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第一章

ノネット村への帰還

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 イツキ達は村人全員に見送られ、イオアニス村を後にした。
 村を出る前にイツキはこう思っていた、双子の姉妹はさぞ不安だろうと。
 何故ならミア・ミラの二人は村から出る事すらそんなに無い事だと聞いていたし、親を亡くし、家まで焼かれている。
 そしてこれから住み慣れた村を出て、エルフがいない周りには人間しかいない中で生活して行かなければならないのだから。
 ところが、イオアニス村を出て少し経つと、二人は好奇心が赴くままに、あっちに行ったりこっちに行ったり、突然走り出したり、道から外れて茂みの中に入って行ったり、イツキの心配をよそに自由奔放だった。
(まったくもぉ、こっちの心配も知らないで、相手してられん)
 イツキ「そんなに道草ばっかり食ってると日が暮れちまうぞ、先に行くからな」
 ミア 「ミラ、お兄ちゃんが私達を置いて行っちゃうんだってぇ」
 イツキ「はぁ?」
 ミラ 「私達を助けてくれるって言ってたのに、やっぱり所詮は他人って事なんだね」
 イツキ「もしもしミラさん、結構な毒を吐いてませんかねぇ」
 そしてミアがミラの手を取って。
 ミア 「そうよ、結局私達は天涯孤独の身、二人きりで生きて行かなければならないのよ」
 ミラ 「簡単に人を信じちゃダメって事なのね」
 イツキ「あ~っ、もぅ、分かった分かった、オレが悪かったよ」
 ミア 「じゃぁおんぶ」
 ミラ 「だっこして」
 イツキ「はい?」
 ミア 「お・ん・ぶ」
 ミラ 「だ・っ・こ」
 イツキ「はぁ、おんぶとだっこを同時になんて出来ないから、これでいいか?」
 そう言うと、イツキは二人を両肩に担ぎ上げた。
 ミラ 「うわ~、たかい、たか~い♪」
 ミア 「すごい、すご~い♪」
 イツキ「お気に召したようで何よりだ」
 イツキは二人のご機嫌を取りつつ暫くそのまま歩いて行った。
 そしてノネット村の近くまで来ると、二人を下ろした。
 イツキ「やっと着いたな」
 そう言いながら首を鳴らし、伸びをした。
 ミア 「またイツキの肩に乗せてね」
 ミラ 「私もまた乗りたい」
 イツキ「そうだな、二人がいい子にしてたら乗せてやるよ」
 ミア 「やった~♪」
 ミラ 「わ~い♪」
 二人は飛び跳ねて喜んでいる。
(やっぱりまだまだ子供かぁ、まっ、オレも子供
ガキ
だけどな)
 三人は並んでノネット村に入った。

 イツキを見つけた村人たちが次々とイツキに声を掛ける、勿論、感謝を述べる為に。
 イツキはそれに答えながら村長の家に向かった。
 家の前に着くと、ヴィレムが立っていた。
「よっ、村長は中にいるかい?」
「やっと帰って来たな、母さんなら中にいる、それとなぁ、あれから大変だったんだぞ、後始末はお前がやれよな」
 そう言ってヴィレムはどこかへ行ってしまった。
 イツキはなんの事だか分からなかったが、家の中に入り村長の部屋の戸をノックした。
「誰だい?」
「イツキです、ただいま戻りました」
「いいよ、入んな」
 イツキが部屋に入るとミカネルが村長の肩を揉んでいた。
 それだけならいいのだが、イツキは変な違和感を感じた。
 イツキ「あのぉ~村長、最初に一つ質問してもいいですか?」
 リーナ「ん?なんだ」
 イツキ「確かにイオアニス村に行く前に、そいつの事を頼みましたけど、何故に首輪をして鎖に繋がれているのかなぁ?なんて思いまして」
 後ろでミカネルが泣いている。
 リーナ「あぁ、これか?お前にこいつの事頼まれたからな、私の従順たる犬にしたのさ」
 イツキ「はぁ、そうでしたか」
 リーナ「本当はなぁ、犬は服なんて着てないだろ?だから全部脱げって言ったんだが、アシリアに止められちまってな、まったく」
(アシリアありがとう、村長を止めてくれて)
 ミカネル「主、助けて下さいよぉ」
 リーナ「おやおやぁ、犬は人の言葉なんて喋らないよなぁ?」
 ミカネル「!!」
(これは犬というより奴隷か下僕じゃん、ご愁傷様)
 イツキが憐みの顔をミカネルに向けると、一生懸命助けを求めている。
 リーナ「ほらっ、手が止まってるじゃないか」
 そう言って鎖を引っ張った。
 ミカネル「キャイ~~~ン」
(あんた、まだ時間そんなに経ってないのに、キャラ設定変わってない?それに村長、犬は肩なんて揉めないよね?なんて言えないけど)
 ミアとミラは怖がってイツキの後ろに隠れてしまった。

