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しおりを挟む僕にもできることがあるんだ。あるものを見る方がずっといい。できることを一生懸命やろう。そうしてレオが笑ってくれるならば僕は幸せなんだ。
そうしよう。僕を大好きだと言ってくれた彼のために。
僕はできることをやるんだ。
*.○。・.: * .。○・。.。:*
ふと時間を見たら五限目が始まって半分が過ぎようとしていた。僕は大教室の後ろからこっそり中に入った。
つもりだった。
鳥口が扉を慎重に開ける小さな音を聞き取って視線を向けた。この人の神経は研ぎ澄まされている。超能力でも使えるのか? 敵に回すとマジで怖い。
教室の後方では小道具を作っている生徒が各々に仕事をしていた。鳥口は役者を務める生徒たちと教室の前の方にいる。台本を合わせている途中だったようだ。脚本は完成したのか。彼女の隣には当然だというようにレオの姿がある。
胃が雑巾を絞ったようにキリキリと痛んだ。
苦しい。辛い。もう逃げたい。吐きたい。消えたい。
「あ、浅見くん」
鳥口が言った。随分と勿体ぶった言い方だった。教室にいる全員が僕の方を向いた。
レオ以外を除いてだけどね。つら。
レオは雪が降る寸前の重く垂れる曇り空のような顔をして横の方を向いていた。
鳥口は立ち上がると、ゆっくり僕の方へ向かっていく。視線が痛い。お腹も痛い。
わざとだ。鳥口は生徒が僕に注目するようにわざと勿体ぶって歩いてくる。ほんとこの人嫌だわ。
「遅かったね。なにをしていたの?」
鳥口が僕に尋ねる。彼女は僕を公開処刑にかける気だ。ほんと酷いやつ。なにを答えても僕は彼女によってネガティブな印象操作をされるに違いない。そもそも喋れない僕に対してその質問は随分残酷じゃないか。お願いだからWhatで質問しないでほしい。無理だからその質問は、答えかねるから。
僕はこんな圧をかけられるほど鳥口に酷いことをしたっけ?
彼女はとりとめのないことを吹き飛ばすように笑って続ける。
「まあいいよ。浅見くんは美術ね……手が足りないところはある?」
美術担当の生徒に向かって鳥口が声を張った。
どこの班も手を挙げない。
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