雪解けの朝に

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　手紙になると一人称が「私」になって、言葉も敬語になるのも可愛い。話しているレオとは随分かけ離れた雰囲気に、なぜが胸がほっこりしてしまう。

　それに……漢字も片仮名もきちんと使えているし、おかしい文章も見当たらない。先日まではひらがなしか読めないと言っていたのに……こんなに長い文章を書くために、彼は一体どれほどの時間を要したのだろうか。

　手紙は手紙でしかないけれど、この手紙を手紙として生み出すために彼が費やした努力や労力を思えば思うほど、僕は自分の体が火照っていくのを感じる。

　興味半分、恐れ半分で二通目の手紙を手に取った。指先は冬なのに熱い。


『ルカへ

　ルカが今日高校を休んだことが、すごく寂しかったです。明日は来ることを願って、今、手紙を書いています。

　どうして休んだのですか。靴箱にあなたの靴がなかったので、休みだということは分かりました。こういうとき靴を履きかえる文化は便利ですね。

　私はルカとクラスが違うので、休んだ理由を聞くことができませんでした。マミコに聞いたけれど、彼女は教えてくれませんでした。彼女はそれよりも、劇のお姫さま役をどうするかということに夢中です。マミコは脚本も進まないし、練習もできないので、ルカは役を降りたほうがいいと言うのです。どう思いますか。

　ルカはそもそも、お姫さまをやりたいと思っていないのですよね。私が無理矢理押し付けました。だからルカがやりたくないというのなら、私は止めることができません。

　もしルカがやらなければ、マミコがやることになると思います。

　ルカに会いたいです。

　また花の散りかたを教えてください。ルカの作った雪だるまが見たいです。

　明日はきっと、来てくれるよね。

　待っています。

　レオより』


　僕は焦る気持ちを殺しながら、三通目の手紙を開く。


『ルカへ

　私はルカに嫌われてしまったのでしょうか。

　ルカが休むのは私を避けているからだとマミコが言っていました。本当ですか。もし本当なら私はこの手紙をルカに渡して、これ以上ルカと関わらないことにします。

　思い返すと、私はルカになにかを求めているばかりで、気の利いた言葉も、好かれるようなことも、なにもしていないように思います。むしろルカを困らせてばかりだったかもしれません。

　マミコは、去年のルカのことを少し教えてくれました。そして、ルカは一人が好きだから私が詰め寄ることは迷惑だったのではないかと言いました。

　だけど私はそうは思いませんでした。