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しおりを挟むそうじゃん。彼が僕に与えてくれた好きって気持ちに応えてこなかったから。自分勝手に彼を置いていったり、怒ったり、寒空の下で扉の鍵を閉めたりしていたから。
『ルカが雪だるまを壊した』とレオに誤解された時点で、彼の中で僕の信頼感はその程度だったってことだ。まあ三日も風邪で休んで彼を不安にさせてしまっていたから、それで余計、彼は怖かったのかもしれない。
なんか落ち着いてきたぞ。とどのつまり、僕にも非はあったわけだ。誤解されたのは声が出ないせいだけじゃない。
鼻水をすすりながら涙を止めようと目を閉じる。外気が冷たくて火照った体に気持ちいい。できる範囲で冷静になった。
誤解を解くにしても僕は喋れない。手紙を書いても、あの状態のレオは絶対に受け取ってくれないような気がするし、かしこまった感じがして非常に重い。はいといいえの意思表示しかできない僕が、彼とコンタクトを取ったところで泥沼になること間違いない。
なにせ今はレオが僕を拒絶している。だから誤解は解けそうにない。もうこの際しかたない。それはもう、解けないのだったらとりあえず置いておこう。
だったら僕にできることってなに?
僕はしばらく考えた。レオは孤独な僕に、一人では決して感じることができなかった気持ちを与えてくれた。それはすごく嬉しかったから。
レオが僕に好きをくれたみたいにサ。
……僕もレオになにかを与えよう。
『学芸会の主役をやることは、留学が終わってもきっといい思い出になると思うの』
何日か前に鳥口が言っていた言葉を思い出す。
そうだ。
彼に素敵な思い出を残してもらうために……僕ができること。
それは劇をなにがなんでも成功させるってことだ。
僕が彼になにかを与えられるとしたら多分それだけだ。
……うん。
それなら、僕は今こんなところで劇の練習をサボっているわけにはいかない。
僕も参加しなきゃ。
涙をごしごし擦って、塀の脇に降り積もっていたふわふわの雪の中に顔を埋めた。冷たいな。頬を叩いて自分を叱咤する。
……できないことを嘆いたってしかたないんだ。ないものを上げればキリがないんだ。できないものはできないんだから、数えるのはやめよう。数えてがっかりしたところで、そんなの絶対意味がない。
できることをやるしかない。
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