 そこにアシリアとヴィレムが入って来た。
 アシリア「イツキが戻って来たって?」
 イツキ「よっ」
 ミア 「お姉ちゃん」
 ミラ 「お姉ちゃん」
 イツキの後ろから二人が声を上げた。
 アシリア「あらぁ、ミアちゃんにミラちゃんじゃない、二人共どうしたの?」
 リーナ「そんじゃ、そろそろ本題に入ろうか」
 そう言うと村長はイツキに話をするように促した。
 イツキは一連の話をリーナ達に話して聞かせた。
 その話をイツキが終えるまで全員が黙って聞いていた。
 リーナ「なるほどねぇ、お前はイオアニス村で一暴れしてからエイデンに言われて引き返して来てくれたって事なんだな、これはエイデンにも感謝しなくちゃならんな」
 イツキ「イオアニス村の村長も同じ事を言ってたなぁ、リーナ殿に感謝しなくては、ってね」
 リーナ「そうか、まぁ礼は後でするとして、私からも一つお前に話がある」
 イツキ「えっ、何でしょう?」
 リーナ「実は、お前が倒した窃盗団の三人とコイツを含めた四人には国から懸賞金が掛けられていてな」
 そう言うと村長はミカネルを指さした、ミカネルはビクついている。
 イツキ「へぇ~、そうなんですか」
 リーナ「それで昨日お前が村を出て行ってからすぐに国王宛てに書状を書いて持って行かせた、早ければ明日にも使いが来るだろう」
 イツキ「はぁ」
 リーナ「おそらく私は城に行く事になると思う」
 イツキ「そうなんですかぁ、大変なんですねぇ、村長って」
 リーナ「何を他人事の様に言っている、お前も一緒に行くんだよ」
 イツキ「えっ!」
 リーナ「これは確定事項だ、だいたい倒した本人が行かなくてどうする、何か言いたい事は?」
 イツキ「ありません!」
 リーナ「よろしい、で、そのエルフの二人は?」
 イツキ「あ~、あのですね、エイデン村長に頼まれましてですね、オレが面倒を見る事になりまして」
 リーナ「ほぅ、あのエイデンがねぇ」
 イツキ「そうなんですよぉ」
 リーナ「そうゆう事ならほっとく訳にもいかないねぇ、とりあえず客間がもう一つあるから、そこを使わせてやるとしようかね、落ち着いたらまたどうするか考えるとしよう」

 城からの使いが来たのは、この日より二日後だった。
 城へ行くのは結局、村長とイツキ二人に決まった。
 ミカネルをどうするか少し揉めたが、置いて行く事にした。
 ミアとミラも一緒に行くと聞かなかったが、なんとかなだめた。
 イツキは城へ行き、少しだけ褒美を貰って帰ってくるだけ、と楽観的な考えだった。
 しかし村長であるリーナは、少し嫌な予感がしていた。
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