あとさん♪の徒然なるままに備忘録

あとさん♪

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予防接種のとき、親くらいは本当のことを言って欲しいと子ども目線で思うんだ

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『予防接種』で思い出したこと、あれやこれや。

  
 昔から注射が嫌いだった。

 小学生のころは集団予防接種というのがあって(最近の若人にはわからないでしょうが)、インフルエンザワクチン(たぶん。他の種類のもあったのかも)を列に並んで受けなければならなかった。
 授業を中断してまでやること? とはいえ授業によっては中断してくれてラッキー♪みたいな気持ちで特別に用意された教室で注射を受ける。
(多目的教室など、ふだん使用していない教室が臨時の病院みたいになって、お医者さまが派遣されて、皆一列にならんで注射を待つ。予防接種ベルトコンベアー状態。1組の最後の子が終わると3組さんを呼んで~とか命じられる。今はないよね?)

 当然のことながら、先に並んだクラスメイトが接種の感想を後続待機者に言う。

「痛かった。超痛かった」
 お、おう。ビビりのワタクシはそれに怯む。

「痛くないぜ! あっという間に終わったし!」
 へ、へぇ? そんなもん? いや、あいつつえぇし……。

 当然のことながら『注射』は同じものを受ける。射す人も同じ。
 だから接種後の感想が分かれるのは間違いなく「個人の見解の相違」である。
 Aさんには痛いと感じても、Bくんにはなんともなかった。(強がりを言っていたかもだけど)
 ここに、嘘と本当と揶揄からかいと強がりが同時多発的に複雑に絡まり合って存在することになる。

 痛くなかったけど、ビビりを怖がらせるためにあえて「痛かった」というパターン。
 痛かったから「痛い」というパターン。
 痛かったけど、痛いというなんて恥ずかしくて言いたくないから「痛くなかった」というパターン。
 痛くなかったから正直に「痛くないぜ!」というパターン。etc。

 三者三様、十人十色、百人百様。

 結局、痛いのか痛くないのか分からず、無駄に恐怖心ばかり膨れ上がりやっぱり「痛かったよぉ(涙目)」で終わるワタクシ。
 あいつ、嘘つきやがって。痛くないって言ってたじゃん!
 ……こうして子どもは嘘と本音が飛び交う「社会」を学んでいくのである。

 さて。
 医療従事者が子ども相手に注射を打つとき、決まって「痛くないよ」というの、やめた方が良くないですかね?
 だってそれって、嘘じゃん?
 子ども相手に堂々と嘘を言うって、良くないですよ。
 とはいえ「痛い」と聞いて、泣いて暴れて手が付けられなくなる子どももいるから「痛くないよ」というのは仕方ないのかな、と思う。
 でもこれって最初から「痛いです。でも我慢しましょう」と言い聞かせてないからじゃないの?
 いや、子どもの個性にもいろいろあるから一概には言えないけど。


 息子が乳児の頃。初めて予防接種を受けさせる前日、ワタクシは彼に言い聞かせた。

「明日は病院に行って注射を打ちます。痛いです。チクッとします。でもこれは必要な処置で、あなたの身体の中で病気にならない為にすることです。頑張って耐えてください」

 ……なぜか丁寧語だったな。

 乳幼児は接種義務のある予防接種の多いこと多いこと!
 ポリオは経口で終わるから楽だけどそれでも2回。
 DPT三種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風)は第一期の初回が3回と追加1回、第二期1回の計5回。
 BCGはツベルクリン反応をみてからだから計2回。
 風疹、麻疹はしかはそれぞれ1回。
 日本脳炎は第一期初回が2回、一期の追加が1回の計3回。(追加で4~5年ごとに1回受けるとベストみたいだけど、国内にいたら二期の追加は要らないと思う)
 以上が0才から10才くらいまでの間に義務付けられた予防接種。母子手帳に記載されています。
(その他におたふくや水ぼうそうも。これらは親の希望で)

 話を戻して。
 我が子、0才5ヶ月でDPTの1回目、次の月に2回目、その次の月に3回目、その次の月にツベルクリン反応をやって、二日後にBCG接種。
 0才の乳児が五カ月連続で5回も注射打っているんですよ。
 その前日に、「明日は病院へ行って注射を打ちます。痛いです」という言い聞かせをしていました。毎回毎回。そのうち「注射」という単語を覚え、嫌がる素振りもするようになりました。でも捕獲して膝に乗せ、目を見て説得します。

「泣いても笑っても明日は病院へ行きます。注射を打ちます」

 ……ホント、なんで丁寧語やったんかな。過去のワタクシは。


 注射を打つ直前、先生が「痛くないよ~」
 ワタクシ「痛いよ」

 当然、注射は痛いです。息子は泣きます。うわーんじゃないです。ぎゃぁぁぁああああという泣きです。
 それでもワタクシにぎっちりと保定されたまま注射を受け終わった息子は先生や看護師さんから褒められます。

「頑張ったね~えらいえらい」

 当然、ワタクシも彼を褒めます。
「痛かったね! うん、痛かった! でもよく我慢した! すごいっ! 頑張った! ○○はこれでまた一つ強くなったぞ! 偉かったぞっ! 痛いのは終わったぞ! 乗り越えたぞ!」

