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Ⅲ
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しおりを挟む僕のランドセルは赤かった。服も赤いランドセルを背負う人たちが着るみたいな服ばかりを買い与えられていた。言動や嗜好も矯正された。心を殺せば、初めはまあ悪くはなかったけど。もともと体が弱くて小柄だったから……でもだんだんそうもいかなくなってきた。
僕は昨日の僕よりも成長するから、一昨日の僕よりも身長も伸びるし、大きくなるから、それに伴って、僕を見る周りの目も変わっていった。
虐げられるたびに思った。
僕は普通になりたかった、って。
周りの全員がありきたりと思えるような格好で、平凡な日常を、素直な心で生きてみたかった。
でも僕が望む普通は母にとっては異常だ。これ以上母に愛想をつかれることは嫌だった。でも周囲から虐げられることにももう限界だった。
僕の年齢が二桁になって何年かたってちょっと過ぎたころ、見兼ねた母が僕を全部諦めて祖母の家に置いていった。
僕が悪かったのか? 僕が大人になるから?
僕が女の子じゃなかったから?
父親似の僕は、母にとっては最早、愛せない存在だったのか?
拙い思考と内言語で、ずっとそんなことを考えていた。
川のせせらぎと木漏れ日の中で堂々巡りの如何しようも無い事ばかり考えていると自然と涙が溢れてきたけどそのうち体全ての感覚がよく分からなくなって、自分がどこにいるのかも分からなくなっていった。
僕は僕が分からない。
僕が望む僕も分からない。
母が望む僕になれない僕なんて生まれてこなければよかったのだと思っていた。
彼に髪を切られるまでは。
彼っていうのは、僕に石を投げた子とは違うことはわかった。でも僕に石を投げた子と一緒にいる子っていうのも分かった。
僕は10と幾つにしては痩せぎすで病弱で幼すぎたし、彼は多分僕より随分大人びて見えた。
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