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本編第一章
【3話】問い
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不思議と恐怖を感じないのは自分と容姿が大きく違わないからだろうか。
僕と同じくらいの年、同じくらいの背丈、髪色。
違和感を感じるのは服装位だ。
不自然なほど浮いてしまうような純白のロングコートを着込み
腰に巻いたベルトのバックルには紋章のような華美な装飾があしらわれている。
このように珍奇な格好をした人間は現実社会じゃなかなかお目にかかれない。
ここが廃工場だという事を差し引いても明らかに浮いている。
ただ、容姿だけを言えば僕らと変わりがない。
僕は今まで異常存在というものを財団内でいくつか見てきた。
そのどれもが禍々しい見た目の機械だったり理解不能な形をしたオブジェ等
自分の常識を逸脱したものばかりだった。
それに比べれば彼の容姿は僕にとって、あまりにも健全に映った。
僕は彼と目が合ったまま沈黙する。
その沈黙に耐えられなくなり場違いな質問が口からこぼれる。
「君は、どうして毎回逃げ出すの?」
「そうだね、僕は」
ダンッ!
彼が口を開きかけたと同時に銃声が室内に響き渡る。
僕は唐突に響いた銃声に身をすくめた。
「ちっ!かすりもしねぇ。回収目標と接触したんだぞ!鎮圧しろ!即死はさせるなよ!」
続いて怒鳴りつけるように聞こえてくる丸樹の開戦の指示にワンテンポ遅れで戦闘態勢に入る。
先程の窓枠に彼はもう居ない。
銃声の響く中慌てて周囲を見渡すと彼は呼び出した剣で既に2人ばかりを切り捨てているところだった。
「なんで当たんねぇんだ!面だ!面で撃て!」
丸樹がそんなことを叫んでいる間にも1人2人と班員が倒されていく。
「人を殺すのは良くない。僕たちはもっとわかり合わなきゃ。」
藤宮さんが嘘臭い笑みを張り付けたまま能力を発動する。
「まずは話し合おう。話し合いをするためとは言え少々忍びないが僕の檻の中に
入っていてもらおう。」
勇者の素早い動きを阻害するようにボックスを展開するがなかなか捕らえることは出来ない。
左右に身を躱し、僕たちの方へ確実に距離を詰めてくる。
時に箱の範囲がかすりはするが手にした剣で現れた箱を弾き体勢を巧みに逸らす。
その合間にも戦闘員の他の班の人員が一人ずつ切り伏せられていく。
藤宮さんの箱を避ける過程で何発かの銃弾は掠めているが決定打にはなっていない。
戦況は圧倒的に不利。
既に班長の丸樹を含めた全員が斬り伏せられ薄汚れた地面は赤い血溜りが広がっている。
即死を免れた人を無理やり藤宮さんの後ろへ引っ張り込んで治療するが今の僕の回復力では延命がやっとだ。
だが、勇者は明らかに藤宮さんの檻に収納されることを嫌がっている。
勝機はうっすらとだがそこにあるような気がしていた。
箱を避けるという事は逆に、奴自身も一旦閉じ込められてしまえば抜け出せる手立てが思いつかないという事だ。
「やっぱり君を捉えるのは難しいようだね。私の事を受け入れてそろそろ檻に入ってくれると助かるんだが。」
「それは出来ないよ。それに君自身が存在する限り僕はその提案を受け入れる事は無いよ。」
「…?私自身?それはどういうことだね!?君は…っく!」
勇者の言葉に意識を逸らされ、その一瞬の隙を突き瞬間的に二人の距離が詰まる。
「さて…鬼ごっこも終わりだ!」
ガキンッ!
大業な勇者の掛け声とともに彼の剣の切っ先が肉を切り裂くかと思われたが二人を
同時に覆う大きさの立方体が現れ、箱の中からは硬質な剣戟の音が響く。
そして、その大きな黒い立方体が消え去るとそこには立方体の外に佇む藤宮さんと
先ほどの立方体よりも一回り小さな箱。
「私は超近接だと攻める事が出来ないからね。近づかれた時の為の準備くらい用意してある。
対象者を箱という限られた空間の中で更に二重に覆ってしまえばいいだけの事だ。限定された空間内のどこかにいるのであればそこを丸々覆ってしまえばいい。」
捕まえたってことで良いのか?
立方体の中からは数回剣を打ち付ける音が聞こえ、それから少し沈黙が流れる。
「さぁ、これで君も出られなくなった。財団に戻ったらゆっくりと話をしようじゃないか。」
藤宮さんが穏やかな口調で箱の中の勇者に話しかける。
「硬度も十分。力の発動も早い。数も最大規定数の5個まで達成か。うん。申し分ないね。
育ててくれてありがとう。お疲れさま。」
箱の中からそんな言葉が聞こえた。
次の瞬間彼は箱の外に立っていた。
初めからそこに居たように違和感なく、平然と、自然体でやおらにそこに立っている。
「今度こそ鬼ごっこはお終いだ。はい。タッチ。」
藤宮さんが慌てて後方に飛び退こうとするが彼の手の方が一瞬早かった。
武器も何も持たない無邪気な仕草で差し出された手が藤宮さんの体に触れる。
次の瞬間【ぼりゅ…!】と聞いたことのない音を立てて内側から裏返り藤宮さんは肉の塊へと変わった。
「うわ、やっぱりえぐいなぁ…。こんな力前の世界で使ってたら皆に嫌われてたところだ。この力は封印だな。」
返り血で純白のコートを染めた勇者は意味不明なことを一人呟いていた。
僕と同じくらいの年、同じくらいの背丈、髪色。
違和感を感じるのは服装位だ。
不自然なほど浮いてしまうような純白のロングコートを着込み
腰に巻いたベルトのバックルには紋章のような華美な装飾があしらわれている。
このように珍奇な格好をした人間は現実社会じゃなかなかお目にかかれない。
ここが廃工場だという事を差し引いても明らかに浮いている。
ただ、容姿だけを言えば僕らと変わりがない。
僕は今まで異常存在というものを財団内でいくつか見てきた。
そのどれもが禍々しい見た目の機械だったり理解不能な形をしたオブジェ等
自分の常識を逸脱したものばかりだった。
それに比べれば彼の容姿は僕にとって、あまりにも健全に映った。
僕は彼と目が合ったまま沈黙する。
その沈黙に耐えられなくなり場違いな質問が口からこぼれる。
「君は、どうして毎回逃げ出すの?」
「そうだね、僕は」
ダンッ!
