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本編
17.旦那さまの懺悔
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※アリス視点
※直接的単語にご注意下さい
はっきり言って、ショックでした。
私、臭いのかしら。
毎日お風呂は使っているし、髪も身体も洗っている。これで匂うのだとしたら、ちゃんと仕事をしている侍女のせいではなく、私自身が匂うという事でしょう。
……今までにないくらい、落ち込みました。いつもは一晩寝てしまえば、快復するのです。くよくよしたって、世の中どうにもならない事の方が多いのですから。でも、私自身が臭いなんて、どうしたらいいのでしょうか。今までその指摘をされた事がないのは、皆さん、お優しいからでしょうか。それともハンナ達には解らない匂いなのでしょうか。天蓋のカーテンをびっしりと閉め切り立て籠ったベッドの上で、どう解決したらいいのかとぐるぐる悩んでいたら、ピアの声がしました。旦那さまが私とお話をしたいのだそうです。
「旦那様は、そのまま、天蓋越しでお話したいと」
天蓋越し………このまま顔を合わせない状態の方が冷静に話せるかもしれません。私は了承しました。
暫くすると、扉をノックする音がしました。
「奥様、旦那様がいらっしゃいました」
と、ハンナの声。
お通しして貰いました。ハンナたち侍女の気配が遠ざかり、代わりに天蓋のカーテンの向こう側に大きく温かい人の気配がしました。
「─── アリス、」
お声が、私の名を、呼んでくれました。
とても良いお声が耳にすっと入ってきました。耳から全身にその音が駆け巡ったかのようで、びっくりしました。─── 震えました。
私、わたし……、なまえを呼んで貰えて、びっくりするくらい、嬉しかった、のです……
…なまえを呼んで頂いただけで、こんなにも嬉しくなるなんて、全然、思っていませんでした……
「─── アリス、本当に、済まなかった……」
旦那さまのお声、ぞくぞくするのですが……
ところで、お声が低い位置から聞こえますが、もしかして床に座っているのでしょうか。まさかと思いますが、あのフ〇コロガ…いえ、土下座の姿勢でいるのでしょうか。床から声が反響している訳ではなさそうなので、床に座っているだけですよね、そうですよね。
「─── アリス、俺の話を、聞いてくれるか? あぁ、そのままで、出来れば顔が見えない方が、俺が、緊張しないで、済む、から…頼む」
旦那さまが、ポツポツとお話してくれます。
19歳の時、初めて王都へ行ったこと。
王宮で女性たちの香水に辟易したこと。
今思えば、身体強化していたせいかもしれないが、それはとても辛かったこと。
「だから、元々、俺は女の匂いが嫌いで……主に人工的な香水の匂いが、俺としては、受け入れられない、ということだと、思う…アリスからは、人工的な嫌な匂いはしない……花の匂い、だけだから、大丈夫…むしろ、その花の向こうに、お前本来の香りが、とても…よい、と俺は思う」
本当でしょうか。私、臭くないのかしら。
旦那さまは、どんな顔でこんな事言っているのでしょう。少しくらいなら、天蓋を開けて見てもいいかしら。
「アリスの匂いを、嗅いで…その、初めて…勃起した」
え
カーテンに伸ばした手が止まりました。
「女性の体臭で、勃ったなんて、初めてで……どうしたらいいか、わからなくて……」
デリカシー! 旦那さまのデリカシー! どこに行ったのー! 行方不明? いいえ、もしかしたら、そもそもデリカシーを持ち合わせていないのかしらー?
「あの日、婚礼の日の夜の事だが……夫婦の部屋に入ったら、アリスの匂いが、部屋に満ちていて……痛いくらい勃起して……でも、その、愛の詩とか、俺には無理だって思って、俺は、半ば混乱状態に陥って……冷静になる為に部屋を出て、3発ほど抜いた」
赤裸々―――――!!!
旦那さま、歯に衣着せましょう! あぁ、それが出来ないのが旦那さまなのですね! そうですね、嘘がつけないお方。それが旦那さまなのです。だから、全てのお言葉がまっすぐで、飾らないからデリカシーもない。
はわわわっっっ落ち着きましょう、私!
「抜いて……ちょっと冷静になって……水も浴びて……思ったより時間が経っていたみたいで、アリスは、その、寝ていて……寝顔だけでも見たいと思って、近づいたら……その…余りの可愛らしさに、理性が死んだ」
えぇと……可愛いと言って貰えるのは嬉しい、です。が、その、死んじゃったんですか、理性……えぇと、つまり本能の人になってしまった、という事なのかしら。
「すごく……すごく、可愛くて……いい匂いするし、ちょっとだけ、見るだけ、ちょっとだけ、触れるだけ、ちょっとだけ……とずるずると、その……眠っている人間相手にすることではないと、今なら、冷静に判断できる……申し訳なかった……俺は……最低だ……」
聞いていて、居た堪れないというか、なんと言えばいいのかもわかりません……何故か涙目になってしまうのですが。
「全部は入らなかった。が、アリスの香りに包まれて、すごく、幸せな気持ちになって……あの時は、アリスの腹の上に出して…そのまま、抱きしめて、頭の匂い、嗅いでいたら、もう、とても、とても、嬉しくてうれしくて嬉しくて……
アリスを慮れなかった俺は、最低だと、思う……アリスの匂いばかり追っていたら、血の匂いに気が付くのが遅れて……本当に、済まなかった……」
旦那さま、いま、どんなお顔でいらっしゃるの?
何を思って告白……いいえ、懺悔ですね、懺悔をしたのですか?
……本当に、反省しているみたいです。だってさっきから、旦那さまが黙ってしまいましたもの。
……沈黙が、ちょっとだけ気まずいです……
「旦那さま……質問をしても、よろしいでしょうか?」
「─── ! あぁ、構わない」
「あの言葉の真意を、お聞きしても?」
ずっと、ずっと心の奥に引っかかっていました。
「あの、言葉?」
「『俺の愛は期待するな』という言葉です」
※直接的単語にご注意下さい
はっきり言って、ショックでした。
私、臭いのかしら。
毎日お風呂は使っているし、髪も身体も洗っている。これで匂うのだとしたら、ちゃんと仕事をしている侍女のせいではなく、私自身が匂うという事でしょう。
……今までにないくらい、落ち込みました。いつもは一晩寝てしまえば、快復するのです。くよくよしたって、世の中どうにもならない事の方が多いのですから。でも、私自身が臭いなんて、どうしたらいいのでしょうか。今までその指摘をされた事がないのは、皆さん、お優しいからでしょうか。それともハンナ達には解らない匂いなのでしょうか。天蓋のカーテンをびっしりと閉め切り立て籠ったベッドの上で、どう解決したらいいのかとぐるぐる悩んでいたら、ピアの声がしました。旦那さまが私とお話をしたいのだそうです。
「旦那様は、そのまま、天蓋越しでお話したいと」
天蓋越し………このまま顔を合わせない状態の方が冷静に話せるかもしれません。私は了承しました。
暫くすると、扉をノックする音がしました。
「奥様、旦那様がいらっしゃいました」
と、ハンナの声。
お通しして貰いました。ハンナたち侍女の気配が遠ざかり、代わりに天蓋のカーテンの向こう側に大きく温かい人の気配がしました。
「─── アリス、」
お声が、私の名を、呼んでくれました。
とても良いお声が耳にすっと入ってきました。耳から全身にその音が駆け巡ったかのようで、びっくりしました。─── 震えました。
私、わたし……、なまえを呼んで貰えて、びっくりするくらい、嬉しかった、のです……
…なまえを呼んで頂いただけで、こんなにも嬉しくなるなんて、全然、思っていませんでした……
「─── アリス、本当に、済まなかった……」
旦那さまのお声、ぞくぞくするのですが……
