雪解けの朝に

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　なんで……！

　レオは僕が雪だるまを壊したと勘違いしているようだ。壊すわけないじゃん。

　壊すわけがないんだよ、どうして。

　どうして僕の好きって気持ちは届かないんだ。

　声がないからだ。僕は喋れないから……イエスかノーかでしか伝えられないんだよ。「どういうこと？」って言われたところで答えられないんだよ。矢継ぎ早に話されたって返せないんだよ。無理なんだ。僕にはできないんだよ。弁明の余地などなかった。

　全然できないよ！

　どうしてだよ。

　堪らなくなって深いため息を吐いた。ため息は白くなった。そしたら僕の目から堰が切れたように涙がぼたぼた溢れてくる。

　おもむろにポケットに入れていたレオの手紙を取り出して読んだ。これを見せればよかった？　そしたらここまで誤解されなかった？　分かんないよ、気が動転しててそこまで頭が回らなかったよ！

　レオの気持ちは僕に届いているのに。

　僕の気持ちはレオに届かない。

　僕が喋れないばっかりに。

　好きなのに。レオ。

　僕の気持ち（手紙）はどこへ行った？

　誰の元に届いたんだろう。レオ以外の誰かに届いたということもショックだった。ショックだし後悔の津波で溺れそうになる。

　レオに届かなければあんなものただの僕の気持ち悪さの露呈にしかならない。

　教室に戻るのも嫌だ。これから合同の劇練習だなんて、考えるだけでも吐きそうだ。

　消えたいとこんなに思った時はない。

　だけど時間は残酷で、僕の耳は予鈴の音をはっきりと聞き取る。

　今このまま、時間が止まってしまえばいいのに。

　いや今はやめよう。この時点で止まったってダメじゃん。もっとこう、和気あいあいとしていた……そうだな……三日前に戻りたい。いや……三日前も嫌だな。

　あれ……？

　僕って本当に、レオになにもしてあげられてない。

　もしかしてだけど……レオが僕の気持ちを間違ったのは、僕が喋れないから、ってだけじゃなくて……身から出た錆なんじゃないか。案外そうなんじゃないか。

　とりあえず予鈴を無視して雪だるまの死んだ花壇に腰掛けた。

　雪だるまの残骸を見つめながら思う。

　そもそも、レオが僕に対して『ルカが雪だるまを壊すはずがないよね、どうしたっていうんだろうね？　誰がやったんだろうね？』みたいに思えるくらいのことを、僕は彼にしてこなかったわけだ。