彼が口を開きかけたと同時に銃声が室内に響き渡る。
僕は唐突に響いた銃声に身をすくめた。
「ちっ!かすりもしねぇ。回収目標と接触したんだぞ!鎮圧しろ!即死はさせるなよ!」
続いて怒鳴りつけるように聞こえてくる丸樹の開戦の指示にワンテンポ遅れで戦闘態勢に入る。
先程の窓枠に彼はもう居ない。
銃声の響く中慌てて周囲を見渡すと彼は呼び出した剣で既に2人ばかりを切り捨てているところだった。
「なんで当たんねぇんだ!面だ!面で撃て!」
丸樹がそんなことを叫んでいる間にも1人2人と班員が倒されていく。
「人を殺すのは良くない。僕たちはもっとわかり合わなきゃ。」
藤宮さんが嘘臭い笑みを張り付けたまま能力を発動する。
「まずは話し合おう。話し合いをするためとは言え少々忍びないが僕の檻の中に
入っていてもらおう。」
勇者の素早い動きを阻害するようにボックスを展開するがなかなか捕らえることは出来ない。
左右に身を躱し、僕たちの方へ確実に距離を詰めてくる。
時に箱の範囲がかすりはするが手にした剣で現れた箱を弾き体勢を巧みに逸らす。
その合間にも戦闘員の他の班の人員が一人ずつ切り伏せられていく。
藤宮さんの箱を避ける過程で何発かの銃弾は掠めているが決定打にはなっていない。
戦況は圧倒的に不利。
既に班長の丸樹を含めた全員が斬り伏せられ薄汚れた地面は赤い血溜りが広がっている。
即死を免れた人を無理やり藤宮さんの後ろへ引っ張り込んで治療するが今の僕の回復力では延命がやっとだ。
だが、勇者は明らかに藤宮さんの檻に収納されることを嫌がっている。
勝機はうっすらとだがそこにあるような気がしていた。
箱を避けるという事は逆に、奴自身も一旦閉じ込められてしまえば抜け出せる手立てが思いつかないという事だ。
「やっぱり君を捉えるのは難しいようだね。私の事を受け入れてそろそろ檻に入ってくれると助かるんだが。」
「それは出来ないよ。それに君自身が存在する限り僕はその提案を受け入れる事は無いよ。」
「…?私自身?それはどういうことだね!?君は…っく!」
勇者の言葉に意識を逸らされ、その一瞬の隙を突き瞬間的に二人の距離が詰まる。
「さて…鬼ごっこも終わりだ!」
ガキンッ!
大業な勇者の掛け声とともに彼の剣の切っ先が肉を切り裂くかと思われたが二人を
同時に覆う大きさの立方体が現れ、箱の中からは硬質な剣戟の音が響く。
そして、その大きな黒い立方体が消え去るとそこには立方体の外に佇む藤宮さんと
先ほどの立方体よりも一回り小さな箱。
「私は超近接だと攻める事が出来ないからね。近づかれた時の為の準備くらい用意してある。
対象者を箱という限られた空間の中で更に二重に覆ってしまえばいいだけの事だ。限定された空間内のどこかにいるのであればそこを丸々覆ってしまえばいい。」
捕まえたってことで良いのか?
立方体の中からは数回剣を打ち付ける音が聞こえ、それから少し沈黙が流れる。
「さぁ、これで君も出られなくなった。財団に戻ったらゆっくりと話をしようじゃないか。」
藤宮さんが穏やかな口調で箱の中の勇者に話しかける。
「硬度も十分。力の発動も早い。数も最大規定数の5個まで達成か。うん。申し分ないね。
育ててくれてありがとう。お疲れさま。」
箱の中からそんな言葉が聞こえた。
次の瞬間彼は箱の外に立っていた。
初めからそこに居たように違和感なく、平然と、自然体でやおらにそこに立っている。
「今度こそ鬼ごっこはお終いだ。はい。タッチ。」
藤宮さんが慌てて後方に飛び退こうとするが彼の手の方が一瞬早かった。
武器も何も持たない無邪気な仕草で差し出された手が藤宮さんの体に触れる。
次の瞬間【ぼりゅ…!】と聞いたことのない音を立てて内側から裏返り藤宮さんは肉の塊へと変わった。
「うわ、やっぱりえぐいなぁ…。こんな力前の世界で使ってたら皆に嫌われてたところだ。この力は封印だな。」
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