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しおりを挟むいろんな声が一気に僕を襲った。
「ルカって誰」「男が姫」「いや悪く無い」「むしろ良いじゃん残念だったな女子」「気持ち悪」「なんで浅見なの」「どういう関係?」「なんかこの間うちのクラスに来てたよ」「どこで知り合ったんだ?」「いや無いでしょ」「浅見が主役はちょっと無理じゃない」「いつも一人でいるよね」。
……吐きそう。
「ぼっち」「笑ったところ見たことない」「あいつ喋んねえし」「いや喋れないんだよ、確か」「ビョーキみたいな」「なにそれ」「喋れないなら劇できねーじゃん」「つかあんな人居たんだ」「浅見が姫は無い」「あり得ない」「無理じゃね」「無理」「無理」「無理」「無理」「無理」「無理」「無理」。
無理、無理、無理、無理、無理……。
言葉が僕を溺れされて、息ができない感じがした。言葉より、僕の方が、重いから、僕は言葉の中に沈んでいく。感情が濁流のように全身を呑み込む。
苦しくて口を開いても、声は出ない。
ざわめきが一気に吹き飛ぶような豪快な音がした。僕はびっくりして飛び跳ねる。溺れてなどいなかった。教室にいる。息ができる。
レオが机を思い切り叩いたらしい。ざわめきがピタリと止んだ。
レオは弾むような明るい声で言う。
「もしルカが姫をやるなら俺は王子をやる。そうじゃないならやらない」
そして笑った。
「マミコ、早く進めて」
空気が真冬の朝のように張り詰めている。
鳥口が遠く離れた僕に向かって複雑な顔をして言った。
「浅見くん、姫役でいい……?」
僕は首を横に振ろうと思った。絶対無理。だけど……いろんな重圧に耐えられなかった。
こくり、とゆっくり頷くと、黄色い声と一緒に気分が悪くなりそうな空気が僕を包み込んで窒息しそうだった。色んな感情で淀んでいるけど、たった一人レオだけは嬉しそうだ。
今年の冬は、死ぬまで忘れられない冬になりそう。
*.○。・.: * .。○・。.。:*
放課後になった途端、隣のクラスのレオがわざわざ僕を迎えに来て言った。
「ルカ、一緒に帰ろう」
僕は悠々と僕の前にやってきた彼を見上げる。ちょっと悪意を込めた。レオ、君というやつは……僕を尊重したり、僕を巻き込んだり、やっぱり騒がしいやつだ。少しでもいいやつだなと思ったけど取り消しだ、取り消し! と、僕は心の中で呟く。
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