ところで、お声が低い位置から聞こえますが、もしかして床に座っているのでしょうか。まさかと思いますが、あのフ〇コロガ…いえ、土下座の姿勢でいるのでしょうか。床から声が反響している訳ではなさそうなので、床に座っているだけですよね、そうですよね。
「─── アリス、俺の話を、聞いてくれるか? あぁ、そのままで、出来れば顔が見えない方が、俺が、緊張しないで、済む、から…頼む」
旦那さまが、ポツポツとお話してくれます。
19歳の時、初めて王都へ行ったこと。
王宮で女性たちの香水に辟易したこと。
今思えば、身体強化していたせいかもしれないが、それはとても辛かったこと。
「だから、元々、俺は女の匂いが嫌いで……主に人工的な香水の匂いが、俺としては、受け入れられない、ということだと、思う…アリスからは、人工的な嫌な匂いはしない……花の匂い、だけだから、大丈夫…むしろ、その花の向こうに、お前本来の香りが、とても…よい、と俺は思う」
本当でしょうか。私、臭くないのかしら。
旦那さまは、どんな顔でこんな事言っているのでしょう。少しくらいなら、天蓋を開けて見てもいいかしら。
「アリスの匂いを、嗅いで…その、初めて…勃起した」
え
カーテンに伸ばした手が止まりました。
「女性の体臭で、勃ったなんて、初めてで……どうしたらいいか、わからなくて……」
デリカシー! 旦那さまのデリカシー! どこに行ったのー! 行方不明? いいえ、もしかしたら、そもそもデリカシーを持ち合わせていないのかしらー?
「あの日、婚礼の日の夜の事だが……夫婦の部屋に入ったら、アリスの匂いが、部屋に満ちていて……痛いくらい勃起して……でも、その、愛の詩とか、俺には無理だって思って、俺は、半ば混乱状態に陥って……冷静になる為に部屋を出て、3発ほど抜いた」
赤裸々―――――!!!
旦那さま、歯に衣着せましょう! あぁ、それが出来ないのが旦那さまなのですね! そうですね、嘘がつけないお方。それが旦那さまなのです。だから、全てのお言葉がまっすぐで、飾らないからデリカシーもない。
はわわわっっっ落ち着きましょう、私!
「抜いて……ちょっと冷静になって……水も浴びて……思ったより時間が経っていたみたいで、アリスは、その、寝ていて……寝顔だけでも見たいと思って、近づいたら……その…余りの可愛らしさに、理性が死んだ」
えぇと……可愛いと言って貰えるのは嬉しい、です。が、その、死んじゃったんですか、理性……えぇと、つまり本能の人になってしまった、という事なのかしら。
「すごく……すごく、可愛くて……いい匂いするし、ちょっとだけ、見るだけ、ちょっとだけ、触れるだけ、ちょっとだけ……とずるずると、その……眠っている人間相手にすることではないと、今なら、冷静に判断できる……申し訳なかった……俺は……最低だ……」
聞いていて、居た堪れないというか、なんと言えばいいのかもわかりません……何故か涙目になってしまうのですが。
「全部は入らなかった。が、アリスの香りに包まれて、すごく、幸せな気持ちになって……あの時は、アリスの腹の上に出して…そのまま、抱きしめて、頭の匂い、嗅いでいたら、もう、とても、とても、嬉しくてうれしくて嬉しくて……
アリスを慮れなかった俺は、最低だと、思う……アリスの匂いばかり追っていたら、血の匂いに気が付くのが遅れて……本当に、済まなかった……」
旦那さま、いま、どんなお顔でいらっしゃるの?
何を思って告白……いいえ、懺悔ですね、懺悔をしたのですか?
……本当に、反省しているみたいです。だってさっきから、旦那さまが黙ってしまいましたもの。
……沈黙が、ちょっとだけ気まずいです……
「旦那さま……質問をしても、よろしいでしょうか?」
「─── ! あぁ、構わない」
「あの言葉の真意を、お聞きしても?」
ずっと、ずっと心の奥に引っかかっていました。
「あの、言葉?」
「『俺の愛は期待するな』という言葉です」
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