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しおりを挟むひらがなの筆談では限界がある。
僕たちは合わせて10思っていることがあったとしたら、お互いに1ずつ議論しあって解決していかなければならないのだ。僕が0で彼が10ではダメだし、僕が7で彼が3でもダメだ。僕たちは5と5で話さなければならない。
話し合うとはそういうことなのだと思う。
不意にレオが足を止め、僕たちは横に並んで歩き始めた。
その頃には、周囲に人影もなくなって落ち着いていた。
「こっちから行こう」
こっちから行こうと言われたけれどそもそも僕はどこへ向かっているのか知らない。だからルートなどどうでもよかった。好きにしてください。
「見せたいものがあるんだ」
レオはさっきの小さな諍いなどすっかり忘れてしまったかのような朗らかさで僕に言った。少し歩いたところで小径に入った。近所なのに入ったことのない道だったけどとりあえずついていくことにした。レオは騒がしいけれど悪い人ではないから連れて行かれる場所も信頼している。信頼しているからな、レオ。
車道とも歩道ともつかない狭い道にも関わらず積もった雪のせいで尚更圧迫感があった。
でも僕は案外こういう道が好きかもしれない。
レオは僕を見やって笑った後、嬉しそうに指をさす。
「ルカ、見て、椿。ルカが教えてくれた花」
誰かの家の軒先に、真っ赤な花が乱れるように咲き誇っていた。
学校の植木とは比べ物にならないほどに立派だった。レオの背の高さを易々と凌駕している。僕は思わず口を開けてそれを眺めてしまった。
花は確かに美しい。
僕は花の根元を見た。雪にまみれて花びらが金魚のように散っている。それを手ですくって拾い上げた。
彼に向かって首を横に振る。
花びらごと雪を丸めて手袋を外す。花びらの混ざった雪玉を手で摘んで、また塀に文字を書いた。
「ちがう」
「違う? 何が?」
「さざんか」
「サザンカ?」
「はなのなまえ」
「違う花なの? そっくりだけど……」
僕は頷く。
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