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11 予言と花屋と橋と火事③
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「えっと、」
「……お世話になってる人に花を贈りたいんです」
店員は、「あ、ああそうでしたね!」と申し訳なさそうに笑った。正直言えば、もうここで調査を終えて帰りたいと思うほど、やる気をなくしていた。けれども、ここで帰ってしまえばあの男に譲ることになる。それは癪だった。
「あんまり派手すぎない、日持ちする花がいいですね」
「それなら、こちらのお花がおすすめですよ」
店員がおすすめする花を見ていく。中にはさっき紹介された、赤やオレンジのいろの花もあった。俺が花を渡したいのは、マーサとヘンドリックにである。ヘンドリックの好きな色は、残念ながら分からないが、確かマーサは黄色が好きだと言っていた。エプロンも黄色だったし。悩んだ末、俺は黄色とオレンジ色の可愛らしく明るい、小さ目の花束にしてもらった。
「ありがとうございます。すごく良い花が買えました」
「ふふっ、お渡しする方にもきっと喜んでもらえますよ」
俺はもう一度店員にお礼を伝えた。思いがけず、良い買い物ができた。きっと、マーサもヘンドリックも喜んでくれるだろう。そう思って店を出ようとして、俺は足を止めた。危ない、店に来た理由を忘れるところだった。
「すみません、少し気になったんですけど、さっき騎士団の方が来てたじゃないですか。何かあったんですか?」
俺がそう尋ねると、店員は「ああ、さきほどの」と頷いた。
「なんでも、不審火が増えてるらしくて、見回りを強化してくれてるんです。あとは、怪しい人がいないかって聞き込みも……グレンノルト様が直接来られたのは初めてですけど」
「なるほど……危ないですね」
町にある花屋の中で、川や水路の近くにあるのは、1店目のショップ・フローチェと3店目のフラワーショップ・シャレムだ。どちらの店でも、騎士団が見回りをしていた。
(やっぱり、騎士団もどの店で火事が起きるか分かってんじゃないか?)
分からないからこそ、予言された可能性の高い店をそれぞれ警備しているのではないか。俺はそう考えた。事実、店を出て確認したところ、フラワーショップ・シャレムの近くで水路に橋は架かっていなかった。「橋の近くにある花屋で火事が起きる」……この予言が外れることはないとして、それじゃあ一体どういうことなんだ。何か見落としていることがあるのか? 例えば___
(4店目の花屋がある、とか)
今朝、唐突に決まった調査だったが、これで終わりにはしたくない。明日からももう少し調べてみよう。俺はそう思い、家に帰った。
「……お世話になってる人に花を贈りたいんです」
店員は、「あ、ああそうでしたね!」と申し訳なさそうに笑った。正直言えば、もうここで調査を終えて帰りたいと思うほど、やる気をなくしていた。けれども、ここで帰ってしまえばあの男に譲ることになる。それは癪だった。
「あんまり派手すぎない、日持ちする花がいいですね」
「それなら、こちらのお花がおすすめですよ」
店員がおすすめする花を見ていく。中にはさっき紹介された、赤やオレンジのいろの花もあった。俺が花を渡したいのは、マーサとヘンドリックにである。ヘンドリックの好きな色は、残念ながら分からないが、確かマーサは黄色が好きだと言っていた。エプロンも黄色だったし。悩んだ末、俺は黄色とオレンジ色の可愛らしく明るい、小さ目の花束にしてもらった。
「ありがとうございます。すごく良い花が買えました」
「ふふっ、お渡しする方にもきっと喜んでもらえますよ」
俺はもう一度店員にお礼を伝えた。思いがけず、良い買い物ができた。きっと、マーサもヘンドリックも喜んでくれるだろう。そう思って店を出ようとして、俺は足を止めた。危ない、店に来た理由を忘れるところだった。
「すみません、少し気になったんですけど、さっき騎士団の方が来てたじゃないですか。何かあったんですか?」
俺がそう尋ねると、店員は「ああ、さきほどの」と頷いた。
「なんでも、不審火が増えてるらしくて、見回りを強化してくれてるんです。あとは、怪しい人がいないかって聞き込みも……グレンノルト様が直接来られたのは初めてですけど」
「なるほど……危ないですね」
町にある花屋の中で、川や水路の近くにあるのは、1店目のショップ・フローチェと3店目のフラワーショップ・シャレムだ。どちらの店でも、騎士団が見回りをしていた。
(やっぱり、騎士団もどの店で火事が起きるか分かってんじゃないか?)
分からないからこそ、予言された可能性の高い店をそれぞれ警備しているのではないか。俺はそう考えた。事実、店を出て確認したところ、フラワーショップ・シャレムの近くで水路に橋は架かっていなかった。「橋の近くにある花屋で火事が起きる」……この予言が外れることはないとして、それじゃあ一体どういうことなんだ。何か見落としていることがあるのか? 例えば___
(4店目の花屋がある、とか)
今朝、唐突に決まった調査だったが、これで終わりにはしたくない。明日からももう少し調べてみよう。俺はそう思い、家に帰った。
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