17 / 33
2
4
しおりを挟むそんな僕の思いなど一ミリも伝わっていないであろう彼は、僕のジト目に対してにこにこ笑うだけだった。僕の気持ちなんて全然伝わらない。
レオは一人だけで、朝に会った時と同じ格好をしていた。本当に一緒に帰る気らしい。とんでもない。一人で帰れこの野郎。
聞こえないことをいいことに言いたい放題していた矢先、鳥口がレオの後を追ってやってきた。
「レオくん! まさか帰るつもり? 台本はどうするの? 決まらないとどうしようもないのよ」
あー、とレオは苦い笑いをこぼして僕に目配せする。僕はどき、としてしまう。
まるでお互いに秘密を共有したみたいだったから。
特別、みたいじゃん。
「原作通りでいいと思う」
レオはいつもの調子で鳥口に言った。
「でも彼は喋れないじゃない。お姫さまが話さなくても筋が通るように話を変える必要はあるわ」
鳥口は少しも遠慮なく僕を指差してそう言った。
言葉に棘がないと言ったら嘘になるけれど、別に悪い気はしなかった。真意は分からないけれど、鳥口は、喋れない僕という存在をフラットに、至極当然のこととして受け入れてくれていると感じたから。普通にいいやつだな鳥口。
「これからそのことについて彼と話し合うことにする」
レオは僕の手を掴むと、行こう、と言って僕を引っ張った。待っても嫌だも言えない僕は引き摺られるようにして教室を出る。帰り支度を整えておいてよかった。
「今マミコのこと好きって思ったでしょ」
教室を出て少しした頃、足早に廊下を歩く彼が振り返らずに僕に言った。
当然のように無言の僕に対してちら、と彼が拗ねたような顔を僕に向けたので、僕はその瞬間の逃さないように首を横に振った。
「嘘、すぐ分かったよ。ルカ。いいな、って思ったでしょ」
まあ実際のところ悪い気はしなかったよ。
なんとも言えない顔をしていたら、手がもっと強く握られる。
彼は真っ赤な顔をして言った。
「ルカの王子さまは俺なんだから、俺だけを見てないと駄目」
通り過ぎた生徒の何人かが僕たちをちらちら見てなにも言わずに通り過ぎていく。ちょっと恥ずかしいからやめて欲しかったけど力が強くてどうにもならない。っていうか。
僕は反論していいはずだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる