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しおりを挟む「はる あき ふゆ」
「春と秋は経験したことがないな。素晴らしい?」
「はるはあけぼの あきはゆうぐれ」
「……どういう意味?」
僕ははぐらかす。文字じゃ上手に説明できそうにない。そうしたらレオが楽しそうに首をすくめて笑った。
校舎裏の塀が言葉で溢れていく。僕の言葉だ。僕がレオに向けて紡いだ言葉だ。
言葉が誰かに届くのが楽しくて嬉しい。調子に乗っていろんなことを書いた。
「じゃあ好きな食べ物は?」
「だしまきたまご」
「分かる、この国のソウルフードというヤツ、だね? 醤油をつけるの?」
「だいこんおろし しょうゆ」
「ダイコンオロシ……? 大根?」
「だいこんを すりおろす」
「食べてみたいな」
「おいしいよ」
僕は続けて塀に文字を書く。
「れおは?」
僕のたった三文字の質問に対して、レオはとても丁寧に答えてくれた。僕はそれを聞いているだけで楽しい。会話しているのが楽しい。
僕、会話してる。会話してるよ……!
「この雪だるまはルカが作ったの?」
椿に隠れている雪だるまを指差して彼が言う。
「そうだよ」
僕はそう書いて、その隣の三段の雪だるまを指差した。
「これ? これは俺が作った。マミコがうるさかったから逃げた。そしてここに来た。雪だるまを見つけた。孤独でかわいそうだったから、俺が隣にこれを作った」
マミコというのは鳥口のことである。レオはさらっと言っていたけど、今の言葉、鳥口が聞いたら随分ショックなんじゃないだろうか。知らないけど。
「今朝ここに来たら隣にこれがいた。雪だるまは分かる。故郷にもある。でもこれは知らない。これはなに?」
「ゆきうさぎ」
「雪うさぎ、うさぎか……。可愛い。ルカに似ている」
「そうかな」
「そうだよ。この赤はなに?」
レオは雪うさぎの隣の赤い花びらを手袋越しに摘まんで持ち上げる。
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