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Ⅶ
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しおりを挟む「相手が俺に思わせぶりな態度を取られたと思うのなら、そうなのかもしれない。通話中も言ったけど、ちゃんと白黒つけたし、もうあの子達には彼氏いるし」
やれやれ、って感じで肩を竦める。
「彼氏が欲しいだけ、俺じゃなくてもいいんだよ」
なんか恥ずかしくなってきて、僕は言い訳がましく御託を並べたてた。
「別に僕に会うまでに誰かと恋をしていたって構わないよ。そこにこだわりはない。僕だって、こう言うのはどうかと思うけど、不本意ながら蕗ちゃんと手を繋いで歩いたりしたし……でも僕の知っている範囲でそういうのがあるとすごくやきもち妬く、自分でも引くぐらい妬いてる、こんな気持ち初めてだよ。君はすごく手馴れてる感じがするんだもん」
僕は振り返って彼の顔を見た。
翔は少し驚いたように目を見開いて僕の言葉を聞いていた。
浮き出た首筋をなぞられる。
「……キスしてみる?」
「え?」
顎を掴んで顔を引き寄せられたと思った瞬間、呆気なく唇が重なった。
彼の唇の柔らかさはすぐに離れていく。
「……ぎこちないでしょ」
僕は息苦しくなるほどに高鳴った胸を押さえつける。
翔は僕を見ていたけれど、すごく恥ずかしそうだった。表には出さないけど、モジモジしているのがすぐに分かった。
「……分かんないよ、初めてだから」
「俺も分かんない、初めてだから」
二人で顔を見合わせていたけれど、そのうち耐え切れなくなって笑った。
「だけどなんとなくキスの仕方が分かったかも?」
翔は考えるように口元に手を当てて視線を上に向けた。医学部現役合格する人は勉強熱心だなあ?
「ぜんっぜん甘酸っぱくない、キスってこんな感じなんだ」
僕は笑いの延長でそう言った。
それで、これなら僕でもできそうって思った。
それを言おうと思ったら、翔が僕の頭を抱き込む。口付けられた。
僕にはさっきのキスの知識しかないので、またすぐに離れると思ったんだけど、翔の顔でできた影はなかなか僕の視界から消えなかった。
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