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第二章

第八話

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「よし、まずはギルドに行ってギルド証の更新をしよう。」

パルムの街の美しい中世風の建物を見渡しながら一行はギルドへと向かう。

ここでもやはりギルバートを見ると周りがすぐにざわつき出す。

「ギルバートさんっていつもこうなんですか?」

智也が尋ねる。

「そうだなぁ、世界中にあるギルドからハンター達に情報は拡散されていくから、ギルドが合法的に認められている国は大体こんなもんだね。

いつもこんな感じだと嫌でも慣れてしまうね。」

「非合法の国もあるんですか?」

「ほぼ無い。

が、極たまに王様が全ての国民を支配する前時代的な国もあって、そこでは自由が売りのハンターは基本的に邪魔者扱いされて非合法にされているってわけさ。

まあそういう国は基本的に入るのも出るのも面倒だから行かないし、私達は行かないよ。」

「そうなんですね、あ、あれがギルドじゃないですか?

前に寄ったタレスのギルドには悪いですけど比較にならないくらい豪華絢爛で大きいですね!」

「まあ国内最大のギルドだからね。

財力を見せつけて、他勢力に対しての一種の牽制をしているのさ。」

「ここに来るの久しぶりだな!ギル!

あのおっちゃん今日いるかな?」

「こらこら、ギルドマスターをおっちゃんなんて呼んだらいけないよ。

マスターは忙しいからなぁ。あまり期待しない方がいいんじゃないかな。

うん、今日は会えないよ。」

************

大きな扉を開けてギルドへと入った。

流石のギルドの総本山の受付嬢である。

ギルバートが来たことに驚きはしても取り乱したりせず落ち着いている。

すぐに三人はギルド証の更新をした。

すると、やはり智也のハンターランクが上がった。

「智也様、おめでとうございます。二段階昇格で五級ハンターとなりました。

受けられる依頼も増えますが、その分厳しい魔物の討伐が多くなりますので、ご注意ください。」

「智也くんおめでとう。」

ギルバートが智也の昇格を祝った。

「五級じゃまだまだだな!

これからがキツいんだぜ!」

ロビンは負けず嫌いを発動し、素直に褒めない。

「そうだね、まだまだだから頑張るよ。」

智也は答えた。

「ロビン様にもお知らせがございます。

現在の貢献度ですと、もうしばらくすると二級昇格試験の権利を得る見込みとなっています。

貢献度が基準に達しましたらまた詳しいお知らせが伝えられると思いますので、宜しくお願いします。」

「やったぞー!」

「あれ?ロビン、僕は盗賊とスモールボアの件で何もせずに昇格したけど、昇格試験なんてあるの?どういうこと?」

「あ、なんだその話か!

前にも言われた、三級からランクの降格がなくなるって話を聞いたと思うんだけど、あれに関係するんだよ。

僕が自分でいうのも変だけど三級って結構凄いランクで、手厚い優遇を受け始める級なんだ。

そんな人達がわんさかいるとみんな困るから変なやつを弾く試験を四級から上に上がるときにあるんだ。

前回の三級試験は楽だったけど今回は難しいんだろうなー。」

とはいうもののウキウキでニコニコが止まらないロビンであった。

「さて、更新も終わったし、早く、ここから出ようか!」

何故かギルドに来てからギルバートは口数が少ない。

心なしかここから離れたがっている気がする。

「まあ、もう用事もなさそうですし、食事にでも行きましょう」

智也がいうと

「ハハ、そうだね!

お腹すいたなぁ。そうだ!お気に入りの肉料理を出す店が近くにあるんだ。

なくなる前に早く行こう!」

「おう!良いことを聞いた!俺にも教えてくれよ。そんなに早くここを出て行きたい店をな!」

ギルバートは壊れかけのロボットのように首をカクカクと捻り、声のする方を向いた。

「おっちゃん!

元気してたか!」

「ロビン、またお前背が伸びたんじゃないか?もうじき二級に上がりそうな勢いだし師匠の師匠としては嬉しい限りだな。

ガハハハハハ!」

2mをおそらく越すであろう大男が肩にロビンを乗せ話している。

「久しぶりだな、ギルバート。」

「ア、ハ、ハ、ハハハッハハハッハ。

オヒサシブリデスシショウ。」

バシンバシン!

久々の再会に強烈な張り手がギルバートの背中を襲う。

「もしかしてギルバートさんはギルドマスターの弟子だったんですか?!」

「そうだぞ!坊主!

こいつは小さい頃泣き虫ギルちゃんって言われて周りから可愛がられてたんだけどな。

図体ばっかでかくなっちまったけどまだこの様子を見る限りひよっこに変わりねえな!」

こうして豪快なギルドマスターと一行がギルドをざわつかせ始めたのだった。



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