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Ⅵ
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しおりを挟む「この間駅で君の顔を叩いてごめんなさい」
僕は齟齬がないように先週起きたことをはっきり言った。翔は簡単に理解したような顔をして言う。
「ああ……いやあれは、俺が悪かったし……優月の気持ちを、全然考えてなかったっていうか」
「いや、それは違う」
僕は彼を真っ直ぐ見据えて言う。
「なにはともあれ手を出した方が悪い。だから僕が悪い。本当にごめんなさい。口で言えばよかったんだ、恥ずかしいって……君のことは嫌いじゃないけど、心の準備ができてないって、それを言う勇気が僕になかったのがいけなかった」
僕があんまり真面目だからか、翔は別にいいのに、と言ってため息をついたあとに渋々
言った。
「……いいよ。そこまで言わせてしまって悪い……俺も軽率だった、ごめんね」
僕はいいよ、と彼に言う。そして鞄から彼の割れた眼鏡を取り出して差し出した。
「それから非常に申し上げにくいのですが眼鏡壊しました、ごめんなさい」
「あはは! ヒビ入ってる! 眼鏡って割れるんだね」
翔は思い出したようにそれを見ると笑った。
「代わりのものなら僕が用意する」
「いいよ、伊達だし……必要のないものなんだ」
いや、と僕は彼の申し出を断る。
「できれば付けて欲しい、今後も……君が了承してくれるなら」
「どうして?」
「翔は目を惹くから」
「……え?」
「……僕は気が気じゃなかった、あの、絹って、女の人が、君を引き摺って電車に乗ってから……僕……その……ごめん、うまく言えないんだけど……雑誌も見たよ。かっこよかった。それで僕、もっと思った……翔が……」
溢れる想いを上手く言葉にできなくてもどかしい。
怖いものがないって、こんなに清々しい。
僕は嘘を吐かなくて良い。
誰にどう思われても構わない。
自分に素直になっていいんだ。
それを一番堰き止めていたのは僕自身だった。
目の前の彼を見据えた。
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