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ずっとキスをした
しおりを挟む「ミチルでいいよ……呼んでみて?」
春人はおかしくて笑った。過去にも一度聞いたことがあるような言葉だなあと思う。黙っていたらミチルがいじけたような顔をする。それもおかしかった。
「ミチル」
綻ぶ彼の満面の笑みが愛しい。名前を呼ぶだけでこんなに笑ってくれるなら死ぬまで名前を呼んであげたいと思う。
「なあに、春人」
「誕生日、おめでとう……ございました」
ミチルがぽかん、と口を開けた。でもそれは一瞬で、彼はすぐに破顔する。
「ありがとう」
照れくさそうに笑う彼の首に腕を絡めて引き寄せた。その瞬間、体にヒビが入ったかのように痛みが走って、つい呻き声を洩らしてしまう。ミチルが心配そうな顔をして春人の顔を覗き込んだ。
「痛いね……可哀想に……当たり前だよ。せめて今日はゆっくりして……でも、早く治るといいね」
ミチルの手が首に絡まる春人の腕を解こうとしてくる。寝かせようとしているんだとすぐに分かった。春人はそれが面白くない。抗って体を近づけた。ミチルが慌てているのが分かる。
「嫌、キスしたいの……だめ……?」
即席のプレゼントのつもりだった。素直に受け取って欲しい。このひと時だけは病人扱いしないで欲しい。
そういう抗議の目で見つめながら、春人はわざと誘うように艶っぽい声で囁く。痛みが響かないように、ベッドの上でゆっくりと膝立ちして、ミチルの顔を上から見つめた。
「ねえ、ミチル……させて……お願い」
ミチルがすごく困惑しているのが分かった。可愛い。
「ずるい」
彼が困ったように笑う。その頬に手を添えて春人はミチルの唇にそっと唇を寄せた。上唇を食む。彼の唇は薄くて、花びらを食んでいるようだった。目を開くと、ミチルと目が合う。彼は春人を抱き寄せた。ガラス細工を相手にしているような繊細さだった。
それからまた唇を重ねた。
割れたところに舌を滑り込ませる。彼の舌と重なる。唾液が交わった。春人は顎の角度を変えて、さらに深くミチルの口を塞いだ。キスを目一杯堪能させるように、舌を絡めて吸い、吸っては絡めた。ミチルも同じようにしてくれる。
「ん、ンっ……んぁ……」
舌を吸われる度に、甘い刺激が後頭部を揺さぶって意識が遠のくような感覚に溺れる。春人もそれに応えるようにミチルの舌を吸った。顎を伝う唾液が、二人の間落ちていく。
そうやって、ずっとキスをした。
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