異世界に召喚され生活してるのだが、仕事のたびに元カレと会うのツラい

だいず

文字の大きさ
上 下
35 / 53

34 デート

しおりを挟む
ある日の勉強会。そう言えば予言はどれくらい解決したんだろうと気になった俺は、勉強が一息つくと同時に、グレンノルトに予言について尋ねた。

「時計塔と、大寿の新芽についてはもう解決していて……ああ、宝剣についてももうほぼ解決していますね。後は、大雨と川の氾濫、そしてリスの脱走ですね」
「重大そうなのと意味が分からないものが残りましたね」
「実は大雨も大体の予測はできているので、本当に何も分かってないのはリスだけなんです」

 リスが残っちゃったんだ……何も分からないということに少し不安を感じるものの、起こることといえばリスが脱走することだけだし。うまく危機感が持てない。

「大雨はいつごろ来そうなんですか?」
「月の終わりごろに。明日にでも国全体に警戒する知らせが出るはずです」

 月の最後の方に大雨が来るのか。なら、リスの脱走が大雨よりも先に来るのかな。

「やりたいことがあったら、今週中にやるべきですね」
「やりたいことか……グレンノルトは何かありますか? やりたいこと」

 俺がそう尋ねると、グレンノルトは手元に落としていた視線を俺に向けた。嫌な予感、と言うべきか、グレンノルトがこんな顔をするときは、俺が彼の言葉に恥ずかしがるときだった。

「トウセイ、デートしましょう。見つかった大樹の新芽がとてもきれいで、あなたに見せたいんです。少し遠出にはなるのですが……ああ、宿を取って泊りで行ってもいいですね」

 「ダメですか?」と尋ねられ、俺は「え、それは」と返事を迷ってしまった。だって、数日間グレンノルトとずっと一緒にいると言うことだろう。それは嫌じゃないけど、俺にとってとても大変なことだった。

「もしかして、嫌でしたか?」
「そんな! い、行きたいです。見たいです、新芽」

 グレンノルトは「良かった」と微笑むと、出かける日時を簡単に決めてしまった。朝出発して移動し、大樹の新芽を見る。そして宿をとって次の日帰ると言う予定だ。デートじゃなく、これはもう短い旅行じゃないか? 楽しそうにするグレンノルトはを横目に、俺は大変なことになったとため息を吐いた。

 *

 さて、出かける当日になった。荷物を詰めたリュックを背負い、部屋を出る。服装は動きやすいものが良いと言われたから、着慣れたいつもの服を着た。

「トウセイ、地図を見てください。この森にある大樹に新芽が出ました」

 グレンノルトは地図を広げ、そう言って南に位置する森を指さした。確かに、王都と森はかなりの距離離れている。グレンノルトは、徒歩を挟みながら馬車を乗り継いで森を目指すと説明してくれた。

「結構歩きますか?」
「もしかしてトウセイ、デートで疲れるの警戒してますか? あはは、大丈夫ですよ。途中町や村を通過する予定ですし、ほとんど馬車での移動ですから」

 グレンノルトは、「前回のデートの最後、大変でしたもんね」と言って笑った。別にそんな考えがあって聞いたわけではない。ちょっと気になっただけなのに。

(というか、あれデートだったんだ……)

 言われなかったぞ、デートって。いやでも最後に告白されたしな。デート……そっか、デートだったんだ。

「では出発しましょうか。あれ? 嬉しそうだけど、どうかしたんですか?」
「な、何でもないです!」

 俺は、「さあ早く行きましょう」とグレンノルトの背を押した。

 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

弟は僕の名前を知らないらしい。

いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。 父にも、母にも、弟にさえも。 そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。 シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。 BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。

消えたいと願ったら、猫になってました。

15
BL
親友に恋をした。 告げるつもりはなかったのにひょんなことからバレて、玉砕。 消えたい…そう呟いた時どこからか「おっけ〜」と呑気な声が聞こえてきて、え?と思った時には猫になっていた。 …え? 消えたいとは言ったけど猫になりたいなんて言ってません! 「大丈夫、戻る方法はあるから」 「それって?」 「それはーーー」 猫ライフ、満喫します。 こちら息抜きで書いているため、亀更新になります。 するっと終わる(かもしれない)予定です。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

今世では誰かに手を取って貰いたい

朝山みどり
BL
ノエル・レイフォードは魔力がないと言うことで、家族や使用人から蔑まれて暮らしていた。 ある日、妹のプリシラに突き飛ばされて、頭を打ち前世のことを思い出し、魔法を使えるようになった。 ただ、戦争の英雄だった前世とは持っている魔法が違っていた。 そんなある日、喧嘩した国同士で、結婚式をあげるように帝国の王妃が命令をだした。 選ばれたノエルは敵国へ旅立った。そこで待っていた男とその日のうちに婚姻した。思いがけず男は優しかった。 だが、男は翌朝、隣国との国境紛争を解決しようと家を出た。 男がいなくなった途端、ノエルは冷遇された。覚悟していたノエルは耐えられたが、とんでもないことを知らされて逃げ出した。

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...