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しおりを挟む「つばき」
「ツバキ?」
「はなのなまえ」
僕はその後椿の植木に咲いている花弁を指差した。
レオは感嘆の小さな声を漏らしながら赤い椿の花を見ている。
「ふゆに さく はな」
「綺麗だ」
僕は同意の意味を込めて頷いた。僕も椿は好きだ。
「確かに椿は綺麗だったけど……」
手に刺激があったので何事かと思ったら、レオが僕の両手を包み込むように握り込んでいた。ペンの代わりにしていた雪玉がぽとりと落ちる。
「昨日、椿にキスをしていたルカが綺麗だった」
手が一瞬にして熱くなる。握る手がとても強い。
「一目見て恋に落ちてしまった。俺はルカが好きだ。一番に好きだと思った。あなたはとても美しい」
……なんかやっぱり、彼がいると騒がしい朝だな。
*.○。・.: * .。○・。.。:*
その日一日、朝、レオが僕に向けて言った言葉の意味をずっと考えていた。考えても考えても好きだという言葉の意味を履き違えることができない。だって彼ははっきりと恋に落ちたと言ったから。とんでもないことになってしまったな。
告白されたことなんて今まで生きてきて一度もない。スクールカースト的側面から見ても僕は到底モテるような地位にはいない。僕からも誰とも関係を持とうとしていなかったのだから当たり前だ。それに綺麗だとか、美しいだとか……僕男なんだけど……でもあんな真剣な眼差しを向けられてしまって、なんか、こう……胸が、すごく変だよ今。
モテるヤツは息を吸うように努力をしているものなんだと思う。だから尚更思うのだ。なぜ僕なのか。分からない。椿が僕以上に似合う人間なんて、他にもっとたくさんいると思うんだけど。あまつさえ、女子の方がずっと映えそうなものだ。
それに……僕は喋れない。
……昼休みはレオから逃げるように図書室に引きこもり遭遇を回避し、六限目が終わったところで、なんかこう勘違いとかそういう類のものなんじゃないかということで落ち着いた。
きっとそうに違いない。そう思ったらやけにスッキリした。爽快な気持ちで家に帰って風呂に入って寝た。
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