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しおりを挟むどういうわけか今、僕の席の目の前にレオくんが座っていて、至近距離から穴が開くくらい僕を見ている。
レオくんは今朝見た色の瞳と今朝見た眉目秀麗さと謎の親近感で僕の顔をじっと覗き込んでいた。美人の真顔は精神的にくるのでできればやめて頂きたい。加えて女子の視線が痛すぎるほどに痛いので勘弁してほしい。
僕はなにも言えずに膝に置いた手をグーにして汗を握りながら机の木目に必死で目を向けていた。若干震える。
女子がレオくんレオくんと僕と彼の周りを囲んでいる。四面楚歌だよ。もうレオくんだけでやってくれ。僕は関係ないだろ。僕を巻き込まないでくれ。
レオくんも女子の相手をしてくださいよ。なんで無視してるんですか。僕なんかうっちゃっといてくださいよ。なんなんですか。なんのようですか。
「今朝花壇に座っていたのはあなた? 外にいたよね、窓から見えた」
何時間経っただろうというくらい窮屈だった無言の時間を、レオくんの声が引き裂いた。僕の肩はビク、とあからさまに跳ね上がる。
僕は変わらず机と睨めっこしながら首を横に振った。レオくんがなんの予備動作も無しに僕のボディランゲージに反応する。
「あなたは嘘をついている。違う?」
女子が、なにどうしたの、とヒソヒソ話を始める声が聞こえた。レオくんは少しも動じない。女子に弁明するつもりも、取り繕う気もないらしい。
視線を痛いくらいに感じた。一センチでも動くことができない。
もうあっち行ってよ。
……僕を一人にして。
「レオくん、浅見くんと友達なの?」
女子の誰かが言った。この声は後ろの席の笹沼だ。
「いいえ」
疑問がクラス中に伝播する。
「それならどうして話しかけているの?」
なにも言わないでほしい。僕のことをなにも言わないで。朝どこでなにをしていたとか僕の行動とかそういうことを言わないで。聞かれたくない。僕はレオくん一人に分かるように視線だけをそっと彼の方に向けた。前髪の向こうからレオくんが僕の視線に気づいたことを感じとる。
そうしたらレオくんは聞いたことない言葉を小さな声で呟いた。それは魔法みたいに僕の耳に聞こえる。いつも聞こえてくる声よりずっと優しかった。なんて言ったのかは分からない。多分左の方の言葉だ。僕が知るわけもない。でも優しかった。それだけは分かった。
彼はおもむろに立ち上がったようだ。やっといなくなってくれるとホッとしたのも束の間、僕の腕を掴んで引っ張る。僕は引き摺られるようにして立ち上がった。
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