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Ⅶ
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しおりを挟む「あんなに啖呵切ったけど、正直明日から気まずいな」
僕はバツが悪くなって笑った。
「大学で絶対に白い目で見られる、構わないけど」
「大丈夫、俺が守るよ」
翔はあっけらかんとそんなことを言う。
僕は目を見開きながら彼の顔を見上げた。彼は少しも冗談を言っているような雰囲気ではない。
「毎日僕の引率をしてくれるっていうの」
冗談で言ったのに、翔は真面目腐った顔で頷く。
「いいよ、もちろん、なんなら一緒に住んでもいい」
「君の生活はどうなるの」
「なんの問題もない」
「……どうして?」
「俺も優月と同じ大学に通うから」
「……え?」
考えもしなかった答えが返ってきて言葉を失う僕に、翔は嬉しそうに目を細めて元気よく笑うんだった。
「受験受かった」
ピースまでしてる。
「もうすぐピカピカの一年生だよ!」
開いた口が塞がらない。言いたいことがたくさんあるけど整理するのに時間がかかるので、とりあえず取り急ぎ、おめでとう、と動揺する気持ちを落ち着かせて言った。
翔はありがとう、と言う。
「僕と君がこの街で初めて合った時、この街に来ていたのは、そのためだったの?」
「うん、試験会場の下見で用があった」
「でも君、マダムのお店に泊まっていたよね?」
「うん。ノエルに会ったからね。その週の週末に試験だった」
「ばかなの?」
「ばかでーす!」
「学部は?」
「医学、小児科医になりたいんだ」
信じられない。いろいろな意味で信じられない。
他愛ない会話みたいに振舞っているけど、与えられた情報量が多すぎる。
彼が僕の後輩になるのだということもびっくりだ。でも、だとしたら年上だと思っていたかと言ったらそうでもない。同じ歳、って感じでもない。年下って言われるのが一番しっくり来るような気がする。今までも子どもっぽいな、あどけないなって思う一瞬はあったけど、そういう理由だったのか、って妙に納得した。
いくつでも翔は翔なんだ。
そしたら落ち着いてきた。
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