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どこだって行くよ
しおりを挟む離れたくないと思った。このままアイスクリームみたいに溶けてぐちゃぐちゃに混ぜ合わさりたいと思う。胸の底の方から、津波のようになにかがせり上がってくる。
唇が離れた後、二人で深く息を吸って、しばらく見つめ合った。
彼のことが好きという気持ちが溢れて止まらない。そして溢れるこの思いを、誰にも邪魔されず、後ろめたさもなく、素直に受け入れられる今が堪らなく幸せだった。
ちょっといじわるしたくなる。
「今日は……これ以上しないよ……?」
そう言って彼の胸に顔を埋めた。胸板に手を添えて、服をぎゅっと握る。
「ずっと、抱きついて……たいの、だめ……かな……」
彼を見上げた。彼もくすくす笑ってる。
「いいよ」
さっきのお返し、と言うように、春人はミチルの唇に人差し指を添える。
「お、あ、ず……け……」
ミチルは深いため息を吐いた。そして強く抱きすくめられる。
「くらくらする」
苦笑する彼に擦り寄って、春人は満足げに笑って目を閉じた。彼の香りと、温もりと、心臓の鼓動が、すごく心地良い。
「一緒に昼寝しよっかあ……なんか俺も……疲れちゃった……緊張した」
抱き締められたままベッドに横になった。すとん、と体がベッドとシーツの中に落ちていく。ちょっと動いただけだけれど、やっぱり少し疲れたみたい。
「おやすみ」
額にキスを落とされた。
「大好きだよ」
ちょっと掠れた声で言われる。僕も、とまどろみの中で呟いた。
「……春人」
なに、と寝言のように言う。
「元気になったら、一緒に来てほしいところがあるんだ」
頷いた。どこだって行くよ。連れてって。ありがとう、と彼が言ったのを聞いたのを最後に、春人は健やかな眠りに落ちた。
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