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35 目的地への道のり
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大樹を目指すデート(ほぼ小旅行)は、途中、周囲にグレンノルトの正体がバレそうになったり、俺が迷子になりかけたりしたが、何とか順調に目的地へと向かっていた。予定では、王都を出た後、いくつかの場所や町を見て回りながら、一日かけて大樹のある森を目指し、夕方から夜にかけて森に到着。大樹を見た後近くの町へ行き、一泊してから王都に戻るという流れになっていたが、どうやら予定よりも少し遅れ気味らしい。
「俺がグレンと離れて、勝手に迷ったからですよね……」
「大丈夫です、違いますから安心してください。城を出るのが遅れただけですから」
優しく笑うグレンノルトに、俺は余計に反省の気持ちが深まる。見慣れない食べ物に気を引かれて離れてしまうなんて中学生でもしないぞ多分。王都を出て、いろんなところを見て回るのが楽しくて、気が緩んでいたなと俺はため息を吐いた。
「本当に大丈夫ですよ。全く問題ありません。大樹のある森に辿り着くのが遅れても、それも想定内ですから」
「そうですか……そう言えば、森に着くの夕方の予定でしたよね。暗いと大樹の新芽も良く見えないんじゃないですか?」
「それは……えっと、見てからのお楽しみということで」
俺だって鈍感じゃない。何かあると分かっていながらも、ここは「分かりました」と流すべきなんだろう。丁度よく待っていた馬車も来たところだったし、俺たちは大樹の話を一旦置いて、次の町を目指した。
*
訪れた町はどこも楽しく、それぞれに違った魅力があった。そこら中で音楽が奏でられ歌やダンスが楽しい町、ガラス張りの大きな図書館が町の中央にあり魔法の研究が盛んな町、国の様々なところから食べ物が集まり国の台所と呼ばれる町……どの町がどんなところなのか、本で読んで何となくは知っていたけど、実際を目の当たりにすると本からだけじゃ分からない魅力を感じることができた。
「どうかしましたか? 何やら楽しそうな様子で……」
「どの町も良いところだなって思ってました。城にいるだけじゃ、やっぱり分からないことばかりですね」
城を出て城下町を見て自分の世界が広がった。そして今、王都を出ていろんなところを見て、この世界の広さを実感した。音楽も魔法も食べ物も、俺のいた世界にはないものばかりだった。
「もっと……もっと見てみたいです。この世界のいろんな場所」
同じ国の中だけでもこんなにもいろんな場所があるんだ。他の国、他の大陸に行ったら、どんな面白い場所があるんだろう。想像するだけでも楽しかった。
「……」
「あ、次の町が見えてきましたよ! 大樹のある森はあの町から歩いて行くんですよね」
「はい……そうですね。森に行くのは、宿を取って荷物を置いてからにしましょう」
俺はグレンノルトの言葉に頷いた。確かに、訪れた町で買い物をしてきたせいで、荷物が多くてこのまま歩くのは大変だ。荷台の窓から外を見ると、空は暗くなり始めていた。
(時計塔を上ったときの空みたいだ……)
宵闇、と言うのだろうか。夕方から夜にかけて薄暗くなる空を見て、思い出すのは時計塔の頂上から見た景色と、グレンノルトのやり取りだった。告白されて気づいたら付き合うことになってて……でも結局、彼と付き合っていることに不快感を覚えたり別れたいと思うことはないってことは、心のどこかで俺も彼のことが好きになっていたのだろうか。
(「好き」……そういえば、グレンノルトは俺のどこを好きになったんだろう)
彼に尋ねてみるか? いやそれは、流石に恥ずかしい。自分だって彼のどこが好きかなんて言葉にできないのに、「俺のどこが好きなんですか」なんてわざわざ訪ねるのは正に面倒くさいやつじゃないか。
「……大樹の新芽、楽しみだなぁ。早くみたいです」
今は考えるのは止めておこう。俺は気を取り直しもう一度、夕闇に染まる窓の外を見た。
「俺がグレンと離れて、勝手に迷ったからですよね……」
「大丈夫です、違いますから安心してください。城を出るのが遅れただけですから」
優しく笑うグレンノルトに、俺は余計に反省の気持ちが深まる。見慣れない食べ物に気を引かれて離れてしまうなんて中学生でもしないぞ多分。王都を出て、いろんなところを見て回るのが楽しくて、気が緩んでいたなと俺はため息を吐いた。
「本当に大丈夫ですよ。全く問題ありません。大樹のある森に辿り着くのが遅れても、それも想定内ですから」
「そうですか……そう言えば、森に着くの夕方の予定でしたよね。暗いと大樹の新芽も良く見えないんじゃないですか?」
「それは……えっと、見てからのお楽しみということで」
俺だって鈍感じゃない。何かあると分かっていながらも、ここは「分かりました」と流すべきなんだろう。丁度よく待っていた馬車も来たところだったし、俺たちは大樹の話を一旦置いて、次の町を目指した。
*
訪れた町はどこも楽しく、それぞれに違った魅力があった。そこら中で音楽が奏でられ歌やダンスが楽しい町、ガラス張りの大きな図書館が町の中央にあり魔法の研究が盛んな町、国の様々なところから食べ物が集まり国の台所と呼ばれる町……どの町がどんなところなのか、本で読んで何となくは知っていたけど、実際を目の当たりにすると本からだけじゃ分からない魅力を感じることができた。
「どうかしましたか? 何やら楽しそうな様子で……」
「どの町も良いところだなって思ってました。城にいるだけじゃ、やっぱり分からないことばかりですね」
城を出て城下町を見て自分の世界が広がった。そして今、王都を出ていろんなところを見て、この世界の広さを実感した。音楽も魔法も食べ物も、俺のいた世界にはないものばかりだった。
「もっと……もっと見てみたいです。この世界のいろんな場所」
同じ国の中だけでもこんなにもいろんな場所があるんだ。他の国、他の大陸に行ったら、どんな面白い場所があるんだろう。想像するだけでも楽しかった。
「……」
「あ、次の町が見えてきましたよ! 大樹のある森はあの町から歩いて行くんですよね」
「はい……そうですね。森に行くのは、宿を取って荷物を置いてからにしましょう」
俺はグレンノルトの言葉に頷いた。確かに、訪れた町で買い物をしてきたせいで、荷物が多くてこのまま歩くのは大変だ。荷台の窓から外を見ると、空は暗くなり始めていた。
(時計塔を上ったときの空みたいだ……)
宵闇、と言うのだろうか。夕方から夜にかけて薄暗くなる空を見て、思い出すのは時計塔の頂上から見た景色と、グレンノルトのやり取りだった。告白されて気づいたら付き合うことになってて……でも結局、彼と付き合っていることに不快感を覚えたり別れたいと思うことはないってことは、心のどこかで俺も彼のことが好きになっていたのだろうか。
(「好き」……そういえば、グレンノルトは俺のどこを好きになったんだろう)
彼に尋ねてみるか? いやそれは、流石に恥ずかしい。自分だって彼のどこが好きかなんて言葉にできないのに、「俺のどこが好きなんですか」なんてわざわざ訪ねるのは正に面倒くさいやつじゃないか。
「……大樹の新芽、楽しみだなぁ。早くみたいです」
今は考えるのは止めておこう。俺は気を取り直しもう一度、夕闇に染まる窓の外を見た。
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