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しおりを挟む彼の鼻や頬の赤さや、少し雪の凍り付いた彼のシンプルな深緑の傘の生地を見れば、決して短くはない時間、同じ場所に立ち続けていたことは明白だ。なにより。
なにより彼の立っている場所の積雪の少なさが、彼がそこで僕を待ち続けていた時間の長さを教えてくれている。
傘を持つ指先も、雪の上に立っている足先も、きっと凍えるほどに寒かったに違いないのに。
僕のことを、待っていたの?
「だから来てくれて嬉しい。会えて、本当に嬉しい。ルカ、一緒に高校へ行こう」
彼は僕が来ただけでこんなに幸せな顔をする。
僕を待っていてなんて僕はこれっぽっちもお願いしていないけど、レオのそんな姿を見てなにかを思わずにはいられなかった。余計なお世話だと突っぱねることなど到底できない。今すぐにでも抱きしめて、その凍えた体を温めてあげたいと思ってしまった。
なんだか泣きそうな気持ちで彼を見上げていた。
レオは僕に向かって手を伸ばしてくる。一緒に行こう、と言う言葉を現すように。僕が手を取るのをずっと待っている。
直球なくせに、全然強引じゃない。先日みたいに僕の肩を掴んで引っ張ることだって簡単にできるはずなのに、切ないくらいに僕の気持ちを尊重してくれている。この人は僕が嫌だと言ったら残念だと素直に言いながら簡単に一人で歩き出すに違いない。絶対にそうだ。
「……ルカ?」
彼を見上げたまま動こうとしない僕に疑問を持ったのか、彼は不思議そうに僕を見下ろして首を傾げる。
彼は素手だった。白い手が赤くなっている。こんなに赤くなってる。こんなにこんなに、凍えている。僕を待っていたからだ。寒かったろうに。不安だったろうに。
僕なんか待っててくれたんだ。変な人だよやっぱり、レオって。
変で愛しいよ。
傘を肩に乗せて、僕はミトンの手袋を外した。差し出された手を温めるように両手で包み込む。
雪がふりしきっている。
白い吐息の向こう側で、レオが驚いたように目を見開いていた。目を閉じて彼の手の冷たさを感じる。酷く冷たい。
冬だ。
言葉で労うことができない僕の精一杯の労いだった。彼がどう思ったのか分からない。伝えたい言葉は選ぶことができないほど沢山あるのに、僕はその中のたった一つでさえも彼に伝えることができない。
声を失ってから、こんなにもどかしい気持ちになったのは初めてだった。
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