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本編

17.フォーサイス共和国①

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「わがの記念すべき初代元首、我らがロベスピエール首相はここでフォーサイス公爵令嬢が書いた婚約者への手紙をゲットしたんだ! この時北の塔で入手した手紙の数々や、秘匿されていた書類がフォーサイス嬢の功績を証明した。
 彼女がもし生きていたら、どんな為政者になっただろう! 歴史に“もしも”は無いけど、考えるとワクワクするよな!」

「あー、ハイハイ。父さん“もしも”好きだもんねぇ。私も嫌いじゃないけど。で、これを元にして、ロベスピエールは本を書いたんだっけ?」

「そう! 彼の晩年に発表された著書『ロックハート最後の女王からの手紙』は当時の価値観や空気、はたまた世界情勢をも記された一級歴史資料だ! ロベスピエールは諸国を訪ね歩いてはフォーサイス嬢の書いた手紙を借り受けたり聞き取ったりし続けた。もはやライフワークに近い。
 面白いのはな、ナーガラージャ国のお姫様の日記にも残ってるんだ。“グレース様の執拗な狂信者に大切な手紙を強奪されそうになった”って」

「この公爵令嬢は筆まめな人だったんだね」

「あぁ、あちこちの要人と繋がりがあったからなぁ。最初は国元を離れて心配する父親の為に手紙を送ったらしい。父親の公爵は娘の手紙を無事かつ早急に受け取りたいが為に郵便事業を興して確立したらしいぞ。わが国が今も安定した郵便事情に甘んじてるのもフォーサイス公爵さまのお陰だな!」

「なんか、凄い親娘おやこだよね……」

「父親は娘を心配する生き物だ。分かってるか? リリアーヌ!」

「うわぁ……まだ反対する気?父さん、しつこいよ?」

「だって、女の一人旅なんて……いくら治安が良いからって……」

「メソメソしない! 鬱陶しい!」

 私は泣き真似をして縋ろうとする父を振り切って部屋を出た。
 そもそも、私に『ロベスピエール首相』の存在を教えた張本人のくせに。

 マクシミリアン・ロベスピエール。
 享年61歳(推定)。
 革命家であり優れた政治家。70、辺境伯の使者として当時のロックハート王国王宮に乗り込み王朝を無血革命させた立役者。ロックハート王国を終焉させ今のフォーサイス共和国へと移行させた。フォーサイス国初代首相。歴史の表舞台に颯爽と現れた割に謎の多い人物で、私の父のように、彼の足跡を追い著書を調べ研究する学者は多い。辺境伯という軍事力を後ろ盾に王宮に乗り込んだくせに、クーデターを無血で行うなど、当時の価値観で言えば信じられない偉業を残している。

 かく言う私も彼には大注目しているのだけど……
 私の場合、着眼点が違う。
 だって、『マクシミリアン・ロベスピエール』だよ? 革命家だよ? 地球の、フランス革命当時の超有名人! これ、偶然の一致なのかな?!
 彼も、私と同じ地球からの転生者だったんじゃないの?(`・ω・´)
 じゃなきゃ説明できない数々の功績!
 無血革命だけじゃない、その後の国内発展の為に病院、学校、警察機構、消防機構、株式会社の設立、保険会社の設立、主要道路の建設、主要都市を結ぶ辻馬車の交通網システム構築、上下水道の施設建設、農地改革、鉱山の開発、などなど、挙げれば幾らでも出てくるから恐れ入る。
 フランスのロベスピエールは恐怖政治を敷いて自身もギロチンで殺されるけど、それを反省点にして転生した今回は無血革命したんじゃないかな、とか。
 考えれば考える程、興味が尽きない。

 私の名前はリリアーヌ・アーバン。
 地球からの転生者だ。
 学者である父が子守唄代わりに私に語って聞かせたこの国の歴史の中で『ロベスピエール』という名前に天啓を受けた。
 ぶっちゃけ、前世を思い出した。
 前世の私はジャーナリストだった。真実を追い求め、世界に飢餓や貧困が蔓延はびこる現状を訴え知らしめる事を正義として生きてきた。
 結局戦場で捕虜となって命を落としたけど、まぁ、そこはそれとして。
 転生した今でも真実を追い求める気持ちは枯れていない。
 謎に満ちた男『ロベスピエール』が残した家族、或いは親族にインタビューする為に『オルレアン村』に、今日、向かう。


 この『オルレアン村』って言うのもね~私のカタルシスが痛い程に刺激されるの!( ゚∀ ゚) 
 時代は違うけど!
 “オルレアン”って言えば“オルレアンの乙女”! 15世紀フランスの救国の聖女ジャンヌ・ダルクを連想するじゃない!
 この地名、実は現在の地図上には記されていない、幻の村なの。
 でもロベスピエールと共に革命を成し遂げた仲間(ロベスピエールと4人の革命家って言うの)たちの中で、日記に書き残した人が数名、いるのだ。
 曰く『マックス(ロベスピエールの名前の愛称)がオルレアン村に行きたがって困る』『マックスがオルレアンに行けないと機嫌が悪くなる』等々。
 極めつけは、首都にある彼のお墓に記された碑文。

『革命家であり政治家であり歴史研究家、マクシミリアン・ロベスピエール ここに眠る 魂はオルレアンの空に』

 絶対、絶対あるのだ! オルレアンが!
 地図上には無いけど、まだ知られていない場所がある筈なの! 彼ゆかりの場所が! 必ず!

 探したわ~。
 インターネットで検索出来た前世が懐かしいわ~あれ便利よね。早く似たような物で良いから開発されないかしらね。
 まずは電話の普及が先かしら。
 お役所と主要都市には導入されたって聞いたけど、まだ有線だもんねぇ。先は長いわぁ~。

 で。
 実は発見したの。(≧∇≦)キャ
『オルレアン孤児院』を! 孤児院出身者が居たの! 首都のカフェテリアで働いてる可愛いお嬢さんだったわ♪

 多分、きっと、そこには彼の子どもとか孫が居るはず!
 ……公式には生涯独身のロベスピエールだけど、そんなに頻繁に行きたがるって愛する者が居たからじゃないの? 違う?
 仮に、彼の親族が居ないとしても、彼に関係のある何かもしくは誰かが、居たんだと睨んでる。そしてその形跡が欲しい。
『孤児院』だから、彼が寄付した記録とか。
 もしかしたら、彼本人がここの出身だとか。

 好奇心を満たすべく、私は一路オルレアン孤児院のある辺境の村へ向かったのだ。





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