に響き渡る給仕の声。
「いらっしゃい!」
店内へと入って来た1人の冒険者は、入口付近でキョロキョロと空いてる席を探すそぶりを見せる。
その男がシャーリーの存在に気が付くと、空いている席に脇目も振らず、代わりに手を振り近づいて行く。
「よぉ、シャーリー。久しぶりだな」
「フィリップも。元気そうで何よりね」
気さくに声をかけてきたのは短髪が似合う好青年。軽さ重視のハーフプレートの鎧に細めのショートソード。必要最低限の装備を携えたラフな恰好の冒険者。
胸に輝くプレートはゴールドである。
「相席しても?」
「ええ。構わないわよ? と言っても、もう食べ終わっちゃうけど」
そこに近寄って来たのは給仕の女性。
「ご注文は?」
「えーっと。日替わり定食1つと酒を2つ」
「かしこまりました」
まるで決まっているかのようなスピーディーな注文を聞いた給仕は、そそくさと厨房へと姿を消した。
「ちょっと! もう食べ終わるって言ってるでしょ?」
「いいじゃねーか。久しぶりに会ったんだし。酒の1杯くらい奢らせろよ」
無理に席を立つことも出来たシャーリーであったが、そうしなかったのは少々後ろめたさがあったからだ。
少し前まで、フィリップとはペアとして活動していた。といっても冒険者としてであり、プライベートはまた別である。
きっかけはフィリップがギルドでレンジャーを募集していたのが始まりだった。
なんて事はない低層ダンジョンの狩りだったが、組んでみて相性がよければそのままペアとして活動することは、冒険者の間では普通の事。
ここベルモントではそこそこ有名なペアではあったが、それは突然の終わりを迎えた。
金の鬣の討伐でフィリップが緊急招集され、結果それは失敗に終わり、その悔しさからか消沈するフィリップは、冒険者活動に消極的になった。
とは言え、冒険者は依頼をこなさなければ食べてはいけない。いずれは復活するだろうとシャーリーは静観し、そのまま自然と疎遠になってしまったのだ。
「シャーリーは最近、羽振りがよさそうだな」
清々しい笑顔のフィリップだが、視線の先にあるのはシャーリーの隣に立て掛けてある目新しい弓。
自分専用にカスタマイズされた武器。その輝きはそんじょそこらの武器屋に置いてある物とはわけが違う特注品。当然目立つ。
「見せてもらっても?」
「ええ。いいわよ? 値が張るんだから壊さないでよね?」
フィリップは鍛冶屋の息子でもある。武器の扱いに関してはエキスパート。ペアを組んでいた時は、武器のメンテナンスも進んでやってくれていた。
「ミスリルかぁ。見た感じフルスクラッチみたいだし、結構高かっただろ?」
「バルガス工房製よ?」
「マジかよ! あのくっそたけぇ所の特注って……」
「まぁ、直前に大物が狩れたからね」
九条のおかげで……とは言えなかった。九条の秘密を守る為という意味もあったが、フィリップを見捨てて九条に付いたと思われるのが癪だったのだ。
とは言え、そう考える者も冒険者の中には少なからず存在する。もちろんシャーリーは、そんなつもりで九条に取り入った訳ではないのだが、フィリップ本人の前では、多少の気まずさも感じていた。
「その大物なんだが、灰の蠕虫とかって古代種なんだってな」
「ええ。そうみたいね。一応ギルドの調査報告は聞いてるわ。それがどうしたの?」
「いや、俺達が相手したキマイラの亜種みたいなやつも金の鬣とかっていう古代種だったらしいから気になってさ」
「金の鬣ってのは見たことないけど、私達が戦ったのは、すっごい硬い外殻に覆われてるワームって感じだったかな。ビックリするくらいタフで、岩を吐き出すのが厄介だったわ」
「へぇ……。でもそれを4人で狩っちまうんだから、九条ってばホントすげぇ奴だったんだなぁ……」
「そうね」
フィリップの話に当たり障りなく合わせる。こういう雑談はフィリップらしいと言えばらしい。
仕事の話を持ってくる時の前振りとでも言うべきか、その懐かしさにシャーリーの頬が緩んだ。
故に今回もそうなのだろうと推測し、それを断ろうとも考えていた。
(今は自分の鍛錬で精一杯なのよね……)
フィリップを捨てたという噂の払拭の為にも一度くらいは一緒に仕事をしても良かったのだが、それは今すぐじゃなくてもいいはずだ。
「そういえば九条は元気か? 久しぶりに会って酒でも飲みてぇなぁ」
「うーん。多分元気なんじゃない? グリムロックから帰って来てからは会ってないからわからないけど……。村にはいると思うわよ? そんなに会いたいなら会って来ればいいじゃない」
「いやぁ、俺はシャーリーと違って炭鉱の道案内の時しか一緒じゃなかったし、忘れられてたらショックじゃん?」
「まさか。そんなことないでしょ?」
「わからないぞ? 九条はもうカッパーじゃねぇからな。俺からしたら雲の上に行っちまったって感じだし」
「言い過ぎよ。それを言っちゃ私なんてフィリップより下のシルバーよ? それでも相手にしてくれるんだから、ゴールドのフィリップを忘れるって事はないでしょ?」
「だといいんだがな……」
シャーリー的には、九条の話題は避けたかった。もちろん秘密は喋らないよう気を張っている。ボロなんか出さない。だが、話題を変えた方がいいのは確かだ。
「それより、フィリップは最近どうなの?」
「シャーリーほどじゃないがボチボチだよ。最近もデカイ仕事が入ったんだ」
「へぇ。そっちも景気いいんだ?」
「この時期恒例のアレに個人的に声を掛けてもらったからな」
「アレって……。魔法学院の試験官? 今年の会場はこの辺りなの?」
「ああ。デカイ声じゃ言えないが、九条所有のダンジョンがその内の1つらしい」
「ふーん……」
奢りの酒を煽りつつ、興味がなさそうに装うシャーリー。
(九条があのダンジョンを解放するはずがない。フィリップの情報が間違ってるんじゃないの……?)
あのダンジョンにいるデュラハンは、魔法学院の生徒が束になっても勝てる相手ではない。全員が例外なく細切れになるだろう。
トラッキングの範囲に入っただけでも足が竦むほどの恐怖。あれと真正面からやり合おうとする者は、ただの自殺志願者だ。
「で、ここからが本題なんだが、シャーリーもその仕事、手伝う気はないか?」
「でも、魔法学院の試験官って前衛職のみの募集でしょ? 優遇されるのはタンクだって聞いてるけど」
「そうなんだが、シャーリーにしか出来ない事なんだ。報酬は金貨500枚……どうだ?」
「500枚!?」
さすがに多すぎる。プラチナプレート冒険者の報酬レベルの額か、それ以上だ。
フィリップの事を信用していない訳じゃないが、そこまでくると逆に怪しいと思わせるほどの報酬額。
(どんだけ危ない仕事なのよ……)
とは言え、シャーリーは警戒していることを悟られないように、顎に手を当て悩むそぶりを見せた。
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