 そんなことを言ってぎゅっと抱きしめて偉い偉いと褒めて宥めると、すぐ泣き止む息子。
 毎回、こんな調子でした。

 注射後、容体が急変するケースがあるのでしばらく病院内の無菌コーナーで事後観察するのですが。

 ある日。
 そこにはやはり予防接種を受けに来た母子三人連れ(母、幼稚園年長さんくらいの男の子、その弟2才くらい)がお先にいまして。
 幼稚園生くらいのおにいちゃんが、ずーーーーーーっと泣いているのです。それもしくしくグズグズと悲しそうに。
 ワタクシたちが無菌コーナーに入ったときから、彼はずーーーーっと泣いていました。ワタクシに抱かれた息子は既に泣き止んでおります。
 泣き続け(でも椅子に座って大人しい)ている幼稚園生のおにいちゃんに対して、そのお母さんは。

「まったく、注射ごときでいつまでもぐずぐず泣いて……いい加減にしなさい。たいして痛くないでしょう? ……ったく、男の子なのに情けない……あんな小さな子も泣いてないのに……」

 と、小声で(たぶん第三者ワタクシが居たから)小言こごとをいい続けていました。おにいちゃんはずーーーーーーっと泣き続けています。その弟くんはおかあさんに抱っこされて膝の上で大人しくしています。
 狭いコーナーに、彼らと対面で座っているのです。

 ……ワタクシ、居たたまれませんでした。


 でもね。
 よそ様と喧嘩する気も度胸もないので黙っていましたが、言いたかった。

 男の子だって、痛いときは痛いです。
 注射ごときとは言うけど、針で刺されたら痛いです。(そうじゃないと逆に心配です)
 おかあさん、貴女が慰めてあげてください。ちょっとその大人しい弟くんを膝から降ろして、おにいちゃんの方を抱き締めて『痛かったね』って言って同調してあげてください、と。

 もしかしたら、あのおかあさんは既にそうやっておにいちゃんを慰めた後だったのかもしれないけど。慰めタイムを経て、それでも泣き止まないからうんざりしていたのかも、だけど。(それは見ていないから分からない)

 うちの子がすぐに泣き止んだのは、親がずっと抱きしめて彼を慰めて彼の気持ちを言葉にして代弁したからだと、ワタクシは思っています。

 乳幼児は自分の気持ちを言語化することができませんが、気持ちがないわけではない。
 親がその気持ちをきちんと言語化し、それが痛かったとか辛かったとか嫌だったとか、特にマイナス面な気持ちを、本人にも未分化な気持ちを言葉にして音に変え伝えるのは大きな出来事だと思います。

 子どもは学習します。
「あぁ、いまのは“痛かった”と言うのか」と。
 だけど「でも終わったんだ。“頑張って”“我慢した”ボクは“偉い”んだな」と思って切り替えられます。

 誰からも認めて貰えない、同調して貰えなかった気持ちはきっと本人の中で長く残る。
 だって世界でひとりぼっちだから。
 乳幼児にとって世界は「自分と親」で終結している。増えても「祖父母と兄弟」。狭い世界の中で誰にも認めて貰えない気持ちをどうしたらいいかわからなくて、せめて泣くことで発散させるしかない。うまく言語化できないから泣き続ける。
 悪循環だ。

 でも「おかあさん」が認めてくれれば。(おとうさんでも可)
 世界でただひとりでも、自分を認めてくれる人がいれば。
 あの子も泣き止んだと思うのだけど。

 だからこそ。

 医療従事者が「痛くないよ」という注射も、親だけは本当のことを告げて欲しい。

「痛い思いをします。でもこれはあなたの身体の中に入って、あなたが強くなるための試練なのです」

 そうして試練に打ち勝った子どもに対して、「痛かったね」と同調して欲しい。同じ感覚を共有しているのだと、親は自分を解ってくれているのだと、子どもに理解させて欲しい。
 そうして「よく頑張った、偉かった」と褒めちぎってあげてください。

 あのずーーーーーーっと泣いていたおにいちゃんは、帰るときも泣きながら静かに帰っていきました。
 可哀想に。おにいちゃんだから、男だから、と強要されて自身の気持ちを蔑ろにされて。

 そう思っていたけど、思い返すと。

 たぶん、弟くんの方もなんらかの予防接種を受けているはず。兄弟それぞれ病院へ行くより、一度で済ませる方が合理的だし。
 おにいちゃんだから、おかあさんの抱っこは弟に譲らざるを得なかったのかなぁ。兄弟あるあるだけど、親も大変だよね、あれ。
 それでも一度くらい抱っこして貰えたのかなぁと、気になって仕方がない。(あのときのおにいちゃんも今は立派に成人していると思うけどね)

 どうにもあのしくしくと静かに泣き続けるさまが忘れられないワタクシは、こうしてエッセイにして世の親(と予備軍)に訴えたいのでした。

 他のだれが嘘を言ってもいいけど、親だけは子どもに嘘をつかないでくれ! (サンタクロースはむしろ信じさせろ。あれはティンカーベル(いないって言うたびに死ぬ)だ)
 そして子どもの気持ちに寄り添ったら褒めてあげて欲しい!
 我が子を世界にひとりぼっちにさせないでください。


 以上、主張おわり。



もう20年以上前の話でした<(_ _)>
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