14 / 33
居ても立っても居られない気持ちに急かされるように捧げる「タバコと私」
しおりを挟むまずはじめに。
煙草は大人の嗜み。大人の嗜好品。こどもが手を出してはダメな領域。
勿論、年齢がいっていても、うまく扱えない『こども』は吸っちゃダメだと思う。
ヒトの顔にわざと吹き付けるような真似は論外だ!
◇
丁度、煙草に纏わるあれやこれやを考えていたのは、亡き父の命日(1月10日)から。
そうしたら、タイムリーなエッセイを目にしまして、居ても立っても居られなくなりました。乗るしかないっ! このビッグウェイブに! な気持ち。(ナニヲ言ッテイルノダ私ハ)
私自身は、非喫煙者です。
過去、一度も吸ったことありません。なんなら喘息ぎみなので煙は勘弁してください勢です。
しかし、そんな私でも「煙草? お好きに吸ってくださいませ」と思った経験があるので、ご紹介したいのです。
あれはまだ、私が大学生の小娘だった頃。
関東地方のとあるイベントに参加し、帰宅する為に小田急線のロマンスカーに乗った時。
あの頃のロマンスカーは、『走る喫茶室』などと呼ばれた名残がありました。客室乗務員のおねーさんが、座席まで紅茶を運んでくれたっけ……(遠い目)
いつもなら禁煙席を指定するのですが、たまたまその日は満席に近く、取れた席は喫煙席。まだ禁煙車が少ない時代です。というか、現在、全席が禁煙席なので、時代の格差をひしひしと感じます。
ええと、当時の状況を説明しますね。
全部で7両編成のロマンスカーの中で、禁煙車は2両ほど、という時代です。まだまだ喫煙者がぶいぶい幅を効かせていた時代です。JR(ん? まだ国鉄だったか?)の駅ホームに喫煙エリアができたくらいの?
仕事中にもバンバン煙草を吸って、嫌煙ブームが出始めたくらいと、ご承知おきくださいませ。
その当時、大学生の小娘だった私は、食べ忘れていたお昼のお弁当を持って、発車間際のロマンスカーに駆け込みました。新宿発午後16時くらい、小田原経由箱根湯本行き。
慌てて指定席に座ると、隣の席にはすでに初老のおじいさんが座っていました。私は窓際席だったので、おじいさんに会釈して席に座りました。それと同時に動き出すロマンスカー。
私はすぐさま腹ペコ虫を治めるべく、お弁当を開き掻き込む勢いで食べ始めました。
イベントも楽しかったし概ね満足な休日だったなぁと、車窓に流れる景色を見ながら食事を終え、缶のお茶(まだペットボトルではなかった笑)を飲み、やっとひと心地ついたぞ、と思ったとき。
お隣にすわっていたおじいさんが、私に話しかけてきました。
「あの……吸っても、いいですか?」
穏やかなお声で。こちらを伺うように。
びっくりしたのなんのって。
だって、座っているのは喫煙席なのです。
そこに居る以上、いつ煙草を吸ってもそれは当然の権利なのです。
なのに、このおじいさんは、走り込んで隣に座った小娘の為に、吸うのを我慢してくれていたんです。
私が、いきなり食事を始めたから!
煙草喫がいつでもどこでも煙草に火を点けたがるのは、生前の父がそうだったので、よく知っていました。だからこそ、我慢してくれたという事実に目から鱗状態です。
こんな、見ず知らずの小娘のために!! お年を召した方が待ってくれていたなんて!
しかも、お伺いを立ててくれるなんて!
なんというジェントル!!
なんという紳士!!
一も二も無く、どうぞどうぞ、お吸いください、でした。
優雅に煙草に火を点けた紳士は
「どちらまで行かれるのですか?」
と尋ねてきます。のんびり、穏やかなお声です。
「小田原です。そのあと在来線に乗り換えます」
「学生さん?」
「はい。休日なので、東京で遊んできました」
「いいですね、僕は箱根まで行きます。温泉目当てです」
「あぁ、いいですね!」
なんということでしょう!
見ず知らずの、初対面の紳士と会話が弾んでいます!
そして紳士は私と話しながらも、煙草の煙が私の方に行かないよう、煙を吐く方向に気を配ってくれました。
……ちょっとくらい、煙がこちらにきても、気になりませんよ?
そう言いたくなるくらい、気を遣って頂きました。心が温かくなりました。
新宿から小田原まで、1時間ほど。とても短く感じました。
それはお隣に座ったロマンスグレーの紳士のお陰。彼が示してくれたジェントルが私に穏やかな時間をくれました。
「それでは、お元気で」
「よい旅を!」
まさしく一期一会の出会いでした。着席するまでは「初老のおじいさん」だった印象が、別れるときには「ロマンスグレーの紳士」にレベルアップしてました。
それはまだ、嫌煙運動が起こり始めた頃の話。喫煙者は街中、至る所で煙草に火を点け、あちこちにポイポイ捨て、歩きたばこを平気でやって、持ち歩くから、その火がこどもに当たったりして問題視され始めて。
誰もが仕事をしながら煙草の火をつけっぱなしにし、社内の部屋が煙だらけだとクレームが出て、喫煙ルームに隔離され始める少し前。
『ハイライト』が170円だった時代の話。
喫煙者は、好き勝手し過ぎたのです。
今、喫煙者は肩身が狭い思いをしています。
外出先では喫煙スペースを探し、自宅でも換気扇の下かベランダに追いやられ、それも隣家の人間に注意されてしまうような時代になりました。
言わば、安住の地を求めて彷徨う難民状態です。
ざまぁ、されているのです。
時代は嫌煙家の天下です。
漫画のキャラクターにまで、煙草ではなく飴を持たせろと言われるほどの。
あの頃、全世界すべての煙草喫が、私が遭遇したロマンスグレーの紳士のように、他者に気を遣えるような人だったなら。
今のような状況になっていたでしょうか。少しだけ、違ったのではないかと私は思うのです。
少なくとも、ここまで急激な変化ではなかったのでは、と。
そして次に『ざまぁ』されるのは。
嗜好品だからとガンガン税率をあげ、本当に高価な嗜好品になってしまった煙草。煙草離れをする人の数は年々増えるでしょう。
街角の自動販売機もあと2年くらいで消えると思います。(これはコンビニで購入できるせい)
購入者が減少したら、税金が入らなくなるのでは? 政府の方? なんて思うのですが、どうでしょう。
およそ六割が税金である煙草を愛用する煙草喫は、間違いなく高額納税者です。
セレブです。
あなた方が治める税金が社会を回していますよ! 胸を張って生きてください。
ただし、ジェントルにね!
◇
パイプ愛用していた某教授の研究室は、ちょっとスモーキーで、渋めのいい薫りがしたことを思い出します。いい教授でした。
私は、喫煙者の人柄で、煙草の好悪を決めているのかもしれません。
知らないおっさんの煙はノーサンキュー!
10
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。


アルファポリスで規約違反しないために気を付けていることメモ
youmery
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで小説を投稿させてもらう中で、気を付けていることや気付いたことをメモしていきます。
小説を投稿しようとお考えの皆さんの参考になれば。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる