103 / 103
9
応援してる
しおりを挟むずっと謝られ続けるような気がして、春人は野乃花の言葉を遮る。
「僕も悪かったし、野乃花ちゃんに言われて……気づいたこともあったから」
ぎこちない笑みしか作れなかった。
この気持ちは嘘ではない。野乃花の言葉にはっとさせられたことは本当だった。それにもう終わったことだ。後腐れなく終わらせたかった。今は今ある幸福感だけを感じていたい。過去のことはもういい。
「安形くんに言われた……私は私で、安形くんは安形くん……って」
野乃花は呟くように言った。その言葉は確かにミチルも音楽室で言っていた。
「私、それの意味が分からなかったの。初めに言われたときは振られたってことしか分からなかった。でも、安形くんに、あなたの居場所を教えて欲しいって言われた時、その時になってやっと分かった……好きって、ああいうことを言うのね……。私、自分が安形くんのことを好きなのか、好きでないのかも、よく分からなくなっちゃった。馬鹿だった……私は私なのに……私は、ずっと……ママと私を、一緒にしていたみたい」
彼女は自分を嘲笑うように笑った。とても醜い笑みで見ていられない。美しい顔立ちが余計に仇になっている。
不意にねえ、と話しかけられた。
「ねえ依田くん……あなたはあなたで、安形くんは安形くん……分かるわね?」
春人は頷いた。
言葉通りの意味なら把握できる。
「分かる」
「それなら大丈夫」
彼女は病み上がりの重病患者が笑った時のような笑みで春人に笑いかけてくれた。
「頑張って……応援してる」
なにか深い意味があるように思われた。
だから、追求はしなかったけど心に留めておくことにした。
野乃花の話は終わったようだったけれど、野乃花は春人が出ていくまで動かないでいるとでもいいたげに、頑なに座っている場所に留まっている。このまま出ていくのは簡単だった。でも彼女を置いて帰るのはちょっと違うんじゃないかとも思う。
0
お気に入りに追加
33
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ちなみに
4の行ける
です
すみません。
少し気になったので書かせていただいています。
はちみつみたいな色の黒髪
はどんな色だ?
と思ってしまいました。
失礼しました